「傘?いらない。私が外に出れば止むよ。」 幼い子を抱えた母親が1人、賃貸住宅の玄関を出ようとしている。彼女はいつの頃からか小雨程度では外出を躊躇うことがなくなった。外出予定がある日は不思議と晴れるからだ。降ったとしても小雨程度。彼女が困るような降り方はしない。 別の日には傘を持たずに電車に乗って夫の迎えに出かけた。 夫に「傘は?」と迎えに来た意味を問われて 彼女は「大丈夫。止んでるし。」と短く答える。 彼女の行く先は雨が止む。 彼女の生活から「雨傘をさす」という行為が