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小説『闇に堕ちにて、空に溶けゆく』9/28(土) 【第54話 団欒】

家に帰り、母の着替えを袋に詰めた。
凛から、洗濯物の取込みなどは、
済ませた方がいいと、言われたので、
凛を15分程待たせてしまった。
 
私は「待たせて、ごめんなさい」と言い、
再び凛が運転する車で病院に向かった。

病院までは好きな芸能人の話など
他愛もない話で盛り上がった。
車だとあっという間だと、思ってたが、
病院に着いたら17時前だった。
 
母に着替えを渡しながら、具合を尋ねると、
かなり回復したと言っている。
母から、逆に「もう良くなったから
裕奈は帰って大丈夫よ」と言われた。
 
検査結果が4日後だが、とりあえず明後日、
学校の帰りに立ち寄ると伝えた。
医師からも、付き添いは不要で、
結果が出る日に来ればいいと言われてた。

とは言え、やはり心配なので、
明後日も立ち寄ることにした。
 
病院の面会時間が17時30分迄だった
こともあり、短い会話の後、病室を出た。
1階に降りると、凛が待ってくれていた。


凛に「今日は本当にありがとうございました」
と伝えた。すると、凛が
「今日はうちに来な。お母さん、
裕奈ちゃんの夕食も準備してる。」

私が流石に申し訳ないと辞退をしたのだが、
準備した夕食が無駄になるからと丸め込まれ、
凛の運転する車で谷川家に向かった。
 
凛の「ただいま」の声に母親と翔が反応した。
お帰り、と言うよりも先に、私に向かって
「大丈夫だった?」と声をかけてくれた。

私はお礼を言いながら簡単に状況を説明した。
それを聞いて、2人とも胸をなでおろして
私をリビングに招いた。
 
とても変な感覚だが、翔の家に来るとまるで
我が家に居るような気持ちになる。

翔の母親が「お父さんも7時に帰れるみたい、
それまで、夕食待てる?」
と尋ねられたので、私は勿論大丈夫です、
と答えた。凛はそれを聞き

凛「じゃあ、裕奈ちゃん一緒に、
スマブラしない?ね、翔いいでしょ?」
それを聞き翔は返した。

翔「別に俺に聞かなくて、ゲームぐらい。」 
凛「ありがとう。2人で部屋行って
エッチでもしたいかなと思って。
ほら翔なら、15分あれば終わるでしょ」

翔「そんなに短くないって!」 
凛「童貞なんだから、そんなの
わかんないじゃん!」
姉弟の会話を母親が制止した。
 
「あなた達やめなさい。くだらないことを。
どうすんの?そんな、くだらない話ばかりで
裕奈ちゃんが、この家に来なくなったら。

そんなことになったら、2人とも追い出して
裕奈ちゃんを娘として受け入れるからね」
母の言葉に凛と翔が爆笑し、私も笑った。
 
その後、凛とゲームをしていると
玄関のドアが開く音とともに
「ただいま」という声がした。
父親の直樹が帰宅した。直樹は、言った。

直樹「裕奈ちゃん。よかったね、
お母さんが、ひとまず大事に至らなくて。
今日は疲れただろうから、ゆっくりしてね」 
直樹らしい、優しい言葉だった。
 
母親の「夕食できるからゲーム片付けなさい」
という言葉に、凛はゲームを片付け、
翔は料理を運んだ。
翔の家での夕食は、初めてではない。
 
私が来ると、翔がいわゆるお誕生席に座り、
本来の翔の定位置に、私が凛と横並びに座る。

夕食のメニューが鍋ということもあってか、
団欒という言葉が、ぴったりだ。
私が長らく味わったことのないシーンだ。
 
美味しい料理と楽しいの会話によるものか、
あっという間に、時間が過ぎた。
ふと時計が目に入ると21時を過ぎていた。

私は思わず「ごめんなさい、つい楽しくて、
こんな時間だったなんて気づいてなかった。
すみません、こんなに遅くまでお邪魔して。
そろそろ、失礼します」父の直樹が返した。
 
直樹 「裕奈ちゃん、もしよかったら、
うちに泊まっていたらどうだ。
家に帰って1人だと、心細いだろ?
うちは、全然大丈夫だから。」

凛が続けた「そうだよ、裕奈ちゃん、
今日は、泊まっていきな。
着替えは私の貸してあげる。

私、明日も授業ないから、
明日の朝は家まで車で
送っていってあげるよ」
 
私は感謝しながら流石にそこまで
甘えることはできないと丁重に辞退した。
だが母親にも、勧められ断りきれなく
なってしまった。
唯一、明朝、家に送ってもらう事は断った。

たまたま明日は1教科以外、
今日と同じ科目で、
その一教科の教科書も
学校に置いていた。


(第54話 終わり) 次回10/1(火)投稿予定

★過去の投稿は、こちらのリンクから↓
https://note.com/cofc/n/n50223731fda0

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