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#4. 虐待は予防

うちの病院の院内報に毎月書いているコラム“Pediatrics Note”です(800字前後)。診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。今回は過去号をアップします。2021年の1月号です。

11月は児童虐待防止推進月間です。平成16年11月に児童虐待防止法が施行されたことから、厚生労働省がこの月を児童虐待防止推進月間と定めました。通称オレンジリボンキャンペーンといわれています。このような中ではありますが、11月をもちまして、当院の子ども虐待防止委員会(CAP)の委員長を交代させて頂くことになりました。私は、2014年4月に当院小児科に赴任し、その月に今でも忘れられないネグレクトの被害を受けている小学生の男の子と出会いました。外来や病棟で話を聞き、診察し、小児科医として対応する中で、地域の現状や子ども虐待における不条理を知りました。

2015年にCAPの委員長となり、多くの虐待を受けている子どもたちに出会い、彼らから多くのことを学びました。あれから6年が経過し、院内でCAPの認知度は上がり、院内の連携はだいぶスムーズになりました。院内の様々な職種の方が気になる子どもたちの報告をしてくれるようになりました。虐待が疑われる事例に遭遇した時の対応や外部機関との連携が素早くなりました。しかし、重度の虐待事例は相変わらず発生していますし、外来では心配な家庭環境で生活している子どもたちや、家庭の問題に悩み学校で問題を起こしてしまう子どもたちに頻繁に遭遇します。このような子ども達に小児科医として、何かできることはないかと模索し続けた6年でした。

私の最終的な学びの答えは「虐待は予防」です。児相や警察が出てくるような重度事例に対する世の中の不条理は変わっておらず、子どもたちはなかなか救われません。おおごとが起こってしまっては遅いのです。予防できる支援機関が有機的につながり、子どもたちやその家族を支えなければなりません。今後は診療や社会活動を通して、地域の子育てや教育、保育の支援に一層尽力したいと考えています。(2021年1月)

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