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#3. 地域の病院でしか気づけないこと

うちの病院の院内報に毎月書いているコラム“Pediatrics Note”です(800字前後)。診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。今回は過去号をアップします。2020年の12月号です。

8月からの続きで子どもたちの心を診ることについて考えてみました。私は小児神経の診療を生業としています。小児神経は間口が広く、成人でいえば脳神経内科+精神神経科+心療内科の範囲をカバーしていますが、私は発達障がいを主体として、全体を広く浅く診療しているような人間です。しかし、心身症のような心や心理を対象とした疾患は苦手で「心って何?」って感じでした。

当院に赴任して以来、大学病院にいた頃とは比較にならない頻度で教育・保育機関や行政機関とのケース会議に参加してきました。主にマルトリートメント環境にいる子や、対応に難渋する発達障がいの子たちについての会議ですが、その中で分かったことは、これら対応に難渋するケースの背景には少なからず(というより大きな割合で)、家族の課題、子どもの心理的な課題があるということでした。当たり前と思われるかもしれませんが、診察室で話を聞くだけでは全く気付けないことも多くあり、会議を繰り返すことで診療の幅が広がりました。最近は、ほぼ週1回の頻度で会議を開催しており、日程を調整してくれるソーシャルワーカーや、対応方法をアドバイスしてくれる心理士などに感謝しています。今はこのような相談対応を繰り返し行い、教育、保育、行政機関等と情報を共有し、対応策を検討することに終始していますが、今後はこのようなケースに対して、子どもたち自身の心のケアや家族のケアができるような体制を強化しないといけないと考えています。

依然として続くコロナ禍は、子どもたちの生活環境に少なからず影響を及ぼしており、児童虐待の件数は増え、表面化しないケースも多いことが予想されています。日常診療の中で気になる子がいらっしゃいましたら、どうか子どもたちの話を聴いてあげてください。繰り返し聴いて頂くことで解決することがたくさんあります。対応に苦慮する場合はご相談ください。どうかよろしくお願いします。(2020年12月)

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