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#7. ドクターXより探偵ナイトスクープ
うちの病院の院内報に毎月書いているコラム“Pediatrics Note”です(800字前後)。診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。今回は過去号をアップします。2021年の5月号です。
先日、地域の小児科医会で「神経発達症の診療の仕方2021」と題して発表させて頂きました。発表の準備中に自分なりに新しい気づきがありました。
それは、神経発達症の治療の対象を2つに分けるという考え方です。
1つは「①神経発達症の特性」、もう1つは「②特性によって起きる課題」
注意欠如多動症(ADHD)に例えると、①は多動、衝動、不注意などの前頭葉機能や報酬系等の脳の機能障害による行動。②は①によって起きる、授業に参加できず学力が身につかない、友達関係が築けない、登校を渋る等です。
前者を一次的な生きづらさ、後者を二次的な生きづらさと名付けました。
一次的な生きづらさの治療は脳機能に直接関わる治療です。「薬物療法」や「行動療法」がこれにあたります。薬物療法が効果を示すことも大いにありますが、脳機能を思い通りはできませんし、副作用も伴うため慎重に行う必要があります。行動療法は学習により脳機能の改善を図ります。いずれの治療も専門性を要するため、診療のハードルがあがる要因になっています。
一方で、二次的な生きづらさを解決するために必要なのは、子どもたちの課題を具体的に抽出し、解決策を考えることです。学力が身につかないなら個別に教える、登校を渋る子が登校しやすい環境を考える等です。これは「環境調整」とよばれます。
必要とされるのは失敗しないドクターXではなく、失敗を受け入れ、多方面と連携して協力を要請し、依頼者と共に課題を解決する探偵ナイトスクープの探偵です。
絶対的な専門性より、子どもたちの言葉に真摯に耳を傾ける姿勢が必要とされるのです。4月から当院小児センターでは、一般外来を担当する小児科医が二次的な生きづらさへの対応を始めることになりました。マンパワーが増えることによって、早い段階で医療機関と教育機関が協力することが可能となり、環境調整が進むことを期待しています。
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