風土って一体なんだろう?
その意味をちゃんと理解できているだろうか?
2023年10月29日に雨煙別小学校コカ・コーラ環境ハウスで行われた風土とFOODを考えるワークショップ。後編をお届けします。
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午後はフードライター小西由稀さんを交えのクロストーク。
「風土とは何でしょうか?」という小西さんの問いかけから始まりました。
続いて小西さんから道内3地域(真狩村・足寄町・浦幌町)の事例が紹介されました。ミシュランの星付きレストランで行う子どもたちのマナー教室、地元食材を使ってシェフが作るフルコース給食、農家さんの家に泊まって夕食を囲む民泊体験。いずれも「食」をキーワードとしたふるさと教育です。3つの事例から浮かび上がるのは「食」の作用。食べることでコミュニケーションが生まれ、おいしかった記憶は思い出と紐づき、地域をつなぐよすが(縁・因・便)に。やがて地域の誇りになる、と小西さんは説明します。
では、栗山の風土とはなんだろうか?
いよいよ、クロストーク本番です。
登壇したのは料理を担当した酒井さん、大喜多さん、早乙女さん。それに、協議会メンバーであり、生産者の菅野さん。引き続き小西さんが司会進行を務めます。
まずはそれぞれの栗山とのつながり、栗山の魅力が語られました。実は栗山で生まれたのは酒井さんのみ。他の3人は「移住組」で、大喜多さんは大阪府堺市、早乙女さんは苫小牧市、菅野さんは福島県飯舘村の出身です。
2018年に移住した大滝さんは、それまで札幌でイタリア料理店を営んでいました。栗山で暮らすようになり、「時間の流れ方が変わった」と振り返ります。
2011年の福島第一原発事故を受け、飯舘村を離れて北海道に避難した菅野さん。和牛繁殖やレストラン運営の傍ら、農業体験・研修の受け入れも積極的に行っています。
栗山生まれの酒井さんは高校卒業後、日本料理の名店「招福楼」で修業。板前として日本各地で仕事をした後、故郷に戻り、2001年に開業しました。一度離れたからこそ改めてわかる魅力が栗山にはあると言います。
2018年に移住した早乙女さんは、栗山の食を知るため農家や木こりの仕事を手伝い、2021年に「サメオト」を開業。栗山では料理が生まれるプロセスそのものが違うと語ります。
「縁でメニューが決まる」レストランだなんて、聞いているだけでワクワクしませんか?
早乙女さんが、栗山の地に根を張り日々料理を作る中で感じる風土とはなんだろうか。
一方で、「栗山の風土が何か?という問いには、まだ答えられない」と控えめに打ち明けるのは大喜多さん。
酒井さんは日本各地で暮らした経験から、風土についてまた別のアプローチで語ります。
風土を育むことが故郷への恩返しと語る酒井さん。風土が人間性を作ると考える早乙女さん。菅野さんの風土観は、故郷・飯舘村で培われました。
つどう
午後4時。傾いた西日が部屋の一番奥まで達する頃、すべてのプログラムが終了しました。朝8時半から長時間にわたる充実感いっぱいのイベントでした。
冒頭に記載したとおり参加者はおよそ60名。小学生の子どもたちとその親御さんの他にも、町内の生産者や地域おこし協力隊、町づくりに関わる人、町外からも食や教育に携わる人や学生など、年代・職種を超えてさまざまな人が集まり、語らいました。
クリを剝いたり、料理を盛り付けた午前の部に比べ、午後のクロストークは子どもたちにとってはちょっとハードルが高かったかもしれません。お腹も満たされ、ウトウトしかかったのは子どもたちだけではなかったはず。
「風土は考えるものではなく、感じるものだと思う」。大喜多さんの言葉がよみがえります。
風土とは、クリを剝いたときに感じた親指の痛み。風土とは、初めて食べたむかごのしみじみとした味わい。風土とは…。そんな一つひとつが地層のように折り重なって、一人ひとりの心に、それぞれの形で、育まれていくのかもしれません。
前編「風土とは?:味わい、感じる。栗山町のふるさと教育①」