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VR世界の文化を持続可能にする"パトロン"という切り口

VRChatやClusterで毎日のように開かれるイベント、
チュートリアルワールドで案内してくれる人たち、
おもしろいバラエティ豊かな人たちとの時間。

いまのVR世界はこのような魅力的な文化から成り立っています。

この文化を持続可能にするにはどうすればいいか、1年ほど考えた答えを今後のために言語化してみます。

いっちゃえば、ただのぽえむです。


VR世界の文化って何

VRChatやClusterの人たちが形成している文化のことを言っていますが、幅が広く種類も多く言語化が難しいので具体例から攻めてみます。

イベント: ユーザー主体でイベントが開かれる

VRChatやClusterではいろんなイベントが毎日行われています。
ジャンルも様々で、DJ、ダンス、学会、ワールド巡り、"集会"などなど。

これらのイベントは企業ではなくユーザーが主体となって企画・開催され、多くのイベントは無償で参加することができます。

ワールド/アバター: ユーザー主体で趣味の延長で作られる

ワールドも同じように、ほぼすべてがユーザー主体で作られ無償で提供されています。機能追加・バグ対応などもボランティア的に行われています。

アバターや服飾は販売されてることが多く無償とは言えませんが、ワンオフアバターの相場が百万円以上ということを考えると多くのアバターはかなり格安で提供されています。

どちらも創作という趣味の延長で成り立っているように思えます。
これは、同人界隈の文化を引き継いでいるように見えます。

新規ユーザーを案内するボランティア

新規ユーザーをVR世界に馴染むための案内をするボランティアもVR世界の面白い文化の一つです。初心者の頃に案内してもらった人が恩返しとして案内する側をしていることもよく聞き、助け合いのような活動と思われます。

まとめ: VR世界の文化

ここまでの具体例からVR世界の文化をまとめると次のようなキーワードになると思います。

  • ユーザーが主体

  • ボランティア / 無償もしくは格安

  • 創作という趣味の延長

  • 助け合い

このような文化を持続可能にするにはどうすればいいでしょうか?
この疑問がこの記事の始まりです。


VRで稼げるようにすべき?

持続して活動できるようにするという文脈で、
「VRで生活できるだけのお金を稼げるようにする」
という方向性をよく見ますが本当にそうでしょうか?

この方針は、「稼ぐ」という概念の薄い現状のVRの文化とは異なり、現在の文化を破壊しうるという指摘もよく耳にします。

私が思うに、この方向性では重要なものを見逃しています。
VR世界への流入する富です。

イベントやワールド作成などのVR活動で稼ぐお金というのは、
VR世界の人 が VR世界の人 に 支払うお金です。
VR世界をとりあえず家とみなすと、家の中で交換されるものです。


しかし、我々は現実世界でも生きています。ですので、食費だったり光熱費だったりを VR世界の外 に支払わねばなりません。

誰かが家の外から富を持ってこなければ、この状況は長続きできません。なぜなら、家から富が流出する経路しかないからです。

このVR世界への流入する富の量がVR世界の経済規模を左右し、現時点では「VRと関係ない仕事で 稼いだ金をVRで使う」に相当します。

企業案件なども流入と考えられますが、ごく少数の人しか富を受け取れないこと、現状のVRの文化と異なる性質であること、を考えるとメインの流入とするべきでははなさそうに思えます。このあたりに関して、別で記事を書くつもりなので興味があればそちらも参照ください。

まとめです。私の言いたいことは、
「VRで稼げるようにするには、VR世界への流入する富が多くなければならない。これはVR世界だけでは完結できない。」
ということです。
一応ですが「VRで稼げるようにすべきではない」という主張をしているわけではありません。

「VRで稼げるようにする」というのは見落としがあることがわかりました。ここまでの話は一旦忘れて次に進みます。


文化は人々

様々なイベント・アバター・ワールド・ボランティアなどなど…

このような文化を作り出しているのは、人々です。
企業でも組織でも仕組みでもなく人々です。

イベントを主催するのも、ワールドを作るのも、
アバターを作るのも、案内するのも、人々です。

みんなが自分の意思でやっていて、
誰かの意思でこれが行われているというわけではないです。

人々が文化を作り出しているならば、文化を持続させるには人々が継続して活動できるようにしなければならないだろうと思い至ります。

「パトロン」という概念

VR世界の文化を支えている人のことを、「パトロン」と呼ぶことにします。
この「パトロン」は、金銭的援助をする人でも良いですし、イベントを主催したり創作したりボランティアしたりしている人を指します。
文化を支えているという点で言えば、イベントに参加する人もそうですし、VRで入り浸っている人、アバターを改変して写真を上げている人も「パトロン」と言えます。

この「パトロン」たちは対価を重視していません

現在のイベント主催者やアバター製作者やボランティアたちは、対価を重視しておらずやりたいから趣味としてやっている
対価をもらっても良いですが、対価のためにやっているわけではない。

だからこそ多様で面白い文化が出来上がっています。企業活動では採算も取れないニッチで面白いものが乱立する理由です。ここが金銭的対価を求める「VRで稼ぐ」との大きな思想の違いです。

では対価を重視しない「パトロン」たちが、
継続的に活動するには何が必要でしょうか?

私は次の3つが必要だと思います。

  • 金銭的余裕

  • 時間的余裕

  • 意欲(~=熱狂, 精神的余裕, MP)

金銭的余裕がなければVR機器を購入したりアバターを購入したりすることはできませんし、精神的余裕も生まれません。時間的余裕がなければ、VR上での活動に費やす時間は確保できません。意欲がなければそもそも主催しようとか作ろうとかボランティアしようとも思いません。

「パトロン」たちは対価を重視しないのにも関わらず、継続には金銭的余裕・時間的余裕が必要という矛盾した性質を持ちます。

私はここの解決でかなり悩みました。
理系集会の運営スタッフの多くは就業規則でお金を受け取れない人、もしくは、お金で動かない人でした。ですので、理系集会の運営を持続するために必要なものはお金ではない。けれど、スタッフが継続して参加するには生活費と時間的余裕がいるという矛盾を解決せねばなりませんでした。

VRの文化を維持するには

「パトロン」が継続して活動できるように、金銭的余裕・時間的余裕・意欲を活動の対価としてではなく満たす方法はなんでしょうか?

最初のほうで、VRの文化が「ユーザーが主体」「ボランティア」「創作という趣味の延長」「助け合い」という側面がある話をしました。
これらの側面も同時に満たす方法は何でしょうか?

私は、VR世界で得られたものを現実世界の活動に活かしてもらうこと
だと思っています。

たとえば、イベントの運営を例に話をします。
イベントの企画にはプロデュース能力が必要となります。
このスキルはなかなかに現実世界では得難いですが、VRでは比較的簡単に得ることができますし、試行錯誤も容易です。
VRでイベントを運営した経験が本業の方で役立ったり転職で評価されたりするとすると、昇給などの形での金銭的余裕、労働環境改善という意味での時間的余裕が生まれるはずです。

これはかなりわかりやすいサクセスストーリーです。アバター作成者やワールド作成者でも同じようなことがいえそうですが、現実には「プロデュース能力」などというわかりやすいものでもなく、得られるものも言語化しにくいものだったりするでしょう。

ですが、VR世界で得たことを大なり小なり現実世界で活かしてもらうことが、現在のVRの文化を持続可能にする方法ではという指摘です。

VR世界で得られたこととして、モデリング能力とかでも良いですし、友達や人脈かもしれません。とあるダベリ部屋で聞いたトピックが現実と結びついたりするかもしれません。

そういう得たものを活かしてもらうという視点です。運良く本業に活かせれば金銭的・時間的余裕に結びつくでしょう。

VR世界は良い意味で安直になにかしやすい、
いろんな人がいていろんな経験や話ができる、
なにか作ってもいいしなにもしなくてもいいかわいいだけでもいい、
そんな世界だから面白いと個人的に思っています。

そういう雑多な経験を得る場としてVR世界は優秀だと思っています。

そして次の疑問は、
良い経験を得る場を持続するにはどうすればいいでしょうか?

では私はどうするか

実は私は理系集会という組織でPdM?ディレクター?的なことをしてます。
まずスタッフのスキル向上や機会の提案や助言をしています。例えば、各人がそれぞれ興味のありそうでスキルが伸びそうなことを提案してうまくいくように助言をするという感じです。
同じように、理系集会でない人たちにも、スキル向上と機会創出という点でコンサルと言うかアドバイスのようなことをしています。

また、これからのはなしとして、理系集会の参加者にも持続可能な形で良い経験を得る場をつくることができないかを模索してるところです。

学術系イベント主催者コミュニティというものを作られており、そこで機会創出とスキル向上する機会を作れないかなぁと思っていたりもします。
学術系VRイベントカレンダーというものを試作して、持続可能でかつ良い経験が主催者参加者双方に得られるような仕組みを模索していたりもします。

とりあえず、
私はイベントという視点から攻めてみようと思っています。

おわりに

この文書ポエムを書いた理由として、
この文化を維持するという視点で行動する人を増やさなければ、
文化を維持できないだろうという直感があります。
なぜなら文化は人々から成り立っているからです。

なので、「パトロン」「VRの文化を維持する」「VR経済圏への流入する富」あたりの概念を浅慮でもいいからとりあえず放流してみたのがこれです。

もしこのあたりの視点で考えることに興味を持っていただけたり、
新しい視点が得られたという方がいらっしゃったりしたら幸いです。

ここには書きませんでしたが、そもそも文化を持続させるべきなのかとか、なぜVRなのかとか、現実との対比とか、商用化の波がきたときの保護/共存とか、いろいろ考えていたりします。

このあたりの詳しい話に興味のある方・なにか相談したいことのある方は、
@cocu_tanまでよろしくお願いします。

データドリブンでのイベント改善・マネージメント・PdMあたりなら相談に乗れると思います。


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