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10/5 GRAPEVINE @ 東京・恵比寿 LIQUIDROOM

 GRAPEVINE tour 2017が始まった。

 10月5日。彼らの新たな旅の始まりの場所、東京・恵比寿にあるライヴハウスLIQUIDROOMは、満員の人で溢れている。風の噂によれば、チケット自体が入手困難だったらしく、この日はもちろんソールドアウト。
 
 最近では対バンツアーが続いていたバインの約1年3ヶ月ぶりのワンマンライヴであり、9月6日にリリースされたNEW ALBUM『ROADSIDE PROPHET』の楽曲も全曲披露されるこの日。また、同月19日にバンドはデビュー20年目を迎え、21年目のスタートダッシュという意味も兼ねた盛りだくさんのツアー初日は、バンドにとっても、ファンにとっても、特別なものがあるのだろう。

 ツアーは始まったばかりなので詳細は控えるとしても、今回のライヴで私が終始感じていたことだけは、ここに記しておきたい。

 円熟味を帯びた演奏と歌声。アルバムの曲とアルバム以外の曲で構成されるセットリストの抑揚。そして会場一帯に生まれる空気感。私は、ライヴの至るところで彼らの20年を感じていた。

 初日ならではの緊張感に煽られつつも、たおやかでいて、どっしり構えるバンドサウンドには、聴く者の記憶に膨らみを与える豊さと、心の影をそっと撫でるような優しさがあり、田中和将(Vo&G)の歌声は、潜む色気や渋みと表現力が、年々明らかに増している素晴らしいものだった。

 そんな田中曰く、ツアー初日のMCではあまり話さないらしいのだが、「20年ありがとう、また20年よろしく」なんて泣かせる台詞をさらりと言った。デビュー20年だからと言って特別なことをするわけでもなく、普段通りのライヴを行う平常運転なバンドなのに、こうしてツアー初日を無事迎え、観客を目の前にすると、どうしたって出てしまう感謝の想いがあるのだろうか。「この人も角が取れてきたのだな~」と、しみじみ感慨深くなる。

 私は、16年前に初めて行ったのバインのライヴのことを、ライヴ中に何度も思い出していた。

 軽音楽部に所属し、バインのコピーバンドを組んでいた私にとって、彼らが私の青春であり、一番の憧れだった大学時代。当時のバインにはまだ20代のメンバーもいたし、なんだかファンにも冷たかった。そんな若き面影を、私は目の前のステージから感じたり、感じなかったり。けれど、最新版にアップデートされた、大好きなとある曲を耳にしたとき、今のバインが堂々と放つ「大人のロックバンドとしての魅力」に心奪われてしまう。そして、その魅力とは、彼らが歳を重ねてきたからこそ、自然と醸し出されるものだと気付く。

 16年前と変わらず最高にかっこ良い。長年聴き続けてきたバンドの最新が一番魅力的である事実は、私を誇らしい気持ちにさせる。同時に、彼らのようにゆるりと己の道を極めながら、歳を重ねていきたいという想いが、大きく私の背中を押す。

 
 『ROADSIDE PROPHET』というアルバムには、オーセンティックで朴訥とした楽曲が多いが、だからこそ、秘められた味わい深さに「してやられた」という敗北感を感じざるを得ない。そして、ライヴで体全部で体感しなければわからない醍醐味もあるのだが…旅は始まったばかりだもの。さすがにまだここでは書けない。

 回を重ねていくと共にアルバムの楽曲達がどのように育ち、またアルバム以外の曲とも繋がりながら、12月1日、東京国際フォーラムで開催されるツアーファイナルのステージでは、どんな世界が広がるのだろう。私は期待に胸を膨らませつつ、ツアーには数カ所参加するので、成長過程もじっくりと堪能していきたいと思う。

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