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【LIVE】2020/3/20 光村龍哉

 その日はたまたま友達と渋谷で遊んでいたら、光村龍哉さんがライヴをすることを知り、急遽、向かうことになった。今回は、DJ 片平実さんがオーガナイザーを務めるイベントに飛び入り出演。告知も何もなかったからサプライズではあるけど、お二人の関係性を思えば納得の出演でもある。終演後にタイムテーブルを確認すると、片平さんのDJタイムが光村さんのライヴに当てられていた。

 会場に入ると、すでにライヴは始まっている。光村さんはステージではなくフロアに立ち、数人のお客さんの前でアコギを掻き鳴らしながら奥田民生の「息子」を歌っていた…ていうか、実は会場のドアの前にたどり着くと「息子」を歌う声が漏れていたので、彼の居場所を掴めたのだ。

 Travis の「Turn」は、過去に開催された片平さんのイベントで光村さんが歌っていた曲。MCでは、片平さんとの思い出話に花が咲き、新宿Loftであったイベントの打ち上げ(?)では、古くん(NICO Touches the Wallsのギタリスト 古村大介)が片平さんに説教されたという懐かしいエピソードもこぼれる。光村さんの、お世話になった先輩へ歌で恩を返す謙虚さと、後輩を思い、自分のイベントに出演させた先輩 片平さんのやさしさを感じられたひととき。

 光村さんをほっとけないもう一人の先輩が GRAPEVINE田中和将さん。田中さんは先週の日曜日(3月15日)に、光村さんの路上ライヴに参加していた。この件に関しては、ニコファンのみならずバインファン界隈でもどよめきが起こり、そもそも田中さんは弾き語り自体に興味を示さない人でもあるだけに私もかなり驚いてしまった。そんな先輩の代表曲「光について」を光村さんが歌ってしまうと、やはり彼の「光について」になる。潜在的な楽曲のすばらしさを、原曲とは別のアングルから引き出すような歌唱力で聴かせていく光村さん。私は何度もオリジナルを聴き続けてきたが、恨めしい気持ちなんて沸くことはない。これからも歌い続けて欲しいと思った。

 NICO Touches the Wallsの曲も歌った。まずは《地球が病気だから きっと僕らコロナの標的》と時事ネタをぶち込んだ「病気」。その次には、お客さんから声の上がったリクエストをことごとく断りつつ(iPadに(歌詞?)がないとのことで)自ら選んだ「(My Sweet)Eden」。《呆れるほど GO GO 期待してみよう そう 迷路でも歓迎しよう》と体をのけぞり、声を張り上げ熱唱した「(My Sweet)Eden」は、今の光村さんの心情そのもののように聴こえしまい、思わず目頭が熱くなった。サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」では《今 何時?》《そうねだいだいね~》とお客さんとの掛け合いがあり、ウッカリ歌詞を間違えたり(笑)。そして、David Bowie の「Lady Stardust」で終わりかと思いきや、そっと語り掛けるように《そんな時代もあったねと いつか話せる日が来るわ》と歌い始め、名曲 中島みゆきの「時代」へと繋げていった。それはまるで、閉塞感漂う今を生きねばならない私達へのエールのようでもあり、人生の節目を迎えた我が身を重ねているようでもあった…。

 ライヴ中、私には思い出したことがあった。それは、NICO Touches the Wallsの最後のツアー、初日のステージ(2019年3月25日)で光村さんが話していたことだ。「(自分は)音楽がなければコミュニケーションが取れない人間だ」。あの日から一年近く経ち、私はようやくその言葉の意味が自分の中で腑に落ちた。なぜなら胸の奥に秘めた意志も、今一番彼が伝えたいのだろうと思うことも、ただただ歌を歌うその声から感じられたからだ。バンド活動終了については、無理やり納得させた部分もあれば、未だ納得できないことが私にはあるし、同じようなことを思っているファンは少なくはないと思う。けれど、誰に何を言われようが「歌い続ける」ことがミュージシャン 光村龍哉の誠意を伝える術なのだと、私は思わずにはいられなかった。そして、歌うことで、自身の生き方に一番の説得力が生まれる人なのだと痛感してしまったのだ。

 その後、光村さんは場所を原宿駅前に変えて路上ライヴをやっていた。そこでは駒沢大学のライヴでも呼んでいたベーシストのしんちゃんも一緒。私は最後の一曲だけ聴いたけれど「路上ではこんな風にライブをやっていたのね」と一度は観てみたいという好奇心があっただけに、遭遇できたことは単純に嬉しかった。それにしても、一日に二回もライヴをやるなんて!なかなかのフットワークの軽さだが、身軽な状態でいられる今しかできないことをとことんやればいいと思った。そこから学べることも、きっとあるのだから。


<SET LIST>
Gttting Better 【24hour Getting People】 @ 渋谷 Club Malcolm
1  Oh! Darling / The Beatles 
2 息子 / 奥田民生
3 Turn /Travis 
4 光について / GRAPEVINE 
5 病気 / NICO Touches the Walls
6 (My Sweet) Eden / NICO Touches the Walls
7  勝手にシンドバッド / サザンオールスターズ   
8 Lady Stardust / David Bowie
9 時代 / 中島みゆき

※セトリ追記しました

原宿駅 路上ライブでは最後の1曲だけ。
NICO Touches the Walls / 手をたたけ (QUEEN の「We Will Rock You」とのマッシュアップ、エレキベースでの弾き語りバージョン)

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