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5/21 GRAPEVINE presents GRUESOME TWOSOME Guest : NICO Touches the Walls @ 新潟LOTS

GRAPEVINEが多彩なゲストバンドを招いて開催中のデビュー20周年記念対バンツアー『GRUESOME TWOSOME 』。
その中でも個人的にダントツで胸熱だったのがバインとNICO Touches the Wallsの共演でした。

バインはリスナー歴20年目である私の「生きてきた証」が詰まっているバンドだし、ニコは今の私のエンジンであるバンド。私の音楽人生に於いてとても大切な2組は、過去にも何度か共演を果たし、実は共演回数が一番多いという事実もあります。実際に私も、2006年に開催された『JAPAN CIRCUIT』と2012年に開催の『1125の日ライヴ』には行っています。

バインとニコは音楽性は実に対照的。オルタナティヴで洋楽に寄せた音楽を長年鳴らし続けているバインと、日本のメインストリームに立ちながら、ちょっと癖のある音楽を鳴らしているのがニコ。

ニコの音楽性の振り幅は広く、逆にそれが「解りづらい」と思われてしまう一面でもあるのですが、今回は見事にそれを長所として生かしたセットリストを組んできました。

1.新曲(Fighting NICOツアーの1曲目(後の「KAIZOKU?」)
2.B.C.G
3.泥んこドビー
4.ブギウギルティ
5.エトランジェ
6.夢1号
7.MOROHA IROHA
8.Broken Youth
9.ストラト

ライヴハウスに入場しステージを見ると、すでに手動のサイレンがセッティング済み。1曲目はFighting NICOツアーのオープニングを飾っていた“新曲”から“B.C.G”へと続くので「これは、ツアーの短縮ver.でもやるのかしら?」と思っていたところ“泥んこドビー”の登場でピンと来ました。

“B.C.G”と“泥んこドビー”は2012年の『1125の日ライブ』で演奏した曲。つまり、今日は「バインとニコの出会いを彷彿させるセトリ」を組んだのだなと思いました。ただ、光村さんMCによれば「今日集まってくれたお客さんの為に用意したセトリ」らしいけど、この後にも“エトランジェ”、“Broken Youth ”という初期楽曲(2組の出会いは2006年開催の『JAPAN CIRCUIT』。ニコがまだインディーズで活動をしていた時期)や、田中さんが「好きだ」とラジオで話していた“夢1号”も披露され、明らかにバインに捧げる特別なセトリを用意してきたのは間違いないと。

私は正直なところ…ニコがバインとの対バンでどの曲を演奏するのか、期待もありつつ心配でもありました。先も述べたようにバインとニコは音楽的スタンスが違い、ライヴの雰囲気だって違う。それが普段ニコを聴かない人達に受け入れてもらえるのだろうか…と(本当に余計なお世話ですが長年バインを聴きライヴに通い続けてきた1人として書きます)。そして、ニコ自身も「何を演奏したらバインリスナーの方に自分達を受け入れてもらえるか」という点では、ロックフェスで演るような(近年リリースのシングルを詰め込んだ明るいバンドイメージを持たせた)表向きなセトリじゃアウトであると、わかっていたと思うんです。

しかし、ニコの長年の奮闘劇や光村さんの葛藤をバイン…というか田中さんはずっと見てきた人なのですよね。自らをデビュー当時から老けていると認めている田中さんが「お前のその考えは老けている!」と、雑誌やラジオの対談で言い放った相手こそ光村さん。きっと彼の姿が若かりし自分自身と重って、放っておけなかったんだと思う。だからこそ今回の対バンでも、バインとしてはニコがどんな曲を演奏してくれても良かったんだろうけど、ニコはもう考えに考え抜いて出揃えた切り札が、結果的にバインとの出会いや思い出を彷彿させるような内容になってしまったんじゃないかな。

でも、当然、バンドの成熟度は上がっていて。“ブギウギルティ”がポンっと陽気に入って来る遊び心には、今のニコらしさを感じたし、“夢1号”はそれこそ2012年の『1125の日ライブ』で聴いたときよりも、古くんと対馬くんのコーラスがツアーの成果もあってすこぶる良かった。ラストの“ストラト”はニコの現在地だと考えてみると、バインとの出会いから11年後の自分達の姿を、改めて先輩に観て欲しかったんじゃないのでしょうか。

「11年前に出会ったバインと同じ30代になった自分達が、先輩達のようにかっこよくなってるのだろうか?と思いつつ演奏しているけれど、先輩の背中は大きい!(ニュアンスで受け止めてください)」と最後のMCで光村さん、さっかんと顔を見合わせ話してて。でも、自分達の指標として、永遠に追い越せないくらいカッコいい先輩が近くいることって、私は幸せだと思いますよ。

ニコの豊かな音楽性によって、どんなバンドとの対バンも、対応可能であることが今回ではっきりしたけれど、その魅力を引き出したのはバインの存在があったからですね(やっぱり先輩の背中は大きいね)。でも今回に限らず、自分達にしかできない音楽だと思って、バンドのコアな部分も堂々と、今後、見せていって欲しいです。

NICO Touches the Walls 『ストラト』(Short Ver.)

さて、ここからは先輩GRAPEVINEについて(セトリは後日記載します)。

すでに東京と名古屋と2公演を観ていたので、セットリストも、全体的な流れも理解していたけど、バイン20年の歩みを彷彿させるセトリは何度聴いても素晴らしい。また、Zeppクラスの半分以下のキャパ数のライヴハウスでバインを観るのは久しぶりだったので、小箱ならではの音が籠る感覚であったり、低音の振動が床だけでなく壁からも伝わるような一体感は、特にバインのファンクやR&Bテイストの楽曲との相性の良さを感じました。

この日は真正面が西川さんで最前列から2列目で観ていたので、西川さんこと「アニキ」について少し書こうかと。アニキは自分の立ち位置から滅多に動かず(とある曲ではKey高野勲氏の方に向かってましたが)、黙々とギターと向かい合う、正に職人芸のようなプレイを続けていて。手元から目線を離さないし、それでも回りの気配をキャッチしているバンマス的な雰囲気に痺れましたね。逆にニコの古くんは、ステージを動き回るし観客をガンガン煽っていくタイプ。同じステージで対照的なギタリストの姿を立て続けて見たことが、個人的になかなか興味深かったです。

そして、田中さんは地方のライヴだと、いやぁ~良くしゃべる。今日の対バン相手はニコでしたから、「俺がこのバンドを見つけたんだぞ!」と言わんばかりのツンデレMCをかましていました。「ニコのライヴを観ていて(ニコと)出会って11年と知り、真面目に泣きそうになった」(フロア:なんとなく皆じ~んしている)「NICO Touches the Wallsをニコスと名付け、あれよあれよとCMソングに使われ、アニメのテーマソングに使われ、ニコスのスがどこか行きました」(フロア:爆笑。「ニコス」ちっとも浸透してないしw)何が面白いってその間後ろにいるメンバーは皆、無表情であること。それでも曲が始まる直前にはステージの空気がピンと張り詰め、おどろおどろしいステージを繰り広げながら、田中さんは美声を放ち続ける。

新潟で観たバインのライヴはもう20年選手の『貫禄』という一言に尽きます。ただ一概に『貫禄』と言われても、先日観たユニコーンにも圧倒的な貫禄があったし、来年結成20年というストレイテナーだって感じていて。では、バインが見せる『貫禄』とは一体何だろう?ということなのですが、ライヴレポからはだいぶズレますけど、大事なことだと思うので、ちょっとここから掘り下げていきます。

ストレイテナーとの対バン記事の中でこんなことを書きました。

『バンドもリスナーも歳を重ねた分、当然、楽曲自体も歳を重ねているんですよね。だから、曲から伝わるメッセージも、それを受けて膨らむ感情も、曲のリリース時に聴いた頃とは全く違うものでした』

実際は全ての曲に対し同じことを思ったのだけど、一番強く思った曲が、ライヴ中盤に披露された“here”。この曲は2000年に発売されたバインの3枚目のアルバム『Here』に収録され、バインを語る上で切り離せない重要な曲です。このアルバムは田中さんの故郷をモチーフに書かれた曲が多く、その中でも“here”はご自身の幼少期における哀しい記憶が綴られています。

柔らかな手を放されて泣く夢 生まれたこの気持ちはどこに埋めよう 
追われて辿着く場所を探して 怖いけどそれは噯にも出せない

しかし最後のサビでは、葛藤の果てに、今、自分が手にしているもの、その全てを受け止めようとする。これは大切な人に向けての曲であるし、何より田中さん自身がご自身に向けて歌った曲だとも解釈ができます。

君や家族を 傍にいる彼等を あの夏を そういう街を 愛せる事に今更気づいて 
突抜ける身体を 胸躍らせ 移りゆく時の水脈 あなただけ 見失わぬよう 手 離すなって 
声が聞こえたなら 思いがけない人へ

GRAPEVINE「here」from 15th Anniversary live at NHK Hall (2012.09.26)

田中さんが大っぴらに自我をぶつけた曲は“here”と2005年リリースの7枚目のアルバム『deracine』収録の“少年”ぐらい。“少年”を発表してからは完全に要素として溶け込ませていくようになりました。

ただ歳を重ね、ご家族を持ったことで、田中さんの精神的成長/心境の変化により“here”という曲の意味合いは確実に変化していると思うのです。

私が初めて変化を感じたのは、2011年開催の全国ツアー『真昼のストレンジランド』のアンコールで“here”を聴いた時。ツアー中に東日本大震災が起こり、あらゆる所で「自粛自粛」と言われる中に行われた、本来ならツアーファイナルだった4月23日、東京・新木場STUDIO COASTのライヴでは、一部歌詞を変えていました。震災の発生から約1ヶ月半後のライヴでしたから、田中さんなりの配慮に違いないのだけど、それでも、伝えたい想いが全てこの曲に集約されていたと思う。力強さと生きる希望を、これまでに何度も聴いてきた“here”から初めて感じ、涙が止まらなくなりました。

そして今回の対バンツアーで聴く“here”は、未だかつてなく開かれた印象を持ち、明らかにこちら側(観客側)に向かって演奏されている感触がありました。<君や家族を/傍にいる彼等を>というのはバインを取り囲む全ての人達に向けられているフレーズだし、新潟では<傍にいる彼等を>と歌った時、ステージに並ぶメンバーとフロア奥にも田中さんが手を伸ばしていて。その先にはきっとニコのメンバーが観ていたからでしょう。

20年の軌跡の中でたくさんの人との関わりが生まれ、自分は支えられてきたんだという実感は“here”を・・・つまり田中さんに刻まれている孤独を解放させたはずだし、バンドの節目とリスナーの人生の節目、また披露される時代背景によっても響き方が大きくかわる、バインが続く限り“here”はゆっくりと拡大し、育ち続ける曲です。

そして、6月7日に発売される20周年記念シングル“Arma”は、ごまかしが得意な田中さんにしては珍しくストレートな言葉を並ばせていて、20年以降のその先を真っ直ぐ指さす一曲。“Arma”とはラテン語で「武器」という意味ですが曲中では<武器は要らない>と歌っていて、逆説的なタイトルを付けるところが自らのスタンスを貫く姿であり、これぞバインの王道です。背負うものは増えてしまっても<物語は終わりじゃないさ/全てを抱えて行く>というバンドは続いて行くという意志は、“here”と深い部分で繋がっていると感じます。手にした大切なものを受け止める力、共に未来へと進もうとする意志が、バインから見える『貫禄』なのだと思います。

この『GRUESOME TWOSOME』を「対バンの豪華さに助けてもらっている、おんぶにだっこの対バンツアー」と各会場で田中さん言い続けています(笑)。確かに共演者はバラエティに富んでいるし、新潟で観たニコも、セトリから伝わる想いにかなり胸を抉られてしまって・・・正直、気持ちが切り替えられるか不安だったんですよ。でも、バインのライヴが始まってしまえば、20年選手の底力にはニコはまだ到達できていないなぁと思いました。

だからこそ、今回バインと共演できたニコは本当に幸せだったと思うし、その幸せを新潟で一番味わったのが間違いなく光村さんでしょう!アンコールで2曲披露しライヴはここで終わりと見せかけつつ、「みつ~~!」と田中さんが光村さんをステージに呼び込みます。「お前フルコーラス歌え!」という田中さんのリクエストに応え歌った“光について”は、光村さん自身、中学生の頃に好きで聴いていた曲らしいです。光村さんの声質であったり、光村節と言えばいいのか彼独自の歌唱によって歌われた“光について”は、第一声が聴こえただけで明らかにフロアの空気が変わりました。長年、本家本元を聴き続けている私も、流石におののきました。そして田中さんからは「光村さんがかわいくてかわいくて仕方が無いオーラ」がダダ漏れ(笑)。歌い終わった2人が肩を抱き寄せ合う姿も良かった。

最後に。光村さん曰く「(自分が)今のバインの歳(40代)になったらまた対バンしたい」とのこと。…でもそしたらバインメンバー、アラウンド60ですよ!実現させるのならば、是非アンプラグドで。メンバーもお客さんも着席スタイルでお願いします(笑)。

GRAPEVINE - 光について

GRAPEVINE - 光について (J-WAVE/Hello World studio live)

(5/28:セットリストを追記します)
1.ふれていたい
2.Golden Dawn
3.FLY
4.EAST OF THE SUN
5.Wants 
6.豚の皿 
7.here
8.Arma 
9.覚醒 
10.JIVE 
11.疾走 
12.吹曝しのシェヴィ

アンコール
1.君を待つ間
2.真昼の子供たち
3.光について(with光村龍哉)

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