I wish your wish and happiness were the same.

学び舎の外。みんなが寝静まった後、一人中庭に抜け出す。
今日は上弦。満月になるまでまだ日があった。そのせいか辺りは暗く、自分の手元でさえ視界が少々おぼつかない。
薄っすらとした物影を頼りにベンチまで歩いて、腰をかける。膝を抱えれば、肌寒さは少し和らいだ。考え事に意識を移す。
どれだけ大切に思っていたって、それが他人を幸せにするとは限らない。最近、何となく分かってきた。
それは星の巡りで決まっているものかもしれないし、他人からの感情によって進むべき道が歪んでしまったものかもしれない。私には、何の判断もつかないのだ。
もしもその選択が人を幸せにするとは言っても、望まない幸せだったら何の意味もない。幸せとは、他から見たその人のものではなく、その人から見たその人のものであることだというのに、案外この辺りは曖昧だったり見ないふりをしている人が多いのだ。
私は姉さんに幸せになってほしい。それは揺るぎない、今はたった一つの願い。
ニールさんはどうなんだろうか。あの人は姉さんと結ばれたいと言ったけど、姉さんに幸せになってほしい気持ちはあるんだろうか。
もしその気持ちがあったとしても、自分の願いを優先させるなら、あの人はきっと、姉さんの幸せの先にはいない。そんなものは無いのと同じだ。
「……どうすれば…」
膝に額を押しつければ、弱気な言葉が自分の中で反響した。
姉さんが遠くに行くのは嫌だ。だけど姉さんが幸せにならないのは、もっと嫌だ。
なら、優先するのは一つ。姉さんの願いを叶える、その手伝いをすること。
顔を上げる。どの立場が一番いいかなんて分からない。でも私は、姉さんの手が届かないところで、姉さんを助けてあげたい。
今まで通り勉強して、官職につこう。できれば、星読師とは遠い立場に配属されるのがいい。先生にも相談して、課題の量を増やしてもらわないと。
目標を定めたら、少しだけもやもやが晴れた。明日目が覚めたら、一番に姉さんに会いに行こう。きっと厳しいことを言われるかもしれないけど、最後は応援してくれるはずだ。ベンチから立ち上がって、清々しい気持ちで夜風を浴びた。

(いいわけ)887字。リーンが姉の幸せについて考える話。もっとうじうじさせたかったけど字数の都合上省略しました。

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