Looking back on the street corner.

「ニール! 女の子が呼んでるぞ!」
「誰?」
「確か…ラングリッジのお嬢さんだって」
「……出てくる。後は頼んだ」
その名前に、期待してしまったのは事実だ。
宿舎を出て、見慣れた濃紺の髪を探す。外にはあまり人がいないから、すぐに見つかるものかと思ったが。
「ニールさん」
後ろからの呼び声に振り向く。想像していた声と違っていたのは当たり前だった。
そこにいたのは婚約者の妹。
「…久し振りだね、リーン」
「ええ、お久しぶりです。姉さんじゃなくてすみません」
姉と同じ金色の目を細めて、幼いまま彼女は笑った。

「君をダシにしてすまないな」
街の見回りルートを変更するために嘘を並べ立てた。アイシャの紹介で、空使いであるリーンと一緒に警備の見直しと絶景の場所取りをしてくると伝えて。それであっさりと許可が出るものだから、我が騎士団の伝達能力と危機管理が少々心配になった。
「とんでもないです。急に押しかけたのは私の方ですから」
詰所前にいた時は人目を気にしていたのかフードを被っていたが、今はフードをとって町娘と同じように朗らかに笑っている。
「最近流行りの飯屋があると聞いたんだ。話はそこで構わないかい?」
「あっ、もしかして…花砂糖が有名なお店ですか?」
流石年頃の女の子。話が早い。頷いてみせれば、顔を明るくさせる。
「本当は、アイシャ殿と一緒に行く予定だったんだけどね。下見代わりに女性からの感想も聞かせてほしい」
そう伝えたのは、リーンに下心は無いという意思表示と、言葉通り意見が聞きたいという考えだったのだが。
リーンは小さな足を止めた。人混みの中、淡い光を携えて射貫く眼差しでこちらを見つめている。
「……ニールさんは」
ざわめきに掻き消されず、その声は意思を持ってはっきり聞こえてきた。
「姉さんと結ばれる気は、ありますか?」
「あるよ」
穏やかに、けれども迷いの無さが伝わるように。
彼女は僅かに目を見開いて。そうですか、と感情を隠して細めた目で笑った。

(いいわけ)835字。ここまで続くと思わなかった。続きは気が向いたら。

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