幼馴染の予定の話

「なあ、買い出し終わったら──「ごめん。今日は別行動させて」
とっくに日は昇っており、町ももうすぐ目覚める頃。規則正しく起きた三人は宿屋で簡素な朝食を取っていた。
コーンが提案しようとした今日の予定が、たった一言二言で遮られる。あまりの勢いにコーンは口を半開きにしていた。仕方がないので代わりにルークが彼女に尋ねる。
「何か予定でもあるのか?」
「…ええ。少し試したいことがあるの」
目を伏せたリオノーラに違和感を覚えたが、いま追及することでもないなと適当に相槌をうつ。
「買い出しは二人でお願いしていいかしら。どうぐ袋とお金も預けるから」
「おう! 任せとけ」
「待ち合わせ場所決めておくか。東の外れでどうだ? 街道につながる所から」
「分かったわ。時間は…昼の市が開かれる頃でいいかしら」
「こっちはそれで充分だよ」
「じゃ、また後でね」
先に席を立つリオノーラを見送って、その扉が閉まると同時に、二人は立ち上がった。
「ルーク、買い出し頼めるか?」
「任せろ。静音の補助魔法つけてやるからしくじるなよ。後で教えてくれ」
「おうとも!」
二人とも考えることは同じ。リオノーラの尾行だ。
それはそれとして買い出しは行わなければ道中自分達が困るので、別行動しなければならない。三人分の食料や道具を買い付けるのは重労働だが、今は好奇心が勝っていた。
コーンと分かれて、町に繰り出す。ルークは伸びをして、町の最短ルートから弾き出すことにした。


買い出しを何とか終えたルークが、コーンとの待ち合わせ場所に着くとそこには。
「──お願いしていた買い出しはきちんと終わらせているのかしら? ルーク」
仁王立ちのリオノーラと、その隣で『バレちった!』と気まずそうに視線を彷徨わせた共犯者がいた。その様子ですべてを察する。思わず顔を覆いたくなったが、両手は荷物で塞がっているのでそれもできない。
「こんな量、一人で大変だったでしょうに。訳のわからないことに全力出すのやめなさいよ…ほら、コーンも持って」
「うっす」
「面白い予感がしたからついな」
「開き直らない」
「「スミマセン」」
「錬金術の実験してただけよ。……睡眠誘発薬。今夜試してみなさい」
荷物の受け渡しざまに、リオノーラが小瓶をルークに握らせる。驚いて瞬き一つ、たっぷり一拍固まった。
それから吹き出して。コーンも一緒に巻き込んで笑って。反省しなさいと彼女に怒られるまで、あと僅か。

(いいわけ)1017字。端折りに端折ったけどだめだった。コーンには睡眠誘発薬のことは内緒にしているリオノーラ。多分ルークが知られたくないので。

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