ある日、森の中で 2

「そういやルフィナ遅いな」
「俺が見てくる」
サッと立ち上がると、ルークは木々の中へ紛れていった。森は深く、神官の白い上着を着ているルークの背中でもすぐに見えなくなった。
「…やけに何か早くなかったか? 立ち上がるの」
「心配してたんじゃない。小さくて可愛いものには面倒見良いじゃない」
「ルフィナはそんなに小さくないけどな。すねるなすねるな」
「拗ねてないわよ!」
木の皮を削る手が乱雑になる。リオが怪我をすることはそうそうないから、笑い飛ばしてオレも手を動かした。薬草を軽快に割いていけば、独特の匂いが僅かに鼻をつく。
「………ルフィナ、大丈夫かしら」
しばらく沈黙が続いた頃、リオは思わずといった様子でその言葉を口にした。
「心配しすぎじゃね? ルークが行ったんだし、今頃──「そうじゃなくて!」
「あの子、北の生まれでしょう」
自身の言葉に苦虫をかみ潰したように眉をひそめるリオ。まったく話が見えないオレ。そんなこちらの様子を察したのかリオはため息をついて、言葉を続ける。
「彼女の生まれが北であることは分かるわね?」
「おう。見た目でな」
プラチナブロンドに、深みのある赤い目。名前の響きもどことなくこの辺りと違う。
「おそらくだけど。…北の大陸、雪山の麓の生まれよ」
雪山特有の特別な炭の作り方を知ってた。呟くそれは、リオにとって確信するに足るピースなんだろう。
「そういや、幼い頃に村を離れたって言ってたな」
「嫌な予感がするの。北は彼女にとって良い事がない気がする」
リオの手はいつの間にか止まっていた。心なしか顔色がよくない。
リオの直感は当たる。それが悪ければ悪いほど。
大体、幼い頃に故郷を離れたって時点で、それが良い理由であるはずがない。
「仲間なんだから、守ってやればいーんじゃね?」
「……分かってるわ」
でも心までは、もうどうしようもないじゃない。
不安に濡れる声音に、オレは自分の両手を確認する。…草くさいが、まあいっか。
手のひらでがしがしとリオの頭を雑にゆする。
「大丈夫だろ。アイツは割と強いよ。結局、めげずにパーティー入りしてきたぐらいだし」
「うん、…そうね」
トーンの高い声。隠された不安にルフィナは気づかないだろう。リオは肝心な時、分かりやすくはない。
何だかんだ、オレ達はルフィナを仲間だと思っているのだ。付き合いの深さなんてのは、あとからついてくる。
リオから木の皮を取り上げて、あらかじめ決めていた場所に魔法の火種をそっとこぼした。木の皮に弱々しく火が灯る。燃料はこれだけじゃ足りないが、そろそろ木々を拾ってきたルフィナとルークが戻ってくるだろうから問題ない。この火は戻ってくる二人にも良い目印になるだろう。

(いいわけ)1131字。RPGのコーンとリオノーラ。600ぐらいで字数は守れないと悟った。色々書ききれなかった。

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