Find a star in the blue sky.

散々泣いた後の夜明けの空は、いつもよりちょっと手厳しい。
風は容赦なく吹き付けてきて冷たくて頬が痛いし、差し込み始める光が眩しくてこれも目に痛い。真っ暗な夜を押し出すように白くなっていく空は、世界が広いということを嫌でも実感させられる。
眼下に広がる街は、まだ人っ子一人いなかった。だからこそ私も、こうしてのんびり空を飛べている訳で。
『お姉ちゃんがコーエン家と結婚しないっていうのよ。リーンからも話をしてあげてちょうだい』
『放っておきなさい。お前も好きにしていい、リーン』
両親の言葉はあまりにもバラバラだった。
どちらの言う事を聞こうと思った訳じゃない。私は私の意思で会いに行った。話をして、姉さんの意志は変わらないと知った。それがちょっとだけ寂しくて、不安で…心配で。
姉さんは昔から私の手を引いて、守ってくれていた。
私が空を飛ぶ力を発現しても平和に暮らせているのは、紛れも無く姉さんのおかげだ。
姉さんは強い。強いからこそ、周りが放っておかない。けれども姉さんは、ここ一番の時になったら、何もかも振り切って自分が信じた道を突き進む。繋いだ手をゆっくりとほどいて、笑って振り返らず駆けていく。私はそれが、どうしても怖くて心配なのだ。
山に登って、その頂上で暮らした男がいつか星になったように。姉さんはそんな生き方ができる。できてしまう。過去の遺物と伝説を背負って、おとぎ話の綺麗な存在にされてしまう。
行かないでほしい。ここで、人としてずっと私達の姉さんとして生きていてほしい。
だから今まで婚約解消されていないことに安心していた。私よりも頭が良くて行動力もある姉さんは、婚約者のニールさんの前では年相応に見えたから。姉さんを繋ぎ止めておけるのはニールさんなんだと思って、ずっと二人を見守っていた。
「……ニールさんは、どう思っているんだろう……」
顔を上げる。騎士団の詰所は空からは目と鼻の先だ。近くに降りて朝を待とう。
今日の指針を決めれば、後は空を飛ぶだけだ。箒の柄を軽く叩いて、夜明けに急かされるように私はスピードを上げた。

(いいわけ)871字。姉をとうといものだと知りながら人間でいてほしい妹の話。姉にとっての妹は、妹自身が思うよりも無力ではないことを知らない。

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