Become a world that rewards the future.

「──いつまで今の状態でいるつもりですか!!」
「相手は由緒正しい騎士の生まれ。コーエン家の気が変わらない内に早く迎え入れなければならない。分かるな、アイシャ」
変わらない光景。嘆息一つ許されない空気。
久々に帰ったと思えばこれだ。気が滅入って足が遠のくのも当たり前だと思いたい。
「分かりませんね」
「アイシャ!」
母の非難の声が響き渡る。視線を合わせることもしないまま、淡々といつもの反論を口にした。
「家が栄えて何になります? その未来の先にお母様は生きていないでしょう」
「何と心無い言葉を……あなたは未来の子孫が可愛くはないのですか!」
「…家はリーンに任せた方がいい。その方が二人とも安心するでしょう」
「アイシャ・ラングリッジ」
父の低い声が個としての私を呼ぶ。改めて背筋を正せば、冷静な眼差しがこちらを見定める。
「お前は、何の為にその道を行く?」
「……───……」
分かってもらわなくていい、なんてのは嘘だ。
理解なき孤独はそれだけで毒だ。必要の無いことまで悲観的になる。だけど私が成し遂げようとしていることは、この上なく未来のためだ。そんな私が、未来を信じなくてどうする。
「──人の血脈より長い星の運命から、この国と民を解放するため」
「……大きく出たな。正気か?」
「ええ。これがあなたの娘です」
私と向き合う父の表情。その頬が、一瞬緩んだ気がした。
「…良いだろう。家を継ぐのはリーンに任せる。僕から話をしておこう」
「あなた!」
「元々何の特徴もない平民家庭だ。さしたる問題でもない」
父さんが家を継ぐことに執着していないのはわかっていた。そうでなければ、子供を二人姉妹だけで終わらせるはずがない。
わかっていたけど、こうして面と向かって理解を得られた安心は別だった。
「ありがとうございます、父さん」
「礼はいい。僕達は元から対等だ」
早く行きなさいという素振り。母さんはショックで言葉も出てこないようだった。二人に背を向けて、実家の玄関から出ていく。
今じゃなくていい。ただ、遠い未来。私が信じる未来に、少しでもこの道を知ってくれる人がいれば。
「……それだけでいいと、言えるようになりたいなあ」

(いいわけ)915字。名前考えるのに数時間かかり、タイトル決めるのに一時間かかった。前作と続いているようなそうでないような。
前作はこれ

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