二人は一人のために、三人は三人のために。
「あれ、リオは?」
「宿代交渉中」
「お前行かなくていーの?」
「さっきの大回復で気力がカス程しか残ってねえ」
「なるほど」
コーンは向かいに腰掛けるとこちらに手を伸ばしてきた。抱えていたコップを横流ししてやれば、嬉しそうにあおった。
「サンキュー。やっぱ一息ついた時の一気飲みは美味いよなー」
「は? お前全部飲んだのか?」
「げ、ごめん。つい……」
「ついで済むなら教会いらないんだが。ったく……」
傾けた容器の中は見事に空。自腹切って注文したんだが。飢えた喉には知らん振りをする。
こちらの気も知らずに、正面の幼馴染は本題とばかりにテーブルに身を乗り出して顔を寄せてきた。おそらく大きな声を出さないようにという注意だろう。カウンターまでは距離はそこそこあるが、少し声を張れば会話は丸聞こえだ。
「…なあ。明日の夜飯、何にする?」
「とりあえず肉だろ。食ってマイナス思考を追い出すぞ」
明日は錬金術師の試験日。リオノーラも一次試験から受験予定だ。受験者の証明となるブレスレットは既に受け取ったし、あとは会場につくまで盗まれないように俺達で護衛するだけ。
リオは普段は気丈に振舞っているが、はっきり言って根暗だ。試験が終わった後一人にさせたら、ウジウジ悩んで勝手に自滅してしまうに決まっている。
「お前、普段は頭いーのにこういう時は意外と雑っていうか……」
「病気じゃねーんだから気晴らしさせるしかないだろ。このあとリオの好きな蜂蜜買いに行くぞ」
食って飲んで(俺達にまだ酒は売ってくれないだろうが)、騒いでぐっすり眠れば大抵のことは気にならなくなる。
「それなんだけどさ。ちょっとオレ別行動するわ」
「…何かあったか」
俺の低い声に応えるように、コーンが声を殺して話を続ける。
「……目星がね。ちょっと仲間のフリして探ってこようと思って」
「深追いするなよ。ヤバそうだったら逃げろ」
理由は山程あるが、毎年受験者は襲われる。単独で組織は潰せないから、リオのために襲撃ルートを把握しておこうというところだろう。
「二人ともお待たせ! 何してるの?」
「サンキュ、リオ」
「何も。コーンが俺のレモネード全部飲んだから夕飯のパン譲るって約束したとこ」
「ハッ!? そんな話してねーだろ!」
ワイワイと話しながら、宿を出て街の通りを三人で歩いていく。二日後の朝も同じような明るさで出ていくために、それぞれが最善を尽くす時なのだろう。実るか実らないかは、天のみぞ知る、だ。
(あとがき)1033字。とにかく書かなきゃと思っただけで何も考えてませんごめんなさい。出来がひどい自信はある。『古典的なRPGの進め方』の幼馴染三人でした。
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