探し物スキルの話

「おーい。まだー?」
早く見つけて明るいとこで読めよ。そんなこちらの心配も露知らず。幼馴染は小さなメモを片手に本棚の前でうろついていた。
「待って、なかなか見つからなくて…この辺のはずなんだけど…」
「どれよ。貸してみ」
いい加減待つのも飽きた。メモを取り上げて本のタイトルを確認する。一番近い目線にあった段から順に見ていけば、ものの数分でお目当てのものは見つかった。本の頭に指を軽く引っ掛けて引っ張り出す。
「ほら。これだろ?」
「……流石ね。ありがとう。助かったわ」
「お前もルークも、昔から探し物が苦手だよなー」
「そんっ…! ……なことは、ある…けど」
「はは。あるんじゃん」
まだ未練がましく他の本棚に目移りするリオを追い立てて、部屋の入口へと足を進める。
「探し物のコツ、教えてやろーか?」
「得意気な顔が気に入らないけど…教えてちょうだい」
「頭ん中空っぽにしろ」
「?」
理解できない、と言いたげに眉をひそめるリオ。リオはなかなか頭が固い。ちょっとアドバイスのつもりだったのに、これは骨が折れそうだ。
「そのままだよ。思考することをやめて、目に見えてるそれらをそのまま認識する。それで、対象と合致するものが無いか無心で照らし合わせる。そしたら大抵のものは見つかる」
扉を開ければ、外からの光は目が痛くなるくらい眩しかった。
「リオは常に考えすぎなんだよ。思考するかしないかぐらいもできるようになれよ」
「…ご忠告どうも。ルークにも言ってやってちょうだい」
「お、またなんかあった?」
「考え事に夢中で私の作ったスープが手付かずだった結果、冷めたものを平然とすすっていたわ。せっかく出来たてをみんなが揃っている時に用意したのに!」
「おお…言っとくわ」
そりゃルークが悪い。フォローの余地無しだ。
思い出し不機嫌で足音が荒く、しかし軽快に屋敷の中を進んでいく。大方、蔵書の主に一言断ってから持ち出すのだろう。
このあと合流するもう一人の幼馴染の姿を思い描いて、柄にもなくため息をつきたくなった。
器用なクセにいつも一緒にいるリオノーラをよく怒らせる。だけど悪巧みをしている時はピタリとパズルのピースのように噛み合う。
相性が良いんだか悪いんだか。悩みの種でもありながら、二人とは良好でしかないオレには少しうらましくもある、なんてのはあまりに器が小さい。きっとこれは、オレしか知らなくていい話だ。

(いいわけ)1004字。この三人よくネタが浮かびますが書きやすくはない。そして絶対に字数に収まらない。そろそろ学習したい。
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