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灯りが切れた話

「灯りをつける魔法とか無いの不便だよなー」
「今それ言うか?」
コツコツとランプを叩く音が響く。中には使い物にならない光魔法の灯石が入っている。この真っ暗な洞窟の中、コーンの目ではランプに入っている灯石まで確認ができなかった。
「困ったわね……このまま進むのは危ないし、一度引き返す?」
「えー!? まじかよ。あとちょっとで採取も終わりそうなのに」
「リオ、錬金術でこれ何とか直せないのか?」
錬金術はより元素に近いエネルギーを物質化するための魔法だ。門外漢の二人には、錬金術を修めている人間なら確かにできそうな気がした。幼馴染に期待の眼差しを向けるが。
「無理ね」
バッサリとその可能性を切り捨てられる。取り付く島もない声音だ。
「諦めんなよ!」
「そうだ! もっと熱くなれよ!」
「根性で何とかなるなら試験も教会もいらないのよ」
ギャーギャーと騒ぐコーンとルークを他所に、少し様子をみようと簡素なカンテラを取り上げた。
逆さにして、光るはずだった石を転がして手に取る。何の色も映さない灰色の石。まだ錬金術師の資格を得ていないリオノーラは、物質解析の講習を受けていないためこの石の状態が分からなかった。
ため息をついて、石をカンテラの中に戻そうとして、手が滑る。石が地面に転がった。
「あ!」
「どうした、…って」
「なんだ? 光ってるじゃん」
「……やられた」
地面に転がった石は二つに割れていた。その割れた断面から淡く光が放たれている。
「これは灯石じゃないわ。ただの蓄光石よ」
「つまり?」
「その辺に転がってる石ってこと」
「まんまと偽物を掴まされたってことか……」
事態を把握したルークが唸る。
灯石は錬金術師は作成した、光魔法からなる人工物だ。本来なら数日〜数十日まで保つ。しかし、この蓄光石は自然に生まれたただの石。人の手を加えられていないため、自然の範囲でしか光らず、灯りにするにはとても頼りなかった。
三人の目が剣呑な光を帯びる。立ち上がるまでいくらもかからなかった。
「とりあえず魔物避けの薬被っとけ」
「最速で街に戻りましょう。あの商人が逃げないうちに」
「とっ捕まえてギルドに突き出すのか。よし任せろ!」

(いいわけ)915字。本当は魔法で灯りをつけられない話を書く予定でした。いつか書きます。

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