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She decides the continuation of the sky.

「リーン! 今日はこれもお願いできるかな」
「はーい。…って……」
持ってこられた荷物の大きさと量に、愛想笑いが引きつるのを感じた。
大きな籠。小さな子供一人なら中に入れてしまいそうな大きさ。その籠いっぱいに入っているのは干しなつめだ。容赦なくぎっしりと敷き詰められている。
「……おじいちゃん。これも一緒に運ぶのは無理だよ」
既に預かっている荷物は、私が前でも後ろでも目いっぱい持ってやっとの量だ。多少の荷物なら頑張ろうと思ったけど、飛行する時のバランスを考えるとこの籠一つで一回分終わってしまう。
「おや? 魔法で何とかならないのか?」
「そもそも魔法使いじゃないよ……」
完全に混同されている。私はただ空を飛べるだけの空使いだ。
この国に魔法使いはほとんどいない。何故か魔法を行使するのに必要な魔力持ちがあまりいないからだ。閉鎖的で国交はほとんどなく、稀に私のような異能持ちが生まれるだけだ。
私の能力は空使い。空を飛べる力。高度の制限や何か物に捕まっていないといけないという条件はあるけど、それなりに便利で、今日みたいに荷物を運ぶという『おつとめ』を行っていたりする。
空を見上げる。今日は快晴。風は吹いているけれど、突風の兆しはない。
「今日じゃないとだめなら、先にこれを置いたらまた取りに来ることもできるけど…どうする?」
「じゃあ…お願いしてもいいかい?」
「任せて。また後でね」
荷物を背負い直し、右手で残りを抱える。絶対に荷物が落ちないように、腕に余った布を巻きつけてしっかりと抱えた。
箒に横乗りして、左手で柄を持ち上げるように軽く反らす。みるみる高度は上がり、風をはらんでフードの中が軽く膨らんだ。いつも見る街の景色だ。
「…今から街の端まで行って、また戻って、行って……」
押し殺していたため息がつい、溢れる。心なしか荷物もいつもより重たい。空を飛ぶのも荷物を運ぶのも、案外消費する気力は人と変わらないのだ。
これは先生に褒めてもらわないと。早く終わらせてしまおうと、箒の柄を軽く叩いてスピードを上げた。

(いいわけ)864字。空使いの話。空が飛べるだけと本人は言いますが割とすごいことに気がついてない。そう仕向けられています。

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