夕飯前、宿屋にて。

「おかみさーん。いるー?」
宿の店主に用があったから、一階の食事処まで顔を出したのが厄介事のはじまりだった。
オレの見た目はまんま十四の男。背は特別高くない。剣は振るってるけど、筋肉モリモリというわけでもない。加えて室内なので得物も持ってない。
そんな無い無い尽くしのオレは、珍しく幼馴染二人から離れて単独行動していた。手分けして作業した方が早かったのだ。いや、経緯はこの際どうでもいい。
「どうしたんだ? ボウヤ」
その声が返ってきた方を見て、目があった瞬間、何となく直感した。…こいつら、すげーめんどくさい気がする。
とはいえオレのでかい独り言に返事をしてくれた人間を無視するのもなんだかな。てきとーに室内を移動しながら、男三人に当たり障りのない言葉を返す。カウンターに立て掛けてある箒を見つけた。
「…あー、かみさんにお願いしたいことあってさ。いないなら出直そっかな」
「おいおい、そんな急がなくてもいいじゃねえか。おれらとちょっと遊んでこうぜ?」
あ、こりゃダメだ。複数の嫌な感じの笑顔で早々に悟る。オレは顔を見せたときから目をつけられたのだろう。ツイてねえな。
断る〜的な言葉を並べながら、オレは箒を手にした。一メートル以上はありそうな柄。これなら代わりになるだろう。
会話をしながらお互い移動をしていた。オレは半円状に三人の男たちに囲まれていて、あと一歩踏み込まれれば手が届く距離。出入口まで大股で三歩。背後にはまだ退路がある。
「…大の男がよってたかってはダサいんじゃないの?」
「言ったな小僧」
箒を片手に挑発。面倒なので女将さんが来る前に片付けよう。ようは勝ちゃあいい。

「…で、あれは何なの?」
カウンター前、女将にガミガミと叱られている大の男三人を幼馴染が指す。
「売る喧嘩を間違えた大人の末路」
その言葉で全て分かったのか、リオは呆れたように息をついた。言っとくけど、お前が今飲んでるフルーツジュース、アイツらに奢らせるやつだからな。
「他人事みたいに言うけど、代金あいつらにツケるならお前がふっかけたってバレるんじゃないか?」
「や、先に暴露してきた。勝ったからいいって」
「完全勝利の美酒って訳ね。上出来だわ」

(いいわけ)920字。見知らぬ他人に絡まれるパート2。RPGコーン視点でした。女将が怒ってるのは①子供に絡むな②ふっかけたくせして負けるな③備品をめちゃくちゃにするな が大体の理由。

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