一人百物語

21 爆笑する話

派遣アルバイトの休憩室での話。派遣先でたまたま配属先が同じになった2つ上の先輩と昼休憩を取っていた時のこと。休憩室は机と椅子、派遣のアルバイターたちの荷物や制服、ロッカーが並べられている雑多な部屋で、交代制で休憩をしにいっていた。部屋のあちこちで仲の良いグループで昼飯をとっているため、ときたま話が盛り上がったのか笑い声が響き渡ることがあった。自分たちも自分たちでそんな時はあったので特に気にかけることもあったが、ことが起こったのは休憩終了直前、立ち上がったその時だった。

「「ぎゃっはっはははははははははははっはは」」

男のしゃがれたような大笑いが唐突に聞こえてきた。

一瞬にして休憩室に静寂が訪れた。休憩室にいた全員がそれを認識していたように思う。その笑い声は若い男性のようにも思えたし、老人のようにも思えた。その場にいた人間にそんな声はいなかった。どこから上がった声なのかも、誰の声なのかもわからない。そのあと何が起こったわけでもない。

あの声はなんだったのだろうか。

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