一人百物語

15  揺れる話

友人から聞いた話だ。居酒屋バイトの彼女は深夜までシフトに入り、12時過ぎに帰宅した。

(あー疲れた)

風呂に入るのも億劫で、道中購入したコンビニのグラタンをレンジに放り込み、着替え始めたその時、ぐらりと足元が揺れたような気がした。

(え、地震?)

一瞬身構えたが、カーテンもテーブルに置いたペットボトルの中身も揺れておらず、その後ぐらぐらとする感覚も無かった。気のせいかと座って食事を取りその日はそれで終わった。

翌日、その日も深夜ラストの時間までシフトに入り、帰宅していた時だった。明確に足元がぐらつき、何かにつまづいたようによろけてしまった。

(うわっ)

幸い転ばずに済んだが、昨日の事もあり、薄気味悪く感じたという。

その日から時折足元がおぼつかない事が度々あるようになった。決まって夜に起こるそうで、1日一度は起こるようになってしまった。1週間が過ぎたあたりで病気を疑い始めた彼女は、医大を目指す別の友人に相談を持ちかけたそうだ。実際に触診したり…は流石に知識不足だが、会ってわかる事もあるだろうと久々に会うことになった。

当日、友人は彼女を見た瞬間、見たこともないような、苦虫を噛み潰したようなしょっぱいような顔をした後真顔でこう言ったそうだ。

「あんたそりゃ、よろよろもするわ。だっていっぱい足元にくっついてるもん。」

彼女がお祓いに行ったのは言うまでもない。

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