人を動かす『＋α』のサービスとは〜深夜タクシーで出逢った一流のサービス〜

先日、深夜の東京の片隅で、素晴らしいタクシー運転手さんに出逢いました。

今日は、人を動かすサービスとは？そんなお話を綴ってみます。

それは朝から続いた仕事を終えた帰り道のこと。

久しぶりに胃の激痛に襲われて（涙）、とにかく体を一刻も早く横にしたかった私は、タクシーに乗れば横になれる…！と思う一方で、週末の終電後、乗り込むなり横になる乗客なんて、(酔っ払いかよ…)と運転手さんを不安にさせてしまうよなぁ…と、『タクシーの中で横になるかなるまいか？』を決めかねたまま目の前にやってきたタクシーに乗り込んだのでした。

身体をシートに預けると、少し痛みも和らいで、家まで我慢できそうな気もしたので、やっぱりこのまま座っていよう...と思ったその時。

運転手さんがこうおっしゃったのです。

「お客さん、さっき腰に手を当てていらっしゃいましたけど…」

(たしかに、胃の痛みから腰と背中も痛かった私はタクシーに乗込む直前に腰を押さえました。でも押さえただけでさすったりはしていません。)

私「あ、はい。(？？)」


運「もし腰が痛いようでしたら座っているのもお辛いんじゃないかと…」


え！！！？

思いがけないお言葉でした。
あの些細な動きから、よくお気づきになられましたね！！？なんで！？と驚きながら、ならば、とお気遣いに甘え「あはは。実は胃が痛くて、できれば横になりたいんです。。」と返答すると

運「どうぞどうぞ。ご指定の建物が見えてきましたらお声かけますから。」

・・・・・・・｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡

おかげさまで、私は靴まで脱いで、心置きなく体を横たえることができたのです。

背中にあたるシートは温かく、車の揺れはこの上ない心地よさ.・・・目を閉じて痛みが和らいでいくのを感じながら、私はこの運転手さんのサービスに感動していました

この時の感動を言葉にするとするならば、

今、いちばん欲しいものを差し出していただいたことへの感激と、ハートのど真ん中をスッと射抜かれた快感…でしょうか。

言葉にしないニーズを察知し満たす

実はあれから2か月程が経ちました。何度振り返っても、あのタクシー運転手さんのご配慮には頭が下がります。

たしかに私は腰に手を当てました。でも、深夜といえど人目もあるし、そんなに痛々しい様子は見せていなかったはずなのです。

ほんの数秒、前の人を乗せたタクシーが走り去り、私が乗るタクシーが目の前に滑り込んでくる間のほんのわずかの間“手を当てた”だけ。

運転手さんはそのわずかな動きに目を留め、自分が乗せるお客の『目に見えない』ニーズを察知したんでしょうね。

タクシー運転手をされている方々はおそらく、年頃や性別、身なりなどからお客の様子を見てとることは日頃からしていらっしゃるのでしょう。でも、私の知る限り、お客が言語化しない、“真の”ニーズをこれほど的確に察知できる運転手さんは多くはない気がしますし、仮にお客の動きに目を留めたとしても、目に見えないニーズを察知して、こんなにもどストレートに心地よく『満たせる』方は更に少ないのではないでしょうか。

それはまるで一流ホテルマンが見せてくださるサービスでした。

人を動かす『＋α』

翌朝目が覚めてもなお、昨晩受けた思いがけないサービスの感動は冷めることなく、気づけば、「この感動と感謝をあの運転手さんが所属する会社にお伝えしたい」と考えていました。

そう。人を動かすのってこういう時なんですよね。心が動いた時に人は行動したくなる。お客の感動が行動、言い換えれば『口コミ』に替わる瞬間でした。

運転手さんがしてくださったお気遣いに名前を付けるとするならば『＋αのサービス』でしょうか。

タクシーの場合、お客を目的地まで運ぶのが主なサービス内容。その過程で大きな荷物はトランクに積んであげるとか、空調の調整をするなど車内をできるだけ快適に保つといったその辺りまではマニュアルのようなものにも記載があるかもしれません。お客であるこちらからしても“想定内”です。

でも、『腰に手を当てた場合は体調不良の可能性があるので必ず声をかけましょう』というような記載はマニュアルにはないと思うのです。それはマニュアル化できないサービスだから。

ブライダルMCにも欠かせない『+α』

私達は常日頃から、新郎新婦さまや親御様やゲスト、式場の方々から喜んでいただけるようにと心を尽くします。時に身に余る言葉をいただくこともあり、本当に嬉しく光栄な想いに満たされます。

今回幸運にも一流ホテルマンさながらのタクシー運転手さんに出逢えた一件は、その度に思うことにも通じているように感じます。

司会者であれば間違いなく進行したり、プロフィール紹介文をまとめたり、明るく盛り上げたりするのは当たり前のこと。それは明記しているサービスの範囲内。

そこを無難にこなしていても、いわゆる『熱のこもった口コミ』はいただけないことは、自分も含め多くの司会者さんの例からみても明白です。

人が行動を起こしたくなるのは、すごい！嬉しい！有難い！そんな気持ちが高まった時。現に私は感動がメーターを振り切って、運転手さんにお礼の気持ちを伝えずにいられなかったですし、そればかりか、2ヶ月前のことにもかかわらず、こんな長文までしたためているのですから（笑）

人を動かすということは、人の心を動かすこと、
なんですよね。

私もただの『進行役』ではない『＋α』をもっともっと探求していきたい！と胃痛の残る弱った体とは裏腹にハートに火が付いた夜でした。

あの夜の運転手さん、本当に本当にありがとうございました♡