マガジンのカバー画像

『論』「哲学の散歩道」 —コラム、論述―

47
言を輪すると書いて論。侖(りん)は輪のように順序を追って連なるものをいう。現在『哲学の散歩道』を連載中。様々な討論をするための話題を提供するコラム。写真は沖縄に沈む夕日。沖縄では…
運営しているクリエイター

記事一覧

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 最終回 Vol.12(4194文字)

前回Vol.11にて、桜の咲く前に「こころ観のこころみ」を終わらせるはずだったが、想定外のことが生じて少々記事を書くのに難儀を生じたため、最終講が遅れてしまった。そして、この記事を書き終わる頃には、次の命題に気付いているだろう。 人生は、ときに予期せぬことが起こる。手前味噌な話で過去に結構波乱万丈もあったので、少々のことでは落ち込まないのだが、やはり日常生活に支障があるというのは、かなり辛いことでもある。 そう、だから、今こそ与えられた御霊を磨き切ることが大切。それができ

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.11(3510文字)

さて、この「こころ観のこころみ」は、桜が咲く前に完結させる予定である。まさに今、蕾の中で沈潜する生き活きとした活動を窺い知ることはできないが、そのような内部の働きを明らかにした暁に、初めて華々しい開花という展開が待っている。そう信じてお話を進めていく。 人間関係は、コミュニケーションを常とする。それが、社会生活の全てと言っても過言ではない。 マガジンのはじめに指摘しているように、これらの活動は、主体と客体、主観と客観など、「自己」と「他者」の対話により形造られる一つの造形

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.10(3856文字)

これから本格的な「立体モデル」の解説に移るのだが、いつも、この段階になると、このモデルがどんな役に立つのか、何かご利益があるのか、という質問が投げかけられることがある。 はっきり言うと、これらの構造を理解したからと言って、生活が楽になったり、マインドがリセットされ苦痛から解放されたりすることは、ない。 正直、お得なことは、あまりないだろう。 プロデュースする側の意識やモチベーションは非常に高いのだが、(笑) いや、つまらない前置きを書きたくなるのは、自分自身のトラウマか

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.9(3250文字)

「哲学の散歩道」も秋の装いになってきた。 いつも定点観測をしている桜の葉も枯れ葉になり散り始めた。冬枯れた木々の中に、また来年「花」が開くために、その「核」になる確たる循環の中心がある。それは、今回お話する「己」の構造そのものである。 今回はVol.9であるが、敢えて意図的に回数を区切っているわけでも、このマガジンを進める上でシナリオやシラバスがあるわけでないにもかかわらず「9」というのは何の因果であろうか。 実は、「9」という数字には深淵な意味がある。それは、今回お読

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.8(3758文字)

『哲学』の散歩道 SEASON3「こころ観のこころみ」では、私たちが理解している主観/客観、主体/客体の関係性を多角的に見立てる作業を続けてきた。さらに、主観/客観の基となる、主格/客格という概念にも触れた。 今回は、この主格/客格についてさらに性格を踏まえた論証を深めていく。 1)「格」の視点近年、多角的メタ解析により性格という目に見えない心の変化をある程度見える化できるようになった。 特に、ポジティブ心理学が提唱する、キャラクターストレングス(CS;強み)やビッグ5

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.7(1536文字)

前回の層から、だいぶ日にちが経ってしまったが、我ながら、今までの「こころ観のこころみ」を読み直し、正直、唸った。 非常に構造的な理解が深まるだけでなく、主/客の構造について、こころみの段階ではあるが、良くまとまっていると自負している。 いままでの図をご覧いただければ、大体のことは見通しが付くはずであるが、今回は、個々人と集団の振る舞いの違いをそれぞれ解説していくことにしよう。 1)「主/客」に潜む層先ず以前、個々人の「身近な!」問題から生じる「身」の部分が最も「主」的で

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.6(3491文字)

令和5年、桜も満開になった。気付けば、前回の記事から4~5カ月経っている。この間、「時間と空間」、さらには「物質と精神」の結びつきについて思案していたが、思索は尽きない。 やはり、形を通して理解するために、このブログで一貫して検証している『こころの立体モデル』の取り扱い説明が肝要だろう。 そこで、今回も前回までの振り返りも含めて、話を進めていこう。 1)層の存在とは前回の、層の説明であるが、はたしてこれがどれだけ重要であるかは、普段何気なく生活する中で、あるエッセンスを

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.5(2080文字)

「社会」と「心理」 1)個々人と集団の違い さて、季節はすっかり秋を迎えてしまったが、前回は「主/客」の境界について、図説を交えて解説をした。 今回は、「個々人/集団」の視点から「主/客」の見え方を論じていく。 その前に少し解説を済ませておくことがある。下の図のように、自分軸を中心とした見立てにすると、①と②、③と④のように、「身近」なものと「神」的な、もっとも身から遠い存在までが見えてくる。 そして、この境界に存在する、つまり「身」と「神」の間にある「精」と「体

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.4(2236文字)

「身体」と「精神」 1)「主/客」の「境界」 「こころ観のこころみ」Vol.1にて、「身体」の熟語から「身」と「体」の間に「主/客」の境界の存在を見出し、主観/客観、主体/客体の導入として「身体」という語彙を挙げた。今回は、図説を交え、そのポイントをもう一度確認しておこう。 自覚が開く段階に応じて関係性は次のように展開いていく。 ① 客体に触れる私たちが、自分がある(あるいは居る)と感じる以前、つまり自覚がない乳幼児期は、視界に映るすべてのものは自分の体と判断し、自

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.3(2133文字)

「主」/「客」の相違 「こころ観のこころみ」では、身近な話題を通して「こころ」を見つめ直す、その世界観を提言する。 前回、主観と主体の違いをお話した。 この姿勢が最も「主人」に忠実であり、人生の主人公として自分が世の中に関わる最も好ましい姿を表現する言葉だろう。 哲学領域には、「認識論」と「存在論」あるいは、「観念論」と「実在論」と言われる領域がある。 少し表現は異なるが、これらの論争の行き着くところは、結局は「主/客」の観立てなのだ。 学問的に言えば、「現象学」

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.2(2250文字)

「こころ観のこころみ」では、身近な話題を通して「こころ」を見つめ直す、その世界観を提言する。 1)ある日突然に 「我が身」を感じる身近な話題とは何か。 人には、欲求がある。あれが欲しい、これがしたい、でも…そんなものが吹き飛ぶ瞬間がある。この瞬間こそ、「我が身」の真髄に触れる数少ない機会だ。 ある日、これらの欲求など全く察知されなくなる一大イベント。このような瞬間を通してはじめて、「我が身」が分かってくる。 それは、東洋の知恵では「生老病死」という。 生まれること

『哲学』の散歩道 SEASON3 「こころ観のこころみ」 Vol.1(2942文字)

「こころ観のこころみ」 今年も「哲学の散歩道」に桜が咲き始めた。 ここも花道になり、年に一度のお祭りのような華やかさだ。花道を見るのは3回目。そこで、新しい気持ちで「SEASON3」をはじめることにしよう。 「SEASON3」は、「こころ観のこころみ」として、こころの捉え方を記していきたい。 はじめに 「こころ観のこころみ」は、「心観」を「試」にかけた文字通りの言葉遊びだ。こころをいろいろに観じてみようという取り組みを指す。 たんなる楽観でも、傍観や静観でもなく

『哲学』の散歩道 SEASON2 Vol.13 『意識と次元』(8)最終回(2364文字)

今回は、「12」から「13」の数字の象形と次元のお話をしよう。 1) 「12」の象形的意義 「12」の象形的意義を見る前に、あらためて双対と相対のお話をしておこう。これは、数字の象形における他者と他者✽の区別だ。 他者は、一般的に言う他人ではなく、自分の中に居るもう一人の自分という意識内の他者を示し、これを双対と表現する。これは、『哲学』の散歩道 SEASON2 Vol.9 『意識と次元』(4)「数は「初めから双対だった」ことを明かす」で触れたように、自分と、もう一人の

『哲学』の散歩道 SEASON2 Vol.12 『意識と次元』(7)(1899文字)

今回は、「9」から「11」の数字の象形を解説しよう。 1) 「9」の象形的意義 「9」で自分視点と他者✽の視点を統合する。単なる他者は、自分の中に居るもう一人の自分だが、他者✽は、一般的には他人と解釈してよいだろう。それは自分の環境を取り巻く周囲に象られる様々な印象  に見て取れるものだ。その他者✽視点を獲得するということだ。 数字のストーリーでは、「6」で触れたように、最初に遭遇する他者✽とは母体である。その母体で自我の核「8」をつくり、「9」となる。 単純には「9