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「ゴシック」に込められた意味と、それを打ち壊すコインデザイナーの話


アンティークコイン紹介

今回は私のお気に入りであるアンティークコイン、通称ゴシッククラウンについてご紹介させて頂きたいと思います。
世界で最も美しいと言われる銀貨、ゴシッククラウン。
資産保全や投資を目的としたアンティークコインには金貨が選ばれることが多いですが、このゴシッククラウンは銀貨でありながら多くのコレクター・資産家に求められる逸品です。
ここからその魅力をお伝えしたいと思います。

コインデータ

名称:ヴィクトリア女王 ゴシッククラウン銀貨
発行年:1847年
発行国:イギリス
発行枚数:8000枚
グレード:PR63
同グレードPCGS鑑定枚数:67
市場価格:180~200万円

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ゴシッククラウン-アップ

ゴシッククラウン‐裏面

<コインの概要>


1847年に発行された、ヴィクトリア女王を描いたクラウン銀貨です。
PCGSにてPR63という高い鑑定評価がつけられています。

表面には、若かりし頃のヴィクトリア女王の肖像。
裏面には、イングランドを象徴する「3頭の獅子と」、スコットランドを象徴する「1頭の獅子」、アイルランドを象徴する「ハープ」と、各地域の象徴花「クローバー・アザミ・バラ」が描かれています。

コインの通称にもなっている最大の特徴は、刻まれた文字にゴシック体(ブラックレターとも)を用いていることであり、他と比較しても個性あるデザインです。

コインデザイナーは「ウナとライオン」で著名なウィリアム・ワイオン氏であり、ワイオン氏らしい精緻なデザインがアートとしての美しさを持っています。
裏面ではワイオン氏のイニシャルである「W.W」が王冠の左右に位置するようにデザインされており、彼の遊び心も伺えます。

総発行枚数は8000枚で、希少コイン群と比較して多い印象を受けます。
しかし、記念硬貨として発行されながら一般流通に用いられていたという背景から、削れ・スレなどの流通痕がない個体は貴重であり、状態が良いものほど高値で取引される傾向にあります。

加えて、ウィリアム・ワイオンデザインの完成度の高さから手放したがらないコレクターも多く、市場に現れても”いつの間にか”誰かの手に渡ってしまい、入手機会を逃してしまうといった逸話もあるほどです。

数多出回る銀貨と異なり、特別な希少性を持った銀貨ですので、資産保全や資産移転の用途にも適していると言えるでしょう。

金貨とはまた異なる、銀貨特有の重厚感がアンティークコインの楽しみ方を広げてえてくれます。銀貨専門のコレクターならずとも所有していて損のない1枚です。

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<ゴシッククラウンの”ゴシック”って?>


現代では一般的なフォント・書体として馴染みあるゴシック体ですが、ここにもやはり歴史的なストーリーが盛り込まれています。

「ゴシック」という言葉はそもそもルネサンス期のイタリアにてある種の蔑称として生まれたものでした。
ルネサンス期にはギリシア・ローマの古典文芸や聖書原点の研究を基に、紙や人間の本質を追求した、「ヒューマニスト」というインテリの人々がいました。
彼らにとっては古代ギリシア・ローマ的なものこそ至高であり、そこから外れた異邦風のデザインなど取るに足らない、「洗練されていない」ものでした。

そこで、彼らの価値観から外れた建築様式やデザインを、ローマ帝国における異文化的なものと捉え、「野蛮なゴート人風」という意味合いの「ゴシック」という単語で表現しました。
(ゴート人はローマ帝国時代にドイツ平原で暮らしていた民族で、ローマ帝国と戦争をしています。)

やがてゴシックという単語に様々な意味が付与されるようになり、近現代においては「中世ヨーロッパ的な~」程度の広い定義で用いられるようになります。

当時最先端の文化を形成していた人々にとって「洗練されていないもの」とみなされていた芸術文化が、今日においては最高のデザインとして讃えられていることからは歴史の連続性と面白さを実感できます。
「洗練されていないもの」から最高の銀貨たるゴシッククラウンを生み出したワイオン氏のしたり顔が見えて来るようです。

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