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【医と珈琲】コーヒーと苦み

AOMORI COFFEE FESTIVAL 2024 特別企画

(QRコードからアクセスいただいた皆様へ)ACF2024で医Café SUP?の珈琲をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。お手元の珈琲を飲みながら、短い間に浸れる、医療と珈琲の融合世界へご案内します。題して、

『医と珈琲』

店舗スタッフとバリスタ米谷が紡ぐ、エッセイ・掌編小説をお楽しみください。今回は、米谷の原案を基にした掌編小説をお届けします。


珈琲が怖い。津軽の海と平野を見渡す山の上で、祖父と最後に飲んだのが水出し珈琲だったから。

珈琲が怖い。親友の手術を待つ診療所で、事務員が淹れてくれた牛乳入りの珈琲が、ただ不安をかきたてたから。

珈琲が怖い。自宅で珈琲を淹れて粉を払うと、シンクの透明な水滴に触れて茶褐色に染まる様子が、心の奥の何かに侵食してくるようで。

珈琲を前にすると、不穏なものが迫ってくる気がする。

動悸は、ただのカフェインのせいだと分かっていても、僕はそれを珈琲に絡む過去の混沌のせいにしていた。

安心のための珈琲は、特別な誰かに淹れてもらわなければいけない。

繁華街脇にあるレトロな喫茶店。祖父に似たマスターが淹れる冷たい珈琲。結露した銅のカップに唇をつけ、苦い液体を喉に流し込む。

昭和に建てられたその店は、職場で胸のつかえを感じたときの避難所だ。

カウンターに座ればマスターと話せる。窓際なら黙っていられる。

ある日、マスターが言った。

「苦しみも、嗜みになれば趣味だよ」と。

ブラジルとエチオピアのオリジナルブレンドを、一口飲んだ。

執筆・編集:米谷隆佑
ヘッダーデザイン:齋藤凜、米谷隆佑
企画:米谷隆佑



医Café SUP?とは

医Café SUP?は、弘前大学の医学生が立ち上げた新しい形のカフェ。「医療系学生が作るカジュアルなカフェ空間」を通じて、地域とつながり、架け橋になることを目指しています。2021年3月のクラウドファンディングでは150%達成、同年4月に弘前市親方町で開店。3年後、現在は新店舗移転に向け準備中です。全国各地のイベントへの出店も精力的に行っており、運営はNPO法人ココキャンが担当。地域課題の解決や学生教育、居場所づくりにも力を入れています。

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