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【猫噺#10】今年成人式を迎えたちびのこと

ペットショップで譲渡された猫
 今から20年前、ふと立ち寄ったペットショップの一角で魔法使いのようなおばあちゃんが、仔猫のいるケージの横でパイプ椅子に座っていた。
 場違いな感じだったが、一般の方が自分ちで産まれた仔猫を譲ってくれていたのだ。

 ペットショップでは生体販売の利益はないが、餌などを引きつづき購入してくれるので、場所を貸しだしていたのだろう。
 今でも保護猫のためのガラス張りケージが、設けられていたりする。

 その後、幾度となく後悔するはめになるのだが、そこで私はばーちゃんに声を掛けて一匹のメスの仔猫を譲ってもらうことになる。

災厄の猫
 身分証を提示してその場でコピーを渡すと、スタッフの女の子が良かった~、と涙ぐんだ声を出したのが印象に残っている。 
 やはりこういう所に勤めている人は、一匹でも多くの猫が居場所を得て処分から逃れることを、お店の直接利益にならずとも望んでいるのだろう。

食欲まみれです

 このときのキジトラ猫がちびだった。
 のちにでぶ猫になるが、仔猫の時はそれなりに愛らしかった。
 ああ、そんなに祝福されて私の元に来たちびであったが、これがトンデモない災厄の猫だったのだ。

 なにしろ食い意地が張っており、自分のキャパ以上に胃袋に詰め込んではげろっぴするのだ。
 今、このとき、この場所にしてくれるな、という最悪のタイミングを逃さずにデロデロやってくれるのである。その才能には畏れ入る。

 大掃除でカーペットを洗って乾かし、きれいに敷いて、やれ一休み、と安心した瞬間を待っていたかのように、カーペットからコタツ蒲団に掛けて被害を最大限に拡大するように吐き散らす。

 猫がこんなにも吐き戻す生き物だとは、知らなかった。
 生物としての何かの機能が、欠けているかのようだ。
 この吐き癖みたいな習性には個体差があり、他の猫は滅多に吐かないのに、ちびだけは食っちゃ吐き、食っちゃ吐き、を繰り返す。

 お医者さんに診て貰っても、異常はなし。
 お腹がすいているような素振りなので、追加のご飯をあげると必ず恩を仇で返すように、盛大に吐いてくれる。
 まあ、私も学習能力に欠けると言えば欠けるのだが。

 これから猫と暮らそうと思う人は、テレビや動画などでは語られない猫の困った側面も知り、覚悟しておいて欲しい。

成人ですね、と先生に言われました
 そんなちびだが、同じ時期に暮らしたカワイイ猫たちが逝ってしまうなか、悪魔に魅入られたように元気で、食欲もあり、怠惰に寝て過ごし、今年ワクチンのときに先生に「成人式やね」と言われるに至った。
 20歳である(成人年齢は18歳に引き下げられても、20歳成人式の自治体が多いようですね)。
「この歳で体重が増加するのはオドロキです」
 夏場に食欲まみれだったとき、診て貰った獣医さんのセリフ。

老猫の寒さ対策
 ちびはいまや、一番の長老なので暑い寒いには気を使う。
写真の上にあるのが小型のボイラーで、カーペット内の管に温水を通すパイプが走っていて、ほのかに暖めてくれる温水暖房を使っている。

ちび太の愛用部屋

 写っている猫用コタツはすぐに壊れた品で、温水カーペットの上に櫓を置いているだけ。
 ただ下から暖められるので充分ぽかぽかする。
 寒いときだけ、コタツの中に潜り込んでいる。

 温水循環システムの利点は、ホットカーペットに比べて低温やけどや出火などのリスクが低いことだろう。
 ランニングコストも安いので、物価上昇のおり一日中つけっぱなしにしてもあまり心が傷まない。(ただしメーカーでは、上にコタツの櫓を組むような使い方は推奨していない)
 日本家屋の場合、暖めるより冷やすほうが難しい。

 この部屋はちびちびと兼用の老猫部屋で、二匹ともお腹が減ったりすると他の部屋に遠征したりしていた。
 今年老猫仲間のちびちびが逝ってから、ちびのほうも少し気落ちしたようで、部屋から出てくることもなくなった。

 フードが進化した今では、ハタチ越えの猫は珍しくないが、いっそこのままギネスレコードくらいになって、今までの汚名を挽回したほしいものなのだが。

#老猫 #猫のいる暮らし #温水暖房 #キジトラ #吐き癖

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