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音楽×アート ワークショップ実践レポート

養育里親・特別養子縁組家庭・ユースを主に対象としたワークショップ
きいて・感じて・伝えあおう!を8月2日(水)に実施しました。

昨年に引き続き2度目の開催。
NPO法人パフォーマンスバンクの飯島広介さん
MUSEUM de SESSIONの高橋直子さんに
今回もファシリテーターとしてご協力いただき
音楽の生演奏と対話を通じたワークショップを組み合わせ
音をきいて、感じて、その場にいる人とシェアしあいました。

左:星野はなさん 右:中村里咲さん

奏者は、東京音楽大学声楽専攻を首席にて卒業されたソプラノの中村里咲さんと、
現在東京音楽大学修士課程鍵盤楽研究領域(ピアノ)に在籍中であるピアニストの星野はなさんのお二人。飯島さんからのご紹介のもとで、ココポルタのワークショップへの主旨にご理解の上、ご協力いただきました。

◆アイスブレイク:音を体で表現リレー

まずは参加者の心とからだをほぐすためのアイスブレイク。
実際には持っていない「モノ」を手や体で表現して
隣り合った人に渡していく という事をやってみました。
ピアニスト星野はなさんの生演奏のテンポに合わせて
時に風船のような軽いモノだったり、鉛の玉のような重いモノだったり
渡す人も渡された人も、自分が持っているものをエアーで表現。
体を動かすと、自然と心も少しずつ開放的になっていきます!

◆その1:本物をきく

ピアノの星野はなさんの演奏でソプラノの中村里咲さんによる音楽を3曲披露。
最初の「うぬぼれ鏡」では、演奏前に歌詞を朗読し、どんな内容の歌なのか?をじっくり聞いてもらいました。
朗読の直後に今度は演奏をしてもらい、音やリズム、表情がつく事で歌詞がどのように広がっていくのか?を体験。子どもも大人も、中村さんの表情豊かな美声に聞き惚れ、ある子どもは「歌がはじまる前と始まった直後の中村さんの表情が、まるで劇のワンシーンをみているかの如くに変身してびっくりした!」と感想を述べてくれました。

表情ゆたかな歌声にみんなうっとり

大人の本気は子どもにも電波するという信念の元、奏者のお二人も通常コンサートで着るドレスを纏い、手抜きなしの本気な演奏を披露。自分の目の前で、コンサートさながらの臨場感を味わえるのは、とても特別な体験だと思います。

◆その2:音で感じた事を絵にあらわしてみる

今度は、音楽の一部を聞いてもらい、そこから感じた事を
絵や線、形で表現してみることにチャレンジしてもらいました。

奏者によるデモンストレーション

どんなふうに描くのか?を分かりやすくするために
最初は例題として、講師があらかじめ演奏する曲を聞いて感じた事を描いたものを披露。その時、曲のどういう部分がどう感じたのか?
その感じた事をどうしてこう描いたのか?
説明しながら、曲の一部から感じた事でも、全体から感じた事でも良い
という事も付け加えて、デモンストレーションを行う。

デモンストレーションで、描くコツを伝えたら、星野はなさんに曲を弾いてもらい、その後曲から感じたことや、浮かんだストーリーなどを参加者に描いてもらいました。画材は、色鉛筆やクレヨン、マジックなど、自分の好きな画材から選び、自由に描きます。

直ぐに筆が進む子もいれば、しばらくじっと考え込む子も。描くことに少し躊躇がある子には、ファシリテーターが対話で曲から感じた印象を引き出し、絵ではなくて言葉によるイメージを膨らませてもらいました。

グループでシェアしている様子

◆その3:みんなでシェアタイム

曲から感じた絵を描いてくれた子には、どういった音の部分でそう感じたのか?あるいは想像したのか?をみんなに見せながらシェアしてもらいました。
曲の中でも、印象に残るリズムや音は人それぞれで、
「あ、あのポロポロっていう音を、こんなふうに感じてたのか!」
「確かに、あのリズムの部分は○○に似てるよね。」
共感だったり、意外性だったり、発見だったり
それぞれが感じたことを聞き合うのは、とても面白い。
絵で表現できなかった子も、ファシリテーターとの会話で感じた事をみんなに伝えてもらい、それぞれのスタイルで感じた事を聞き合う時間となりました。

音楽を聞いて描いてもらったものの一部。同じ曲でも感じ方って色々!

「絵を描けること」がゴールではない

音楽とアートのワークショップでは、音楽を聞いて言葉にしにくい気持ちを、絵や線、形で表現するという事を一つの目標にしていますが、
音楽を聴くことや絵を描くことに、慣れていない子どもたくさん居ます。
楽曲選びも、より感情が揺れ動くようなものや、抑揚のあるものはどれか?
本当にそれで描くことが出来るのか?っといった部分も、事前に打ち合わせを重ねて選んでいますが、全ての子どもにそれがフィットするというわけでもなく
また、その日の気分によっても描きたい、描きたくないという事も起こり得ます。

もしも筆が進まなくても
うまく表現できなくても
まったく書けなかったとしても

表現しきれなかった気持ちが、何かあったとしたら、それをほんの少しでも良いからファシリとやり取りする中で表に出してみる事。
線一本でも、色の表現一つでも、言葉のやりとりでも何でも良い。
それがひとつでも出来れば、その子にとっての大きな一歩になる事だと思います。

続けていくことの意味を考える

今回はじめてユース(児童養護施設や里親家庭から巣立った子)も参加してくれていたので、終了後にこのワークショップについて意見交換。率直な意見を色々と話してもらった事で、私たちが改善するべきところや進化できる部分が見えてきました。
参加者が安心してそこに居る事ができて、心を少し開く事が出来る環境づくりってなんだろう?
そんな事を改めて考えるきっかけになりました。

社会的養護が必要な子どもたちや、そこを巣立った子どもたちは、それをひとくくりに出来ないほどに、それぞれが抱えている事や体験があります。
故に、人が信じられなかったり、うまくコミュニケーションが取れない事だってある。でも、社会の中で生き抜いていくためには、否応なしに人となにかしらのコミュニケーションが発生してくる。
自己表現をする事がなかなか出来ない子にとって、何かを介して自分を表現できる事や自分という人を他者に伝えられる事は、コミュニケーションのひとつとして、有効な手段になり得ると思っています。
時間はかかるかもしれませんが、自分をちょっとでも表現できるような安心出来る場ってどんな場なんだろう?そのために私たちが、どんなことに耳を傾けていけばいいんだろう?
そう問い続けてちょっとずつ変化しながら、これからも続けていきたいと思っています。

今回も、このワークショップの開催に力を注いでいただいた
みなさまに心より感謝します。

こどもの未来応援基金の支援を受け実施しています



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