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緑のコート。

昨日と今日が私が通っている大学の卒業式だった。たくさんのお世話になった先輩方が次の新しい毎日へと出発した日。

寮のお世話係として、私の東京1年目をサポートしてくださった、たくさんの先輩方の門出をお祝いしたかった。彼にも、会いたかった。

私の歌を褒めてくれた彼、一緒に歌ってくれた彼。タイ料理屋さんに連れて行ってもらったり、一緒にお寺にお参りしたり。「春になると、桜が綺麗なんだよ」と教えてくれた場所だったね、もう咲いているのかな。

色々な先輩のインスタを見ていると、君の写真も見つけた。ずっとそうだったけど、最後もオシャレだったな。深緑の薄手のコートに身を包んで。

私が一番好きな本を君から返してもらってから、君とは会ってない。毎日続いていたDMも、私からやめちゃった。あの時は、構ってもらえるのが嬉しくて、突き放してくれない彼の優しさに甘えていたなぁと思う。

正直、あの夏はちゃんと君に恋していた。すごく好きだった。でもね、どこかわかっていたんだよなぁ。好きって言っても、付き合ってって言っても、きっとやんわり断られるんだろうなぁってこと。バッサリ切ってくれたらいいのに、そんなこと決して君はしなかったよね。

最後に、会う理由が欲しかった。自分で作らなくても、会える理由が。でも、私は会場には行けなくて。あぁ、もう彼に会うことはないのかもな、って今は思う。

ちょっと高い声とか、ちょっと低い背丈とか、優しい笑顔とか、わんちゃんみたいな人懐っこさとか、全部に振り回されてた。だって、一緒に歌ったあの歌は、今でも君を思い出さずには歌えないよ。

卒業おめでとう。私の声を、歌を好きと言ってくれたように、私は君の書く文章が好きでした。物語調の語り口がとってもユニークで素敵でした。君が私の書く文章も面白いと言ってくれたのも、今も私が言葉を紡ぎ続けている理由かもしれません。

好きな歌、好きな本。君はいろんなものを私に教えるだけ教えて行ってしまったね。今まで知るはずもなかったアーティストも、君のおかげで少し詳しくなったよ。君が歌っていたあの歌を、気づけば口ずさんでいました。

あれ、もう思い残すことはないはずなのにな。自分で君とは会わないって決めたはずなのにな。私にたくさんの笑顔とときめきをくれた人だから、そんな簡単になかったことにはできないな。

あの日二人で話したみたいに、「夢を見続けることのできる」大人に、君がなりますように。少年の心を君が持ち続けてくれますように。

もう一度言うよ、卒業おめでとう。

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