ウラギリモノ

限りなく嘘に近い、本当の話。

その日はよく晴れた日だった。前日の雨が嘘だったかのように、真っ青な空が僕たちを包み込んでいた。
大きく息を吸っては吐いて、何度も繰り返す呼吸音に耳を傾けては僕の心臓はバクバク言っていた。
裏切るやつはいるのだろうか。周りの奴らの様子を伺っても何も見えない。声を出すことも許されないこの状況で僕の限界はもう、すぐそこまでやってきている。
親友のO田が一歩前に出た。
お前が…。まさか信じていたのに裏切るのか?
呼吸は更に激しくなる。心臓は壊れるくらいに脈を打ち、額にも汗がにじみ出る。

ゴメン、ムリ。

呼吸音が聞こえなくなった。

信じあっていたはずなのに。
僕は手を伸ばす。繋がれないその手は遠くへと消え去った。

O田は相変わらずだった。淡々と、ただまっすぐ前を見ている。

親友が1人いなくなってしまったのに…O田の目を見て僕は決心した。裏切り者め。


ラスト一周。
このトラックで僕は裏切り者を裏切るのだった。

「1番、おめでとう‼︎」
優勝の陸上部のエースにみんなで拍手を送る。


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