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星想い
星空が川を作ったところを見たことがない。
彦星と織姫は今年は会えるのだろうか。
狭いベランダから二人でみつめる。
片手には缶チューハイを持って、雲が覆う夜空をもう30分は眺めている。
「蚊に刺された〜」
O型の彼女は刺されやすいようだ。
「中に入る?」
「う〜ん」
曖昧な返事の時はその意と反対の時。
まだここにいたいんだな。
“天の川 場所”
指先で簡単に調べられる時代というのは楽であり、簡単すぎてしまうものだ。
彼女が夜空を見上げている隙に調べたその場所はここからでは遠すぎた。
「明日、行ってみようか?」
「ん?どこに?」
「決まってるだろ。…天の川を見に。」
「嘘でしょ?」
「ほら」
見せるスマホの画面。
「…天の川?…プラネタリウムじゃない‼︎」
ククク。
「行こうよ♪満天の星空が見えるよ。それに蚊にも刺されない。
いいと思わない?」
「う〜ん。」
あれ?違うようだ。
「プラネタリウムも素敵だけど・・・多分、この雲の上で彦星と織姫が会うことができているじゃない?その瞬間を今こうして一緒に想像できているだけで、結構満足、かな〜。なんてね♪」
彼女は笑いながら部屋へと入っていった。
僕はスマホをポケットにしまい、夜空をもう一度眺めた。
雲のすき間から小さな星が二つ、寄り添うように微笑んでいるような気がした。