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ツユノート

生暖かい風が、私達の間を吹き抜ける。
暑いなぁ、そう言ってあなたは繋いだ手を離してコンビニで買ったアイスやら飲み物やらが入った袋を左手から右手に持ち変える。
反対側に回ってもう一度手を繋ぎに行けたらいいのだけど…らしくないことも出来ず、離された左手は温もりが消え去り、私にただ引っ張られ付いてきている。

前からウォーキングをしているご夫婦がやってきた。
首にタオルを巻いて腕をよく振って歩いている。仲良く話をしている様子はないけれど何か見えない糸で繋がれていることがすぐにわかる。

(あんな夫婦になりたいなぁ。)

チラッと彼を見てみると、まっすぐ前を向いて何を考えているのかわからない。すぐ隣にいるのに、全ては理解することができないんだな、という当たり前なことにもなんだか不安になってしまう。

ポツポツ…

「あ、雨」

「急ごうか」

袋を持ち直して、私の左手を掴む。
そのまま引っ張られるように足早に進んでいく。

雨で濡れた身体なのに、握られた手から胸から熱さが伝わる。

やっぱり何を考えているのかわからない。
マイペースで少し強引なあなたが好き。


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