カミソリ
すべて私のためだった。
私はそのつもりで毛を剃った。剃るときの感覚。痛くはない。肌が削れていく感覚。すべて私のためだった。脇も腕も脚も剃った。できるだけ綺麗な状態にしたかった。でも私はただ毛を剃るだけでは綺麗にはなれなくて。
それは無くなった。剃っても何もならなかった。ただ落ちた黒い毛が、排水溝に溜まっていく。
赤い血だって流せるその剃刀は、優しく私を綺麗にしていく。その刃をなめらかに滑らせる。無駄なものがひとつ消える。
その刃は私を傷つけることもできる。
傷つけるのは心だけで終わらせて。
もう身体に痛みを伴う色をつけたくない。
私もカミソリみたいに。
誰も傷つけることなく、無駄なものだけ優しく削ぎ落とせたら。
選ばれる私になるかな。
グァ グァー グ