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旅情
非日常な空間に足を運ぶときにしか得られない心の機微を旅情なんて言葉でまとめて分かったように決めつけるなよ。
そうは思うものの、夜行バスは旅情が渦巻いている場所だと思う。
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もはや、東京は籍がある埼玉よりも生活圏だから、新宿に来たところで目新しいものはなにもないはずなのに、旅行者として降り立った新宿は、自分がよそ者で街から切り離されたように感じて、いつもと違う景色に見えます。
時間はかかるけれど安価に長距離移動ができる夜行バスが集合するバスタ新宿は、時間をかけてでも安く長距離移動をしたい人たち、言い換えると「旅」に対する執念が強い人たちで溢れかえっていました。
同じ日同じ時間帯同じ場所にいるだけの、名前も知らない人たち全員に人生があって、その人たちが散り散りになって自分の人生を進めている、その中に自分もいるのだから、なんだかちっぽけだなあと感じますね。
そんなことを考えていると気が狂いそうになるので、余計なことを考えないようにヘッドホンで自分を外界から遮断します。
8時間ほど移動すると、目的地に到着しました。
新宿はスーツケースを引いているだけで自分がまるで異物のように感じて景色が変わって見えるのに、5か月ぶりの地元はいつもと変わらないように見えました。
離れてから9年経つのに、帰ってきた、という感覚があるのは不思議な感じですね。
こういう違和感もこれまた旅情という言葉で説明できるのだけれど、でも私はこういう気持ちをわざわざ文章で残していくようにしようと思いました。
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