母の随筆 『ラジオ』
<ラジオ>
子どもの頃から機械が好きだった兄は、農家の長男であるためその道に進めず、それでも暇さえあればラジオの組み立てに没頭していました。いつも小さいコイルを丹念に巻いて、友達も何人か習いに来ていました。甲種合格で入営した兄の部屋に大きな箱が置いてありました。
兄が戦地に渡ってから、私は誰にも内緒でそっと開けてみました。兄が自分で組み立てたかなり大きなラジオが入っていて『愛機よ待て』と書いた白い便箋が上に置いてありました。
私は、見てはいけないものを見た思いでそっと蓋をしました。
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多くの真面目な若者たちがこういった心情に支配されていたようですね。
とにかくやらないので、何でもいいから雑多に積んで行こうじゃないかと決めました。天赦日に。