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決戦は土曜日〜サレ夫の話⑫〜

さて、武器も入手しまずは妻との決戦の日をいつにしようかというところ。

”制裁”といったら大袈裟か。
いや、そのくらいの覚悟を持って迎えないとどこかで手心を加えてしまいそうだ。
私は被害者なのだ。徹底的に打ちのめす覚悟で挑まねばなるまい。

録音機器は必須アイテム。
本来録音は許可を取った方が良いのだが、妻のことだ、それすらもわかるまい。ここは隠し録りしようではないか。その方が事実を吐くだろう。


性格が悪いのは私も一緒で、妻のことばかり悪く言っては盛大なブーメランである。

”日曜日に会うなら決戦は土曜日にしよう”

性格の悪さがにじみ出ている。

しかし何度も言うが私は被害者、そのくらいの嫌がらせはさせてもらおう。



土曜日を迎えた。

おはよう、妻よ。

朝からそわそわする私。しかし悟られないように努めて普段通りに振る舞う。

仕事中はそのことばかり考えていた。

何か計画を持って話をする時はシミュレーションを行った回数だけ言いたいことが言える割合が上がる、というのが私の持論。

つまり本番で失敗をしないためにはやはり練習は大事なのだ。

前日までもしっかりと論理を積み重ねてきた。
予想される反論もイメージしている。

反論を予想する時は色眼鏡で見ないことが大切で、自分は悪くない、という思いを持っていると自分を客観視できなくなる。

客観的に見て自分は夫としてどうだったか、父としてどうだったか思いを馳せる。

どうせ自分の頭の中だ、人に見られるものじゃないし変なプライドは捨てよう。

私の今までの父としての振る舞いは、控えめに言ってよくやっていたと思う。

朝は仕事前に娘に朝食を食べさせ歯磨きをし、公園に連れていく。夜はお風呂、歯磨き、寝かしつけまでひとりでやる。昼間は仕事なのでどうしようもできないが、娘が熱を出せば仕事を調整して病院に連れていくくらいはやっていた。

では夫としてはどうだろうか?

こちらは些か物足りなかったかもしれない。

娘にかまうあまり、話を充分に聞けてなかったりしたと思う。

最大の欠落していた点は、夜の営みだろう。

私は性欲は人並み以下で、あまり自信もない。

妻は物足りなさを感じていたと思う。しかしそれが不倫の原因と言われても納得はできない。

私なりに優しくしたり愛の言葉を投げかけたり、努力はしていたのだから。補えるものではないが仕方ない。

以上のことから予想される反論は、

・相手にされていないみたいで寂しかった

・娘も大事だけど私も大事にして欲しかった

とまあこんなところだと思う。

高揚感と不安感が入り交じり何とも形容し難い感情を抱いて帰路に就く。

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