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初映画初トイザらス

今日は日曜日。7歳長女の初映画の日。
妻と二人で「ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」を観に行くという。
映画代はもちろん僕のクレジットカードだ。
ポップコーンとチュリトス、飲み物も当然のように僕の財布から出ていった。

こういう表現をすると誤解する方もいるかもしれないので、妻の名誉のために言っておく。
決して鬼嫁とか、かかあ天下というわけではない。
只々、おねだり上手なだけだ。
妻のおねだりについては長くなるので別の記事にまとめたいと思う。

外は生憎の雨。
僕と次女は、まだ晴れていれば動物園などに行こうかとも考えていたが雨なら仕方がない。
映画館まで二人を送っていき、同じ館内で次女と待つことにした。
妻と長女の張り切り具合が半端なく上映の1時間前に着いてしまったため、次女との時間が大幅に増えた。

次女と二人で出かけるのは久しぶりのため、僕も結構楽しみにしていたからまあいいだろう。
映画館のあるショッピングモールを次女と散策することにした。

次女は2歳半で、ショッピングを楽しむというより、外に出て歩くことの喜びと煌びやかな広いモール内を楽しんでいた。

「楽しい楽しい~」
片言で話しながら走る次女を僕はデレデレと追いかけていた。

店を次々と移動する次女、本人は楽しんでいるが大人からしたらただ忙しい。
しかし次女の愛らしさで何とかカバーできていた。

あまりにも移動が激しいので、最終的に行こうと思っていたトイザらスに早々に入店することにした。

次女は、現在のように自我が芽生えてから初トイザらスとなる。

当トイザらスはリニューアルオープンしたばかりで、きっと出ているおもちゃも多いだろうという予想だ。

案の定、至る所に遊べるおもちゃが出ていた。

普段は電池の切れた尻尾を振りながらすり寄ってくる犬や猫も、今日ばかりは上機嫌である。
きっとあと何日かすれば、子どもたちの猛攻撃によって足は骨折し、バイタリティも不足して老犬さながらの動きになるだろう。
今のうちに遊んどけと言わんばかりに、僕と次女は犬や猫をこき使っていた。

次女はいつも自宅では、ジャイアンよろしく姉の使っている物を無言で奪い、声高らかに笑っているような奴だ。

だからトイザらスでもそのジャイアン性を発揮しないかと、内心ヒヤヒヤしていた。

次女はまだ誰も来ないことをいいことに、全ての犬猫を自分の前に集めてリサイタルを開催していた。

しかしそのうち、他の子どもたちもぽつりぽつりとやって来た。

きっと次女は、犬猫に誰かが触ると嫌がって独り占めするんだろうな…そう思って様子を見ていた。

しかしその予想は良い意味で裏切られた。

なんと他の子たちと譲り合って遊んでいたのだ。

普段、砂場でも姉に砂をかけたりシャベルを一切貸さない女なのに。

そういえば、自宅で甘えることができている子は外では社会性に富んでいるケースが多々あると聞いたことがある。

まさにそれだと思った。

自宅でジャイアンしているのは、僕ら夫婦や姉に甘えまくっているということだったのか。

普段、特に妻や姉が頑張っているということなんだな…映画が終わったらそれを伝えて労おうと誓った。
映画に係るお金は、僕が出して然るべきだとも思えた。

さてさて店内を散策しよう。
散策しているうちに、次女の好きなものが今まで以上にわかってきた。

やはり女の子で、キラキラしたものが大好き。
おかげでクルクル回るヘアゴムがかかっているやつのところで、30分以上過ごすハメになった。
子どものヘアゴムって、キラキラしてるね…

次女は嬉しそうに、中にキラキラフレークが入っているヘアゴムを何個も手に取って眺めていた。
僕はその時、次女の握力や手の大きさをきちんと考えていなかった。
認識が甘かったと言わざるを得ない。

キラキラフレークの入ったヘアゴムはやがて次女の手から滑り落ち、フロアの床に落ちて弾け飛んだ。

「ああ、きれいだな…床が一面キラキラしているじゃあないか…」
僕はしばらく呆然とその床を眺めていた。

「あー!落ちちゃった!」
次女の声で我に返った。
そしてすぐに値札を確認した。

「ああ良かった。200円か。」

価格を確認して、少しホッとしながら店員さんを呼ぼうと思った。

しかし当の次女は諦めていなかった。

なんと無数に散らばったキラキラフレークをひとつひとつ拾おうとしているではないか。
いやあんた、気持ちは分かるがここは大人に任せなさいよ。
だってそんなことしていたら日が暮れてしまうだろう?

しかし次女は僕の申し出を頑として拒んだ。

僕は店員さんを呼ぶでもなく、次女を手伝うでもなく、ただ次女に反発して駄々をこねていた。

しかし次女は僕の言葉など全く聞き入れず、黙々と作業を続けていた。

そんな次女を見ていて気付かされた。

「子どもが諦めていないのに、親が諦めちゃあいかんよな!」

僕は次女にとことん付き合うと決めた。

キラキラフレークの数、推定108個。
煩悩の数と同じだ。
いいだろう、やってやるぜ。

次女とキラキラフレークを拾ってケースに戻す作業は、案外楽しかった。
そのフレークは、次女の湿った指先にはくっつくが、僕の乾燥した指先にはなかなかくっついってくれない。
いかに指先にめり込ませてケースに運ぶかがポイントだ。

そうして30分後、ようやく全てのフレークをケースに戻すことができた。

次女と抱き合って喜び、健闘を称え合った。
こんな場所でこんな達成感を味わえるとは夢にも思わなかったよ、ありがとう。
そうしてケースの蓋を閉めようとした時、僕は愕然とした。

ケース、壊れてますやん。
カチッと音、しませんやん。

努力は報われないこともある。
次女よ、ひとつ勉強になったな。
そう思いながら、僕はあからさまにしかめっ面をしていた。

当の次女はというと、そんな僕を見てニコニコ笑っていた。
ふーん、なかなかメンタル強えじゃん。

そんな事件もありながら時は過ぎ、映画が終わったと連絡があった。

もう歩くことすら億劫になっていた僕は、トイザらスに妻と長女を召喚した。

楽しかったはずの映画、ご機嫌で来るはずの妻と長女。

しかし妻と長女は映画を観た疲れと空腹でイライラしていた。

なぜなのだ。君たちは好きな映画を観て楽しかったはずじゃあないのか?

そんな妻と長女を見て僕は、普段の彼女たちの頑張りを労うと誓ったことを思い出すことすらできなかった。

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