安心、楽しく
障害福祉に携わって20年。
僕は今、相談支援専門員として働いている。
高齢者でいうところのケアマネジャーだ。
担当する対象者(以下、利用者)の年齢は様々で、だいたい4歳頃〜64歳までと幅広い。
特に学齢期の利用者は成長過程にあるため、変化に富んでいる。
そんな学齢期の利用者の、学校を下校した後の預り先に放課後等デイサービスというのがある。
放課後デイを知らない人は、ひとまず学童の障害児版みたいな感じと思っておこう。
学童との違いは、支援員が関わって個別の支援を受けられることだ。
そんな放課後デイに対して利用者の親御さんが求めるのは、「安心して楽しく過ごせる」ということだ。
僕も、長女が幼稚園に通っていた頃は、前記の親御さん同様「楽しく通えればそれでいい」と思っていた。
ここでちょっと深く考えてみる。
「楽しい」って、なに?
おそらく僕の「楽しい」と、あなたの「楽しい」は違うだろう。
そう、「楽しい」感覚はそれぞれで違う。
それは子どもだって一緒だ。
利用者が何を「楽しい」と思うかを、サポートする側はきちんと理解していた方がいい。
社会生活に必要なことを利用者に分かってもらう時など、「楽しい」や「興味がある」を入口に伝えることが大切だからだ。
"たぶんこんな感じにすれば子どもは楽しいだろう"
なんて思っていたら大間違いである。
利用者をひとりの人格者として扱うということ。「そんなの当たり前じゃん。」
と思うだろうが、つい忘れがちなことの一つなのだ。
仮に忘れていた場合、声かけなどの端々に表れるものだ。
親御さんからの信頼を失うことはもちろん、僕も相談支援専門員として事業所の良し悪しの判断材料になる。
「安心」はどうだろう?
障害者支援に携わるためには、一応の資格を持っていることが望ましい。
介護職員初任者研修ならいくらかのお金を払えば短期間で取得できる。
しかし、短期間の研修を受けた程度の支援者に対して、果たして親御さんは心から「安心」できるだろうか?
そもそも、どうしたら「安心」なのか?
利用者の命を預かるのに、数ヶ月の研修のみで安心できるわけがない。
個人的な感覚だが、その責任を感じて仕事にあたるには少なくとも3年は勉強する必要があるだろう。
また、支援者には障害についての理解といった知識や、介助の技術が求められる。
例えば自閉症の利用者に対して、その特性に合わせて環境を整えたり、専用のカードを使ったり、声のかけ方ひとつとってもテクニックが必要なのだ。
しかしこれらは介護職員初任者研修では教わらない。
したがって、研修を経て資格取得後に現場を経験しながら自身でも勉強することが大切になる。
親御さんに安心してもらうために、信頼を獲得するために、福祉事業所は努力しなければならない。
その努力の最も大きなウエイトを占めるのがスタッフへの教育だと思う。
この業界の特徴として、スタッフの年齢が幅広いというのがある。
50歳を超えた新人さんなんかもザラにいて、二回り下のスタッフが教育なんてパターンも珍しくない。その場合当然、充分な教育ができる可能性は高くない。
その原因を追求していくと企業努力が足らないとかそんな話になるので、それはまた別の機会にしよう。
「安心して楽しく過ごせる」
僕は相談支援の計画書では、利用者や親御さんのありのままの声を大事にしている。
計画を立てた後に必ず実施する担当者会議で、その声を紐解きながら事業所間での認識の相違が無いように詰めていく。
そこで明らかになるのが、「安心して楽しく」をサラッと流す人たちがいるということ。
これは大問題だ。
どうか「安心して楽しく」をニーズだと思わないで欲しい。
そこを突き詰めた先に真のニーズがあるのだから。
つまり「安心」「楽しく」とは、その人にとってどのような状態なのかをまずは全力で理解して欲しいって話。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?