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報告書〜サレ夫の話⑪〜

興信所から連絡があった。

「報告書ができあがりました。お会いできますか?」

3度の調査を経た後だった。

一刻も早く調査結果を見たい。
すぐにアポをとった。

会って間もなく興信所の方から言われた。
「落ち着いて聞いてください。結論から言いますと、黒です。」

ドラマでしか聞かないセリフだった。

まさか自分に向けて発せられる日が来ようとは夢にも思わなかった。

「はい、分かっていました。続けてください。」

報告書には、詳しい記述が写真付きで綴られていた。

これまたドラマやドキュメンタリー番組でしか見ないような写真である。

間男の家に入っていく様子、出てくる様子がしっかりと撮影されていた。

はっきり妻だとわかる。
間男もはっきり写っていた。やはりHである。
どうやって撮ったのこれ?(笑)
さすがプロ、度肝を抜く価格に見合った仕事だ。

しかしこれで証拠は入手した。

あとはこの武器を手にどう戦うか戦略を練るだけだ。

弁護士さんに頼む方法もあるだろうが、妻とH相手にそこまでの戦力はオーバーキルというもの。

このクエストにはソロで挑もうと思う。


実は写真の他に動画DVDも頂いた。
正直観るのを躊躇った。
証拠としては写真付きの報告書で充分だったし、感情が大きく揺れるのは精神的な疲労が激しいことは分かっていた。

今まで精神が崩壊しないように"妻を好きと思わない"と自分に言い聞かせて保っていたのだ。無意識の自己防衛策とでも言おうか。

これを観ると自分がどうなってしまうのか予想できなかった。
それほどに妻を愛しているのだ。
或いはDVDを受け取って、初めて妻への想いの大きさに気が付いたのかもしれない。

帰り際の車の中でそんなことを考えながら、いつの間にか自分の意思とは裏腹にDVDを再生していた…


最後に声を出して泣いたのはいつだっただろうか。
子供の頃か。いや高校生くらいか。
ホント、こんなもんは今日で最後にしたい。
著しく精神が削られる。

嗚咽を伴う激しい感情の波は次第に、奴らに対する憎悪へと変わっていった。
血が出るほど唇を噛み締めながら膝を殴打し続けた。
その様子はまるで子供だ。

しばらくして落ち着いた。

"愛と憎しみは表裏一体"

身を持って実感した。
なるほど、こういうことか。

炎が鎮火しないうちに決戦の日を決めよう。

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