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カリフォルニアの空が呼ぶ【#おうち旅行】

突き抜けるような青空というのは、ああいうのを言うんだろうな、と思い出す空がある。

20歳になる直前に降り立った、夏の終わりのカリフォルニア。



直線で切り分けられたみたいな幅の広い道路を、ホストファミリーに借りた赤い自転車に跨って駆け抜ける。

ファーストフード店の不愛想な店員を目の当たりにしたときや、スーパーに並ぶあまりにカラフルなマフィンに驚いたときなんかよりも、自転車に乗って真っ青な空を浴びるようにして走るとき、ああ、ここはアメリカだ、そう思った。

ホームステイすることになった家と語学学校は近くもなく遠くもなく、視野いっぱいに広がる空の下を、毎日20~30分かけて自転車で通学した。

アメリカではイヤホンをして自転車に乗っていると違反になるということを耳にしたのは到着してから恐らく1~2週間は経ったあとで、知った時には背中がヒヤリとしたものだ。

思い出はたくさんあるはずなのに、思い返せば不思議とこの朝の通学時間が一番好きだったような気がする。

けれど、イメージ通りのカラッとしたカリフォルニアの気候を満喫できたのは束の間で、ほどなくしてそこは雨季に入った。
毎日霧がすごかった。カリフォルニアってもっと明るいイメージだったのに、と裏切られたような気持ちにもなった。

帰国は雨季が明ける前だったから、結局「カリフォルニアといえば」というような、太陽がサンサンと降り注ぐ毎日は数週間だったことになる。
クリスマスの頃はとっても寒くて、友達の家から帰宅する道中、雨に降られた夜はブルブル震えるようだった。



暑さにうんざりするのにも飽きてしまった夏の終わりを過ぎる頃。

洗濯物を干しに出たベランダで感じる、ぱりっとした陽射しとひんやりとした秋のにおいは、もう15年も経つというのに、今でも私をあの青空の下へ連れてゆく。

東京の小さなベランダから、カリフォルニアのあの、だだっ広い道路の上に。


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こちらの企画に参加しました!

旅行じゃないし写真も一枚もないし、なんだか申し訳ないのですが…

Micaさんのサンフランシスコnoteと、カエデさんのベーグルnoteに触発されて書きました。


なつかしいあの空の下に、またいつか行ける日を楽しみに。




#おうち旅行 #旅 #留学 #カリフォルニア #エッセイ 





子供の就寝後にリビングで書くことの多い私ですが、本当はカフェなんかに籠って美味しいコーヒーを飲みながら執筆したいのです。いただいたサポートは、そんなときのカフェ代にさせていただきます。粛々と書く…!