ゲー選かけ流しvol.4 『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』
ゲームの選評を気の向くままにチビチビとかけ流す、ぬるま湯スペース。
今回は『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』(以降、マリオワンダー)。発売から3か月を過ぎ、今も着々と売れ続けている本作の魅力をまとめていきたい。
<筆者のマリオシリーズプレイ歴>
・2Dアクションタイプのマリオは全作クリア済み
・3Dアクションタイプのマリオはほぼクリア済み
・その他ジャンルのマリオは程々にプレイ
・一番やり込んだマリオシリーズは『スーパーマリオブラザーズ3』
11年の時を経て舞い戻った2Dマリオ
『スーパーマリオメーカー』(以降、マリオメーカー)のようなツクール系を除くと、2Dマリオの新作としては実に11年ぶりとなったマリオワンダー。
「メチャクチャ面白そう!」
「まあ任天堂だから面白いでしょ?」
「とは言え今までの作品とあまり変わらないんじゃない?」
など、人それぞれの前評判はあったかと思う。
筆者は不安半分・期待半分で遊び始めたけれど、2Dマリオの安心感ある手触りと、ワンダーフラワーを始めとした新鮮味が同居する、ちょうど良い塩梅の新作に仕上がっていると感じた。
アワマリオやゾウマリオといった新しい変身は、操作感の楽しさに加えて攻撃も強力で、敵キャラをガンガン蹴散らしていける頼もしさがある。
また、それぞれ性能が異なる色々なキャラを組み合わせると、プレイフィールも変わる。
ワリオワンダーは、マリオメーカーシリーズで世界中から収集されたステージデータをモニタリングした上で作られたのかな?と思しき演出がいくつか見受けられた。
マリオメーカーでムーブメントになったいわゆる”全自動マリオ”のようなステージは、エンタメ性に富む反面、ゲーム性が消滅していた。
そういったトレンドを踏まえてか、マリオワンダーではノリノリの曲とリズムに乗せて、比較的簡単なアクションをするようなエリアを設けていたりする。この辺りが、エンタメ性とアクション性の両立を図ろうとしているように見受けられた。
一方で、ゲーム性とは殆ど関係ない新要素として「おしゃべりフラワー」がある。こちらも特徴的だったので、次項でもう少し掘り下げていきたい。
おしゃべりフラワーが目指した着地点
マリオワンダーのPVでも存在感を出していた「しゃべる花」こと、おしゃべりフラワー。遊ぶ前はちょっと煩わしいかも?と懸念していたものの、実際に遊ぶ中で、かなり興味をそそる作りだと感じた。
任天堂は動画配信や二次創作に関するガイドラインを定めていて、本作を配信する実況者も多いのだけど、おしゃべりフラワーのセリフは、
・実況者がしゃべらなそうな言葉
・プレイヤーがリアクションしなさそうな言葉
・ストーリーのネタバレにならなそうな言葉
といったセリフでゲームにちょっとしたアクセントを加えている。これが地味にスゴイ。
動画配信が成熟期を迎えた現代において、本作を配信しようとする実況者にとって困るのは、実況者がしゃべりそうなワードをフラワーが先回りして口にしてしまうこと。
実況しないプレイヤーにとっても、プレイ中に思わず出るリアクションをフラワーに横取りされてしまうと、遊んでいて興が冷める可能性が高い。
おしゃべりフラワーのセリフは、悪く言えば「空気」かもしれないが、プレイの阻害要因にならない相づちとしてシッカリと機能している。
プレイヤーの邪魔をしない。ヘタに笑いを取ろうとしてスベったりもしない。たまに攻略に役立つヒントっぽい事をしゃべったりもする。このサジ加減はひそかに相当な調整を要したのではないだろうか。
おしゃべりフラワーは2Dマリオの新機軸としての役割をキッチリ果たしていると思うし、今後の作品でも出てくるかも?という期待を持たずにはいられない存在であると思う。
初心者を優しくエスコートするバッジシステム
本作ならではの要素としてはバッジシステムも挙げられる。
今までの2Dマリオでは、アイテムストック機能がいわゆるパッシブスキルとして機能していた。(ミスしてもすぐパワーアップして立て直しを行う事ができる、という意味で)
バッジシステムはマリオのアクションに、バッジそれぞれが持つ特性を”ちょい足し”する事で、主にアクティブスキルを付与する形となっている。バッジによっては持ってるだけで効果を発揮するパッシブスキル相当のものもあり、難しいコースもバッジの力を借りる事でラクに攻略する事ができるようになった。
バッジを使用せずに縛りプレイを行う事もできるので、プレイヤー側でできる事が単純に増えたのが嬉しいポイント。
特定のバッジを使用して攻略する特別なコースも存在するため、主要なバッジはコースを攻略しながら使い方を学ぶ事ができる。こういうアフターケアもバッチリしている事もあり、今までの2Dマリオとは違った存在感を出す事に成功していると言える。
細かすぎて伝わらない?ビジュアルの変化点
本作リリースの前に、長年マリオのCVを担当していたチャールズ・マーティネー氏が勇退、新たなスタートを切ったマリオ。地味にマリオの造形やアニメーションも今までとやや異なるテイストになった。
ダッシュ時の足さばきがアニメ調になったり、キャラクターの表情が今までよりも変化に富んでいたりする。が、2Dマリオらしくサイドビューなので、細かなビジュアルの変化に気付くきっかけが少ないように感じた。
特に遊んでいる最中は、ギミックや変化が著しいコースに目を奪われる事が多く、細かなキャラクターの造形にまで気を配る余裕がない場合が多い。表現力は確かに上がっているのだけれど、それを堪能する機会が少ないのはもったいないと思った。
もしマリオ達の一挙一動をしっかり見たければ、ギャラリーに徹して見物するのも良いかもしれない。そういう意味ではプレイ実況を見る意義がある作品と言えなくもない、かも。
おわりに
久しぶりの2Dマリオは安心と安定のマリオだった。マンネリズムを打開するための仕掛けもあってか、ゲームのボリューム以上に満足感を得られる作品に仕上がっていた。
一方で、「2Dマリオのゲーム性としての伸びしろはどこまであるのだろう?」という思いもある。本作は2Dマリオの系譜にしっかりと名を刻んだ作品だと思うけれど、本作の遺伝子を組んだ新作は生まれるのか?新作でも本作と同じような新鮮な体験を得られるのか?という思いもある。(もっとも、まだまだ売れ続けている本作を前に、今から気の早い話ではあるのだが・・・)
恐らくは筆者の老婆心に過ぎないし、マリオというIPをここまで育て上げた任天堂なら、次のマリオは2Dにせよ3Dにせよ、プレイヤーを新たな楽しい冒険の舞台へといざなってくれるに違いない。
本作を遊ぶ前に抱いていた不安半分・期待半分を今一度心の奥底にしまいながら、「次」のマリオを待ちたいと思う。
本作の感想は以上。
次回もよろしくお願いします。