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刀に愛を感じて、人を感じて【京極正宗】

気がつけば、もう年末ですね。
私は夏頃から仕事がどんどんいそがしくなり、なかなかnoteを更新できず……。
だいぶ時間が経ってしまいましたが、石川県立美術館の『皇室と石川 麗しき美の煌めき』(~11/26)のお話をしたいと思います!

今回のお目当ては『京極正宗』。
実は私、今春に石田正宗や日向正宗を見てから正宗の刀が大好きになってしまいまして……! 京極正宗の展示が発表されてから、ずっと楽しみにしていたんです。というわけで、今回もスケジュールに無理矢理ねじ込み、金沢へ向かいました!


芸術のまち 金沢

駅前のもてなしドーム


金沢駅を降りると大きなドーム状の空間があり、鳥居のような形状をした巨大な門が……!
このドームは「もてなしドーム」と言われていて、「駅を降りた人に傘を差し出すおもてなしの心」がコンセプトになっているそうです。門は「鼓門(つづみもん)」という名で、能楽の鼓がモチーフだそう! なるほど、そう言われてみるとたしかにそう見えます。というか、それにしか見えない。笑
私は今まで北陸にあまり縁がなく、金沢もあまりイメージがなかったんですが、駅を降りてすぐのこの景色にすごくテンションが上がりました。今まで行った土地のなかで一番好きな駅かもしれません。 本当に素敵な空間だった!


石川県立美術館へは徒歩で行くと、約40分ほどかかります。普段旅先では『なるべくその土地を歩く』とモットーにしている私ですが、40分はさすがにためらう……。ということで、バスで「広坂・21世紀美術館前」まで行き、そこから歩いて行きました。このルートだと約25分~くらいで着きます。
写真撮らなかったんですけど、金沢は本当に街並みが素敵です。写真撮っておけばよかったな~……とちょっと後悔。(^^;


『皇室と石川 麗しき美の煌めき』

こちらの展示は、旧加賀藩・前田家の皇室への献上品や、皇室に伝わった名宝、そして石川にゆかりのある作品などが展示されています。

実は、金沢は皇室と縁がある場所。その理由は江戸時代まで遡ります。
加賀藩二代藩主の前田利常は、娘の富姫を皇室へ嫁がせたことにより後水尾天皇と義兄弟という関係に。前田家と皇室の繋がりができたことで、金沢という地に朝廷の華やかな文化が入ってくるようになりました。
また、加賀藩は徳川に次ぐ財力を持っており、常に謀反を警戒されていた藩でもありました。そのため、敢えて芸術にお金を使い、疑いをかけられないようにしていたそう。結果的に、それが金沢を「芸術のまち」にしたのですからすごいですよね。

では早速刀剣の話に移りましょう。

名物 太郎作正宗

正宗によって作られた鎌倉の刀。姿は堂々としていてとってもカッコいいです!
そして、沸がすごく綺麗。地沸が細かくついた肌がきらきらと光を反射していて、本当に綺麗に輝きます。私の鑑賞ノートには「沸 サイコー」と書かれていました(笑) 

沸を簡単に説明すると、「刀の焼き入れの際に生じる粒子」のことです。刃文の縁をよく見てみると、まっすぐの線になっているわけではなく、細かい粒子が集まっているのが分かります。その粒子の大きさが大きいと「沸」、小さいと「匂い」と呼び、刀剣観賞をするうえでのひとつのポイントになっているのです。ちなみに、これはどちらが良い、悪いでは無く、あくまでも個人の好みの話になります。

私が正宗の刀に魅せられてしまう一番の理由は、やはりこの沸がついた地鉄や刃文。正宗の沸は上品で、刀の中にある情景に静かな煌びやかさをもたらしてくれる存在だと個人的には思っています。

太郎作正宗の名前の由来は、持ち主だった水野正重の通称が『太郎作』だったことから。水野正重は徳川家康の家臣だった人物です。
姉川の戦い(織田・徳川軍vs 浅井・朝倉軍)で徳川側として参戦した水野正重は、この刀を帯刀したと言われています。そしてこの刀で相手の兜を叩き切ったことから、太郎作の名が冠されました。

太郎作正宗の来歴はこんな感じ↓
 水野太朗作正重
    →徳川秀忠(献上)
    →徳川将軍家伝来
    → 前田家(徳川家光の養女大姫が前田家に輿入れする際、信濃藤四郎とともに贈られる)
    →以降前田家伝来

ちなみに、大姫の輿入れの際には前田家からも刀剣が三口献上されています。そのうちの一つが五月雨郷です。ということは、大姫の輿入れによって太郎作正宗と五月雨郷が入れ違いになっているんですね。 (私の一番好きな刀が五月雨郷なので、これを言わずにはいられなかったのです…笑。)


刀が人から人の手へ渡るとき、その理由は様々でとても興味深いです。輿入れの際の献上品になっていることからも、当時刀剣が武士にとってがどんな存在で、どれほどの価値があったのかを窺い知ることができます。

京極正宗

さぁ、本日のお目当て『京極正宗』。
こちらの短刀は正宗の在銘作です。 もう一度言います、正宗の「在銘作」です……!

刀剣好きの人なら当然知っているはず、正宗の在銘作は本当に本当に少ないのです。そのため、歴史的資料としての価値が非常に高いものでもあります。
これはもう、展示されるとなれば古今東西赴くほかありません!金沢まで新幹線に乗ってきた一番の理由はこれです!これなんです!!


……そうして興奮してやってきた私ですが、京極正宗の第一印象は「ちいさい……!」でした。想像していたよりもずっと小さい姿。でも、その中にある地鉄の模様が力強く、存在感を強く感じさせてくれます。

(本物は撮影不可のため、展示室外にあったパネルの写真です↓ こちらでもしっかり肌の模様がわかりますね!)

こちらはきらきらの沸!という感じはあまり強くなく、もう少し厳かな雰囲気を醸し出していました。
鋒の方の地鉄は、肌が詰んでいるのか模様はあまり見えませんでした。その分ハバキ側の大きな渦模様(杢目肌?)が目立つためメリハリがあるような印象です。

そして、なんといっても正宗の銘。いつも目にする正宗は無銘だったので、(無銘だからといって価値が無いわけでは断じてありませんが)銘があることで正宗という人物が本当にこの世に存在していたのだと分からせられる、奇跡のような感動がありました。
やはり、銘があるとより「人」の存在を感じられて良いですね。遥か遠い昔にこの字を切った(銘は"切る"と表現します)人物がいたと思うと、本当に不思議な、胸の奥がぎゅうっとなるような……そんな気持ちになります。
正宗の銘、しっかりこの目に焼き付けました。

名前になっている「京極」は、その名の通り京極家に伝来した刀剣だから。
京極家初めの持ち主は、京極高次。幼い頃人質として織田信長の元にやられてしまったり、本能寺の変で明智光秀に加勢したために追われる身となったり……、色々と大変な運命をたどった人物です。(その後、妹の嘆願により秀吉の許しを得たと言われています)

そんな境遇の京極家ですが、この正宗の短刀だけは最後まで守り抜きました。
召し上げられることを恐れ、持っていることを言わず、誰にも見せず……。そうして長きにわたって、この短刀はひっそりと受け継がれてきました。
この話を知った時、私は「なんて愛された刀なんだろう」と思いました。紛れもなく、一族の宝だったのだろうということが一目瞭然じゃありませんか。
まさに「箱入りの刀」という言葉がぴったりですね。

私は、この刀が愛そのものに見えます。京極家の方々が、この刀を静かに、けれど確かな意志をもって受け継いできたのだと思うと、私には計り知れない壮大な想いがこの刀に託されている気がしてなりません。

白山藤四郎

キャプションには「白山」とは書かれていませんでしたが、後で調べてみたら白山藤四郎ということが分かりました。刀剣乱舞ではおなじみのあの子ですね。

こちらはとても肌が綺麗な剣(つるぎ)です。
剣なので、中央が盛り上がった両刃造りになっています。同じ藤四郎でも、博多藤四郎などとは肌の感じがだいぶ違っていて驚きました。
博多藤四郎は肌模様ががっつり出ていましたが、白山藤四郎はあまり肌模様が見えず細かく詰んでいる感じです。
同じ刀工でもかなり違っているので、それは作刀年の違いなのでしょうか……?藤四郎は現存の刀が多いので、色々と比較出来そうですね。

でも、よくよく思い返してみると、肌が立っている(:模様がよく出ている)剣を私はまだ見たことがありません。製作過程も見たことがないです。刀とどう違うのか気になるところです…!


他の展示物にも触れたいところですが、(書く)時間が足りないため刀剣のみでおしまいにします……!
美術館の後にぶらぶら歩いた記録をすこしだけ後に続けます。金沢本当に良い所でした。

兼六園

日本三大庭園のひとつ、兼六園。
こちらは石川県立博物館のすぐ向かいに位置しています。

この時期は少しずつ葉も色づいてきていてとても綺麗でした!松の木には雪吊りがついていて季節の移ろいを感じられました。

金沢城

兼六園の隣に位置するのが金沢城です。博物館〜兼六園〜金沢城は全て距離が近いので、周りやすくておすすめ^ ^

21世紀美術館

こちらも徒歩圏内にあるので、興味がある人はぜひ行ってみてはどうでしょうか。建物の周りは公園のようになっており、地元の方や観光客で大変賑わっていました。
ここ、映えスポットとして有名なところだそうですね。見てて面白いアートがたくさんあったので、おすすめです^ ^

屋上にいた金色の人
うさぎ椅子と呼ばれてるもの

金箔ソフト

名物(?)金箔ソフト。金箔は味がしなかった!笑 でもこういうのは旅先でしか食べられないので、値段が高くても私は後悔してません( ̄▽ ̄)

治部煮

金沢の郷土料理だそう。釜の中に汁が入っていて、ぐつぐつ煮てきたら麺をいれて食べます。汁がとろ〜っとしていて美味しかったです^ ^


まとめ

金沢はずっと行ってみたい場所だったので、今回刀剣をきっかけに行くことができて本当に嬉しかったです。

見たかった刀を見て、素敵な街を知ることができて、本当に濃い一日だった……。一日で帰るのが勿体無いくらい、贅沢な旅ができて心が満たされました( ´ ▽ ` )

またいつか来たいなぁ、金沢。
また来れるように、色んなこと頑張ろう。

では。

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