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OECD E2030 プロジェクト∞無限大とは何か?②

今後人に説明する必要が出てきそうなので、白井俊著「OECD Education2030 プロジェクトが描く教育の未来 エージェンシー、脂質・能力とカリキュラム」で復習します。

前回の復習

  1. コンピテンシーの議論の発端「試験での成績が、必ずしも職業上の能力に直結していないのではないか?」(米 マクレランド)

  2. 1997年〜2003年 DeSeCoプロジェクトにおけるコンピテンシーの概念整理

  3. 東日本大震災を契機とした東北スクールプロジェクト

  4. 2015年〜2018年 Education2030フェーズ1 DeSeCoの再定義

  5. 2019年〜現在進行形 Education2030フェーズ2 カリキュラム提案(2023年〜プロジェクト∞無限大)

今回はDeSeCoとEducation2030の関係について見ていきます。これを見ることで5.Education2030フェーズ2の立ち位置がわかるからです。

DeSeCoの課題とE2030の課題解決

DeSeCoの課題を見ることでEducation2030が克服しようとしているものが見えてきます。

DeSeCoの課題1

キー・コンピテンシーが理論的・抽象的過ぎて、教室での実践やカリキュラムづくりなどの政策立案に具体的な形で活用できず、実行可能性に欠ける
中略
行政官、学校の管理職や教師などの実務家はもちろん、生徒や産業界などの関与も限られたもの

p.58

ということで、学校での授業改善や様々な政策立案に生かしていくのに十分でなかったようです。

DeSeCoの課題2

12カ国のみの参加

p.58

多くの国が参加していなかったようです。

Education2030の課題解決

課題1に対しては、2015年〜のフェーズ1でカリキュラム設計について、2019年〜のフェーズ2で評価、教育法、学校マネジメントについて調査研究を行い、実行可能性を高めています。
課題2に対しては、多様な国・地域、立場(行政官、研究者、教師、企業、NGO、学生・生徒)に配慮しているとともに、会議運営の方法も工夫している。

ちなみに私はFG3という教師グループに所属していて、教師だけのミーティングや多様な立場の人が集うワークショップに参加したりしています。
DeSeCoは日本は参加していなかったけれども、E2030では運営理事国です。
私は日本の地方都市の公立中学校の先生だし、チームを組んでいるのはスコットランドの小さな漁師町(人口約13,000人)トマス・グラバー生誕の地)、フレーザーバラの中等教育学校です。

ウェルビーイングという目標

DeSeCoのもう一つの課題とパラダイムシフト

DeSeCoのもう一つの課題が目標の抽象性にありました。
DeSeCoの目標は「人生の成功」や「良好に機能する社会」という抽象度の高い概念でしたが、Education2030では「ウェルビーイング」という考え方に変えられます。
「ウェルビーイング」は、経済的成長から格差などの克服も目指した包括的成長への転換の象徴で、OECDでは「より良い生活のための指標」示しています。
ここには大きなパラダイムシフトが含まれています。
それは受け身から能動への転換です。

マクレランドが「試験での成績が、必ずしも職業上の能力に直結していないのではないか?」と問題提起したとき、社会にどう対応していくかが問題でした。受け身です。
一方のEducation2030は、「私たちが実現したい未来」をウェルビーイングの指標を手がかりにどうつくっていくかという問題になります。能動です。

それを受けたプロジェクト∞無限大は、「私たちが実現したい学校」をウェルビーイングの指標を手がかりにどうつくっていくかということが問題になるわけです。

プロジェクト∞無限大の全景が見えてきました。

https://www.oecd.org/tokyo/statistics/aboutbli.htm


OECD Better LIfe Index


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