スサノオの夢と出雲
出雲へは3回行った。初めて行ったのは4年程前になる。
きっかけはそのまた5年ほど前に見た夢だった。
夜の海に浮かぶ小さな島に白装束の神様とおぼしき人々が5人座って話をしていた。
島にはしめ縄がかかっていたように思う。
「そろそろスサノオさんが生まれる頃ですな」
「スサノオさんは隙がありませんからな」
スサノオ…？
特にスピリチュアルに興味があった訳ではなく（オカルトや悪魔、妖怪は好きだったいわゆる中二病）、神の存在を肯定も否定もしていなかった。
どちらかと言えばいるんじゃないか、ぐらいの認識で、普段は特に神について考える事も無かったので、何故こんな夢を見たのか不思議だった。
日本神話のスサノオノミコトの話は有名なので聞いたことがあったし、乱暴者だがどこか人間臭いところになんとなく親近感を持っていた。
スサノオの神話を題材にした永井豪の未完の大作漫画「凄ノ王」も、永井豪の作品では一番好きだった。
夢で見て以来、スサノオという神と、風景が気になった。
夜の海に浮かぶ小さな島。
果たしてそれはどこにあるのだろうか。
行けばスサノオについて何かわかるのだろうか。
ネットで調べてみると、とある画像にたどり着いた。
島根県は、縁結びの御利益で有名な出雲大社近くにあるという「稲佐の浜」。
海辺に佇む岩山の頂上近くに鳥居が立っている様はなんとも不思議で、夢で見た場所と同じかどうかはよくわからなかったが、どうしてもそこへ行ってみたいと思うようになった。
それから4年経ち、生活も落ち着いてきた頃にふとその事を思い出した。
田舎へ帰省する以外、一人旅などしたことなかったが、5月のゴールデンウィークに稲佐の浜を目指しバスで一人出雲へと向かった。
そこへ行けば何か感じるものはあるのか。
バスの道中、突然空は暗くなり大雨になり、時に稲光もあった。
龍神が迎えてくれてるのでは、などと妄想しているうちに出雲に着いた。
そこから地元のバスに乗り換え、出雲大社へ辿り着いた時には空は嘘のように晴れ渡り、神社の周辺は観光地という事もあり、なんとも明るい雰囲気。
縁結びの御利益で有名なので、カップルや若い女性グループの観光客が目立つ。
出雲大社の御祭神はスサノオではなく、大国主命（オオクニヌシノミコト）である。
御祭神もろくに調べず適当に行ったのはなんとも失礼で罰当たりな話だが、摂社の素鵞社（そがのやしろ）にスサノオノミコトは祀られていた。
素鵞社の雰囲気は武骨というか、硬派というか。
ちなみに、一時期はスサノオが出雲大社の主祭神であった時期もあるらしい。
スサノオは大国主命の師匠のような存在であり、祖神（おやがみ）である。
どんな理由で主祭神が変わったのかは色んな説があるんだろうけどよくわからない。
参拝後、一通り出雲大社の敷地内を散策した後、稲佐の浜へ向かった。
出雲大社から10分ほど歩いてなだらかな坂を下っていくと、その先に稲佐の浜がある。
弁天島と海が見えてきた。
弁天島こそ、目的である、海に浮かぶ島だ。
そこからは少し早足になり稲佐の浜へと向かった。
浜辺には観光客もちらほらといて、空は晴れ渡っていた。
裸足になり砂浜を歩き回り、海へ足を踏み入れ、弁天島へ近づいて潮水に足を浸した。
弁天島の頂上近くには鳥居が見える。
岩肌に触れ、砂浜へ戻り、座りこんだ。
正直、夢で見た場所とは違うような気がした。
だけど、空は晴れ渡りとてもい気分だった。
出雲大社も、稲佐の浜も、当時住んでいた都会の殺伐とした空気とは無縁の明るく優しい雰囲気に包まれていた。
いつのまにか当初の目的意識のようなものもなくなり、砂浜に座り込んだまま、飽きるまでぼんやりと何もせず過ごしたのち、2時間ほど歩いて宿泊先のホテルへ着き、温泉でゆっくりと疲れをとり、部屋でベッドに寝転んだ。
結果的にはスサノオについて何かわかる事もなく、特に劇的なスピリチュアルな出来事もなかった。
今まで縁もゆかりも無かった土地へ一人旅をしただけに終わったが、出雲という場所がなんとなく気に入った。
その土地の人々に大昔から信仰されている大国主命、素戔嗚命、八百万の神々が好きになった。
夢で見たあの場所がどこなのか、神様が話していたスサノオの話は一体なんだったのかは未だによくわからない。
この時の出雲旅行をきっかけにスサノオ縁の神社をはじめ、たまに各地の神社へ足を運ぶようになった。
数える程だけど。
どの神社もそれぞれの空気があり、神々にまつわる様々なエピソードが伝わっており、近辺の山や川などの自然も素晴らしい。
出雲の自然は、なんだかほんわかしていて、まんが日本昔ばなしの舞台のように感じられる。
機会があれば何度でも行ってみたい。
最近、スピリチュアルに振り切ったアカウントを作り、Twitter（X？）を再開した。
タイムラインの皆様はとても親切で話題も面白い。
スサノオについての話題がちらほらと入ってくるようになってきた。
こういったご縁や展開も、もしかすると導きかもしれない。
日常の中で心を澄ましインスピレーションに耳を傾けていれば、いずれ夢について何かしらわかることもあるかも知れないと思う。
そして今現在、初参拝の頃のカオスが嘘のように職場もプライベートも人間関係に大変恵まれ充実しているので、お礼参りの意味も込めて今一度出雲へ行こうと思う。
できたら、2023年今年中に。
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