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好きな練習メニュー③

ここ2回好きなメニューについて書きましたがどちらも選手が夢中で取り組めるようなゲーム形式のメニューだったので、今回はコーチがアイデアを伝えるドリルについて書きたいと思います。
今回紹介するのはサイドピックシューティングと私が呼んでいるドリルです。大学チームを率いていた際はピックからオフェンスを始めることが多かったです。そのあたりの理由についてもいずれ書きたいと思いますが、今回はそのピックの基礎を作るメニューです。

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ウイングにオフェンス・ディフェンス、2ガードポジションにパサーを置いてスタートします。パサーはボールをウイングにパスしてそのままピックをかけにいきます(図左)。ウイングのオフェンスはピックを使って自分のディフェンスを外してシュートを打ちます。
このメニューはシューティングなのでディフェンスはダミーで行います。そしてディフェンスの選択肢はオーバー(スクリーナーよりユーザーに近い側を通る、図中央赤)かアンダー(スクリーナーよりゴールに近い側を通る、図右赤)かの2つです。
オーバーしてきた場合オフェンスはスクリーナーを回るようにしてディフェンスを背負うようにします(図中央青)。そうすると自分のディフェンスを無力化できるので、状況を見ながら判断することができます。そのためにドリブルはできるだけゆっくりします。そして自分がオープンになっていると想定してジャンプシュートを打ちます。
アンダーしてきた場合オフェンスは一時的にプレッシャーのない状態になるのでシュートを狙います。ですが私がコーチしていたチームの場合そのシュートを高い確率で決めることは困難でした。ですのでもう1つの選択肢としてリピックを使いました。オフェンスは視線をあげたり、ドリブルをしながら逆の手をボールに添えるようなフェイクをしてディフェンスを前に出させた後、もう一度ピックをかけ直してもらいドライブを狙うプレーです(図右青)。

オフェンスは基本的にこの3つの選択肢の中からディフェンスの動きをリーディングしてプレーを選択します。まとめると以下のようになります。

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このメニューではディフェンスがアンダーしているのにオフェンスが中にドライブしてしまったり、ディフェンスがオーバーしてきたのにオフェンスが背中で押さえる前にスピードを出してディフェンスを自由にさせてしまっていたら指摘します。なぜなら選手がプレーするだけでは気づきにくいポイントを理解してほしいからです。
一般的にドライブはスピードがある方が良いと思われています。ですがこのメニューの状況ではディフェンスを背中で抑えて周囲の状況を見るためにあえてゆっくりドライブします。またディフェンスがアンダーした場合にリピックするには、ユーザー・スクリーナーの両方がリピックのアイデアを持っている必要があります。

こういったアイデアはコーチが伝えなければ、選手が自然に気づくことは難しいと思います。NBAやユーロリーグのような高いレベルの試合を見ていれば気づいて真似することはあるかもしれませんが、私が指導していたのは女子のチームで主体的にそういったカテゴリーの試合を見ている選手は少なかったということもあります。
このように選手が気づきにくいポイントに関してはコーチが伝え、選手が実際に体験してみることで学ぶのが良いのではないかと思います。その上で実際のプレーの中で選手が選択するかどうかは選手の判断に委ねたいと思っています。

選手が知らなかったり単純にプレーするだけでは思いつきにくいアイデアを選手に伝えることもコーチの役割の1つだと思います。そしてただアイデアを伝えるだけでなく、そのアイデアを発揮する場面を切り出して選手が体験しやすくするところまでがコーチの仕事だと思います。それが良いアイデアで実戦の中で使えそうだと感じれば、自然と実戦形式のメニューの中でも選手は使おうとするはずです。そうやって経験を積むことで自分のものにしていくのだと思います。

自分のアイデアを試す練習も大事ですが、それだけでは気づかないこともたくさんあると思います。コーチから伝えることで選手のアイデアを増やすことができれば、選手の可能性を広げることにつながると思います。決してコーチが指示した選択肢以外をしてはいけないと縛るのではなく、こういった選択肢もあるよと提案していくようなコーチングができれば選手が自律的に成長していけるのではないかと思います。
少しでも参考になることがあれば幸いです。

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