自分ひとりのゴールじゃ、つまらない!
前回、あなたのブリーフシステムによって、「現状」として見える世界が決まってくると言いました。そして、そのブリーフシステムは、他の誰かからの影響を受けているということでした。
だから、その「現状」を超えていくための「現状の外側のゴール設定」というのは、誰かに押し付けられた基準ではなく、自らの基準で心から望むゴールを選び出し、新しい世界へ移行するための方法です。
ここで、どうやって現状の外側にゴール設定するのかをお話しする前に、少しゴールについて確認しておきましょう。
職業とファイナンスのゴールについて
まず、コーチングではゴールは一つではありません。ゴールは人生のあらゆる領域にいくつも設定するものですが、その中でクライアントが一番気になるのは、やはり職業のゴールでしょう。
コーチングでは、職業とは社会に対して何らかの機能を果たした結果、報酬を得るものであって、かつ、人生の中核となっているものを言います。一般的には生活に必要なお金を得るために働くことと思われていますが、大事なのは「社会に対して何らかの機能を果たす」という部分です。そして、それはすなわち、「人の役に立つ」という意味です。
私たちは資本主義社会に生きているので、人の役に立ってしまうと往々にしてお金がもらえます。でも、そのお金はあくまで役に立った結果として受け取るものです。
ただし、そういう職業で得たお金だけでは、必ずしも自分の生活に必要な金額を賄うことができない事態が起こりえます。困っている人の手助けをするような職業では、相手はお金に余裕がないことが多いので、十分な報酬をもらえない場合が多々あります。そのほか、例えばエンターテイメント業界は、人々に一時の楽しさや幸福感を与えたり、普段何気なく生活していたのでは気付けない問題意識を喚起してくれるような職業ですが、必ずしも興行収入から来る報酬だけで生活費を賄えないということが起こり得ます。
それでも社会の役に立っているので立派な職業なのですが、生きていくためにはお金は稼がなければなりません。
だから、職業とは別にファイナンスというゴールを立てて、ファイナンス活動として別の仕事を持ったりして必要なお金を稼ぎます。
例えば、職業以外に物販で収入を得たり、職業で使っている以外の隙間時間にコンビニでバイトしたりして収入を得ている人はたくさんいます。
このようにファイナンスをきちんとコントロールしたうえで、職業において自分の能力を存分に社会のために役立てることができたなら、きっと満足感でいっぱいの充実した人生を送れるに違いありません。
なお、ゴールについては以下の記事も読んでみてください。
「外側」を見えるようにするには
さて、ここから「現状の外側のゴール設定」の話に戻ります。
前回、「現状の外側」はこんな所だと言いました。
「現状の外側」は見えないのです。そして見えないのは、「現状の外側」があなたにとって重要度が低いからでした。
それなら、「現状の外側」の重要度を上げてしまえばいいのです。
変わりにくいブリーフシステム
ところで、「現状の外側」にあるものには、簡単に重要度を上げて見えるようになるものと、そう簡単に重要度が変えられずなかなか見えるようにならないものがあります。
前者の例として、前回、妻が妊娠した途端に赤ちゃんが目に付くようになるという話をしました。後者としては、あなたのブリーフシステム、特に長年の間に染みついた物の見方や考え方、思考パターン、生き方についてのポリシーなどが挙げられます。
要するに、あなたを特徴づけている、もしくは、あなたをあなたらしく動かしている基本OS(オペレーティングシステム)は、そう簡単には変えられないということです。
ブリーフシステムの書き換えはコーチの仕事。でも、…。
実はコーチングは、クライアントのブリーフシステムを書き換えることによって、クライアントにとっての重要なものを、もしくは重要なものの優先順位を変えることによって、これまでRASによって見えなかったもの(スコトマ)を見えるようにします。
だから、ブリーフシステムの書き換えは、コーチにとって非常に重要な作業なのですが、クライアントの悩みを聞いたり、クライアントにアドバイスしたりしても、それくらいのことでブリーフシステムは変わりません。その時、仮にクライアントがふんふんと分かった気になったとしても、一晩明けるとコーチングを受けた時の高揚感はすっかり忘れて、ほとんど何も変化していないことに気付くというのがありがちな話です。
では、コーチングセッションの間、コーチは何をしているのでしょうか?クライアントの横に座って、クライアントの話を聞いたり、時にはコーチがクライアントに話しかけることももちろんありますが、一見大したことをしていないようにも見えます。
実はコーチングにおけるコーチとクライアントとのやり取りの中で、クライアントのブリーフシステムが書き換わるのはコーチの言葉によってではないのです。
確かにブリーフシステムは言葉によって影響されやすいのですが、ブリーフシステムが書き換わるのは、コーチではなく「クライアント自身の言葉」によってなのです。
???と、なりますよね。
この「言葉」は、声に出して自分に語りかける言葉である必要はありません。心の中で「あっ、これは自分が変わらないといけない!」「そうか、そういうことか!」などと自分に対して発する内省言語と言われるもののことです。
人は他人の言葉では変わらないのです。
だから、コーチングセッションの間、コーチはクライアントと話す必要がないと言うのです。クライアント自身が内省言語で自分に対して「変わらなきゃ!」「こんなことではダメだ!」「やっぱり、こうしたい!」と語りかけることで、ブリーフシステムが一気に変化するのです。
このように、コーチの巧みな働きかけで、クライアントの中で内省言語が発生し、それによってブリーフシステムに変化が起こり、クライアントにとっての重要なものが変わったおかげで、現状の外側を見えなくしていたスコトマが外れ、心から望む「現状の外側のゴール」が見つけられるようになる、ということです。
「現状の外側」には、先がある!
ところが、コーチングにはまだこの先があるのです。むしろ、ここからが未来を作っていく私たちにとって一番大事な部分です。
ここまでは自分一人のゴールの話でした。でも、本当のゴールは自分を遥かに越えた所にあるのです。
どういうことなのか、順番に見ていきましょう。
みなさんは何か大きなことを成し遂げようとする時、その全てをたった一人で行うことはないでしょう。
あなたが会社の社長なら、自社の商品やサービスをより多くの顧客に提供することによって、社会に貢献したいと考えていることでしょう。そして、会社の中には社長のあなた以外に、役員や部長など会社全体や部門を率いていく人もいれば、現場で営業する人、製品を作る人、経理を担当する人、渉外担当の人、マーケティングを担当する人など、役割の異なるたくさんの人たちが一緒に働いています。
あなたが自分で何かアート作品を作って世に出すにしても、たくさんの人の目に触れるようにするには協力者が必要です。一人で黙々と活動するよりも、たくさんの人たちのサポートを受けて、チームとして活動した方がよりたくさんの人に、より効果的に作品を届けることができるはずです。
このように、あなたがたくさんの人たちに何かを届けたり、よい影響を与えたりしようとすれば、チームが必要です。
そして、そのチームが共通の「現状の外側のゴール」を持ち、チーム全体が高いエフィカシーで活動すれば、一体、何が起こるでしょうか?
それがコレクティブ・エフィカシーの世界です。
高いレベルのコレクティブ・エフィカシーを持ったチームが活動すれば、達成できるアウトプットは人数倍ではなく、乗数倍と言って良いくらいの圧倒的なものになり得ます。
さらに、お互いがお互いのコーチとしての役割を果たせば、それぞれのスコトマを外し合いながら、現状の外側のもっと先へ向かっていけるのです。
ワクワクして来ないでしょうか?
その時、到達できるゴール、すなわち、見ることが出来る新しい世界は、きっと一人の時には想像もできなかったような素晴らしい世界になるでしょう。
コーチングとは、そういう現状の外側にある世界を作っていくためのメソッドです。
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