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未経験の僕が仕事を辞めて学習塾を開校する話その26―第3の大人との対話

中高生のうちから,お父さんとお母さんと学校の先生以外の大人と話をする機会が多い方がいいと考えています。

学習塾という形態を選んだ理由のひとつに,中高生のみんなにできる限りいろんな話をしておいてあげたいというものがあります。コーチングやカウンセリングの枠組みでは,自分が一方的に話を伝えるということはあまりないのですが,しかし学習塾という形態をとることで,たまに大人が観ている景色について話をする機会を設けることができるのです。


大人が観ている景色を伝えるときに気をつけていることは,説教になら内容に話をすることです。あくまでも大人の目線ではこう見えるよ,ということをしっかりと含めてお話をします。

あるいは,逆に彼らが考えていることに対して問いかけることで,大人の目線に気付かせるという手法をとることもあります。



彼らがネットニュースや新聞,動画などで知った情報から,たとえば働かないおじさんや,頭の固い”老害”などと揶揄されたひとたちの話をしたり,時の総理大臣の言行不一致の指摘や,景気が上向かない空白の30年間への批判をしたりするとき,僕はそれをワクワクしながら聞くのですが,ワクワクしながらも時折「働かないおじさん」と一口に言っていても,たとえば「働かない」というのはどういう意味だろうか?とか,「頭が固い」というのはつまりどういうことだろうか?とか,聞き返してみるのです。


政治の話,経済の話,仕事の話,高校生ともなるとそれなりに知識を蓄えている子は,ある程度持論を固めていることもあって,しかしそれはやはり視点がまだ少なく,狭いことが少なくありません。


聞き返してみたり,言葉を分解させてみたりすることで,その視点が少ないことに気付きを与えます。

終身雇用制度がジョブ型雇用に変わっていくとしても,終身雇用制度がジョブ型雇用に劣る仕組みであるとは即座に言い切ることはできません。しかしまだ彼らは白黒つけたい年齢ですから,どうしてもどちらが優れていて,そうでない方はダメなのだと切り捨てたいわけですが,何が本当に正しくて,何が本当に間違っているのかなんてことは,簡単にはわからないのです。


そのことに気が付く回数が増えれば増えるほど,柔軟な思考を身につけることができますし,持論に対する批判思考を持つこともできます。俯瞰できるようになるんですね。

だからと言って,僕は彼らを論破したいわけでも,いずれかが正しいとも正しくないとも言うわけではないですから,ただひたすらに問いかけることを楽しみに対話を続けるのです。


まぁ,とは言っても,時々調子にのって,説教みたいになっちゃうところはご愛敬。高校生が自分の考えを好きなだけ話して,時に反論されて,自分の考えをさらに深めるような場になるといいなと思ってます。

そういう場所を「サードプレイス」として置きたい。
コーチング学習塾のコンセプトでもあります。





どうして日本は30年以上も不景気なんですか?日経平均株価がバブル景気の最高値に到達していない理由はなんですか?

さぁなんでだろうね。なんでだと思う?

終身雇用とか,日本式経営とか,要するに団塊世代とかジュニア世代のひとたちが大した能力もないのに,経営陣とか役員レベルにたくさんいるからじゃないですか。仕事もしないのに。

はーなるほど。難しいこと知ってるね。
終身雇用とか日本式経営とかってどういうこと?

一度働き始めたら,定年まで勤められることですよね。

それの何が問題なの?
なんとなく便利そうな感じするけど。

クビにならないから,テキトウに働いても給料もらえるから,みんな本気にならないってことですよね。

そうなんだ。
終身雇用だと働かないようになると考えられるってことだね。なるほど。
そういうひとばかりでは仕事は廻らないようにも思うけど。

だから働くひとと,働かないおじさんに分かれるんじゃないんですか。

なるほど。働く人と,働かない人がいることはあるだろうね。勉強する子もいれば勉強しない子もいるもんね。働かなくて給料もらえるのは本当なのかなぁ。それがホントなら僕もそうしたいな(笑)
終身雇用制度は,今でこそ,壊れてしまってきているけれど,何十年も続いている安定したシステムという側面はあると思うんだよね。安定稼働していたときにもその問題はあったんだろうか。

なんでうまくいっていたんでしょうか。

なんでだろうね。
日本式の経営と関係するかも。
あとは,一昔前の日本人の一生とか文化背景を考えると,案外当時の最適システムだったなんてことはあるかも。

働かないひとがいても成り立つシステムって…。

働かないというのは,どういう意味なの?
そのひと朝出勤して,夕方定時まで何してんの?

さぁ?

さぁ???

みたことないから。働いたこともないし。

働かないでも給料もらえるひとというのは,実のところ僕はこれまで仕事をしていてまだ会ったことがないんだよね。会社にとってどれだけ役に立つのかという程度問題なら,そりゃぁめちゃくちゃ役に立つ人もいれば,そのひとと比較してそうでもないひとというのは確かにいたと思うんだけれど,あんまり働かずに給料もらっているひとっていないと思うんだよね。
そう見えるひとはいるかもしれないけれど。

んー。
でも役に立たないひとをクビにできれば,役に立つひとばかりの職場だったらもっと経済成長できるんじゃないでしょうか。

立たないかとか,能力がないとか,仕事をしていないとか,使えないとか,ヒトクチに言っても,これを証明するのは案外難しいんだよ。何をもって仕事をしていないと考えるのかをしっかりと言語化できるような本当に「働かないおじさん」って思ったほどいないんじゃないか?と僕は思ってるんだけど。まして解雇しようと思うなら,本人も,第3者も,納得できるような裏付けが必要なんだよね,現行の日本の労働法では。
労働者に甘いとも言えるし,労働者を守っているとも言えるかな。

なるほどー。


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