見出し画像

共作プロジェクト『緒』Work in Progress vol.1を終えて―作曲家振り返りトーク

書き手:小栗舞花 (作曲家)

作曲は1人きりで孤独に行うものなのか、あるいは自分の音楽は本当に自分だけのものなのか。作曲家であるわたしたちは、もっとその作曲という営みそのものを見つめたい。
やまだななおさんと23/10/11に行った、共作プロジェクト『緒』Work in Progress vol.1、このプロジェクトの進行中は、そんなことが頭の中をめぐっていました。
わたしたちは、共作を考えるために、単に作品を発表するだけでなく、よりその共作の過程について想いを馳せたいと思います。今回はそのために、小栗舞花と山田奈直の2人で、これまでのクリエーションについて振り返る機会を設けました。

近年、分野を超えて共創作品づくりに力を入れ、試行錯誤を繰り返しているわたしと、音楽大学の博士課程に属しアカデミックな音楽を研究しつつ、こうした挑戦に好奇心を持って取り組み、新鮮な眼差しで捉える山田奈直の組み合わせというのは、独特のバランス感覚があり、気に入っています。なんだか、わかりあえないことも共に乗り越えていけそうな強さを感じるのです。
そんなわたしたちのこの半年間の経験の一端を、ここに書き落とせたらと思います。


自己紹介と共作プロジェクトの概要

おぐり まいか (以下、おぐり):これから共作プロジェクト緒 Work in Progress vol.1の振り返りトークをします。
最初に私の自己紹介から。私は小栗舞花と言います。作曲家をしています。
音楽の心臓のようなところ、音楽性みたいなところを捉えて形にするのが得意で、 暗がりとかすごく小さい音を使って感覚を研ぎ澄ませて舞台作品を仕立てるっていうことをしています。 
最近は、このプロジェクトも含めて、思い通りにいかないことが豊かさに変わるっていう世界に憧れて、表現者との共創の取り組みっていうのをパフォーミングアーツ全般で行っています。 

それではもう1人のプロジェクトメンバーのななおさん、自己紹介お願いします。

やまだ ななお (以下、ななお):山田奈直です。国立音楽大学の大学院作曲専攻で、今は博士後期課程の2年生です。普段はいわゆる現代音楽と言われる音楽、器楽作品を作っています。 
作品を作る方法として、ほぼ常に、音楽以外の何かからインスピレーションを得て、それを再現するわけではないけれど、音楽を作るという方法をとっています。で、大体そのインスピレーション元がそのままタイトルについてることが多いです。

おぐり:ありがとうございます。

軽く、このプロジェクトについてもお話ししておきます。今は私とななおさんの2人で行っているプロジェクトで、作曲家同士が一緒に1つの作品を作曲する、つまり共作することに主軸を置いています。その中で、自分と共作相手の音楽観・美学が触れ合い、時にぶつかり合って、2人ともが見たことのない景色にたどり着く、新しい色がにじみ出てくる、そんな体験を夢見るプロジェクトです。 
このプロジェクトにおいて、私たちは『作曲、作曲家の「個」を解体する』っていうスローガンを掲げています。 
この「個」っていうのは、個人作業のことであったり、個性のことであったりします。
つまり、作曲は1人きりで孤独に行うものなのか、あるいは自分の音楽は本当に自分だけのものなのか。 そういうことに切り込もうとしています。

今日は、 これまで踏み込めなかった詳しい共作過程とか、今まで作ってきた共作3作品に対する私たちのフィードバック、どう感じたかみたいなことを話していこうと思います。 


『交換楽記』 共作でも1人で考える時間を

おぐり:最初に、交換楽記による小品について。
交換楽記っていうのは、 私たちが作った作曲手法の1つで、交換日記みたいに楽譜を交換しながら、ちょっとずつ曲を交互に書き進めて、1つの楽曲を作ることを目指すやり方です。 
そして、相手が書いたものに対するわずかな修正っていうのは認められてます。今回、交換楽記による小品では、 2人で計33回の交換を行っています。

当日パンフレットより

まず、そもそもなんでピアノソロかというと、もともとピアノに特化したプログラムをこのプロジェクトの最初の公演で組もうっていう話になっていて。それがなぜかっていうと、2人が同じくらい馴染みがある楽器だからでした。
なので、ピアノソロを作ろうっていうのは割と早い段階で決まっていて、8月30日には私たち作曲に着手してるんです。 
ただ、交換楽記っていうこの仕組みが確立されたのは、何月何日だか覚えてますか?

ななお:え。1週間前とかじゃない?本番の。そんなギリギリじゃないか。

おぐり:そこまでじゃない。笑 リハーサルとかしてるから。

ななお:そっか。笑

おぐり:手法が確立されたのは、9月18日です。 
この9月18日に、私たちが喫茶店で、最初の1、2回目を手書きの譜面で書いてみて、そのあと3回目からは読み間違いもしにくいし、効率化が図れるということで、譜面浄書ソフトのFinaleを使って、 交互に書き進めています。 
で、これは当日の展示とかインスタでは触れられてないんですけど、私たちは3つぐらい、交換楽記をやる上で仮説を立てていて、

1つ目が、1回あたりの作曲単位。 書く分量は短い方が、モザイクみたいになって、お互いの作風が入り混じる感じになるんじゃないかってこと。2つ目が、フレージング。フレーズは言い切らずに、あえて区切りの悪いところで相手に渡すと、予測ができない展開になりやすいんじゃないか。で、3つ目が、慣例的な記号だけじゃなくて、比喩とか、イメージを丁寧に書き込んでいくと、相手が書いた音に対する解釈が膨らんで、豊かな選択肢を与えるんじゃないかっていうのを、なんとなく2人で頭の片隅に置いて進めていきました。
実際共作体験としてはどうでしたか。

ななお:作曲手法が確立されるまでのブラッシュアップ期間、 最初はお互い、目の前で交換して、時間制限を設けてどんどん書いていくっていう方法を取ってたけど、それだと難しかった。別に急げば書けちゃうんだけど、急いで書いたものが、やっぱり自分が本当に出したい音なのかどうかっていうのが、責任が持てない状態。それはちょっと良くないかもっていうので、結果、1人で考える時間もある程度持てるっていう…なんか今変な例えが浮かんだけど…

おぐり:なんですか。笑

ななお:いやいやなんかさ、例えば恋愛においても、 1人の時間ってすごく大事にした方がいいみたいな。あの、一緒に住み始めてからも、みたいなことって言うじゃん。もちろん人によって度合いは違うと思うけれど。なんかそれと近いものがあるのかなっていう。

おぐり:あー、なるほど。常にこう、同時にせーので書くっていうよりも、 自分がじっくり考える時間をある程度持てた方がやりやすいって言うんですかね?なんでしょう。

ななお:なんか、より作品…音楽を作ろうとすることができる気はする。別に前者でもダメじゃないと思うんだけど、より実験的な感じが強いかなって。

おぐり:一応補足説明をしておくと、交換楽記に至る前に、2つ試作をしましたね。でも、ボツになりました。
最初は写真の中の建物とかの輪郭をなぞって、輪郭線に対して何かのパラメーターを当てはめるみたいなことをしてるんですよね。それはより実験的な形ですけど。図形楽譜の読み取りみたいなことを2人でする感じ。そのときは結構2人で真逆の解釈をすることが多くて。

ななお:うんうん。

おぐり:で、それらが合わさることなく、どちらかが妥協するか、思い通りになるかの2パターンでしかなくて、あんまり共作してる感じがないねってなって。 
その次に、さっき言ってたせーので、2人同時に記譜をするっていう、すごい短いフレーズを変奏曲のように組み立てるっていうつもりで、 お互いが向かい合って、自分にとって正の向きの楽譜と逆の向きの楽譜があって、制限時間は2分半ぐらいの時間で、自分にとって正の向きの部分を書き進めて、次ひっくり返して、また書き進めて、もう一回ひっくり返して、で、もう1回ひっくり返して、どんどん曲を作ってくんですけど…まぁ、時間制限があるっていうのが1番ネックでしたかね。

ななお:そうですね。

おぐり:あんまり熟考しないで音を書いてる感じとか、同時でやってても影響し合う部分が少ないっていうのが、自分たちにとって作曲作品の質の満足感みたいなのがあんまりないみたいな状況になりました。
ただ、図をなぞってパラメーターを記載するやつよりは、わたし的には、予想を裏切られる展開があったりとか、面白い展開があったんです。でもやっぱりちゃんと自分が納得した音を書きたいみたいなところで、じゃあもう交互に曲を書き進めて、で、代わりにさっき言った仮説の3つをちょっと考えながら進めていこうかっていうので、交換楽記にたどり着いてます。


『交換楽記』 記譜開始、明かされる互いの意図

おぐり:中身って今、共有できたりします?…これですね。これが浄書版。

《交換楽記による小品》より最初の1ページ

ちなみにこれ、1番最初の10連符書いたの私ですけど、私はこの10連符がいくつも連なって、めちゃくちゃ音像がつかみにくいというか、もうなんか和音のアルペジオをずっと鳴らしてるみたいなことになるかなー?とか思って、最初書いてました。

ななお:なるほど。そうだね。記憶が正しければ、10連覇の次のシを書いたのが多分私で、強弱って…

おぐり:最初なかったですよね。最初なくて、

ななお:どっかでついたのか。

おぐり:どっかでついてるはず。でも私これ書いてないと思うな。

ななお:このね、ペダリングを書いた記憶はあるんだよね。

おぐり:うんうんうんうん。これは絶対ななおさんが書いてる。

ななお:わたし多分、この10連符を見た時に、 あ、これアウフタクトなんだきっとって思って、その半音上に解決の音を書いたっていう。

おぐり:なるほど、これ解決の音だったんですね。

ななお:そうですね。

おぐり:すごく勢いがあるエネルギーがある感じが続くと思ってたら、急にこう、停滞!みたいな感じの音が書き込まれたから、そこでだいぶ、お、っていう気持ちにはなりました。

ななお:あーなるほどなるほど。

おぐり:この10連符の要素、もう消えちゃうのかな…みたいな。笑

ななお:確かに。笑 でも結局あれだよね。

おぐり:そう、2段目とか。

ななお:2段目もあるし、多分音列とかは結構…13小節目のこの和音って私が書いてるんだけど、これ多分最初の音列。

おぐり:へえ!気づかなかったです。笑

ななお:笑。急に何始まったんだっていう。

おぐり:あぁ、なるほど。なんか仕切り直したのかと、完全に。

ななお:いやいや、そんなこと。

おぐり:いや、結構ななおさん、楽想をよく変える役回りだったじゃないですか。

ななお:なんか変えちゃってたね。別になんか変えたわけでもなかったけど。多分もたなかったんだと思う。

おぐり:あー、なるほど。

ななお:続きが書けなくて、特に最初の方。慣れるまでは。この後何書いたらいいんだ?みたいな感じになって。じゃあいっか、次行っちゃうかみたいな感じてたんだと思うけど。多分、後ろの方に行くにつれて、もうちょっと長いスパンで音楽がお互い捉えられるようになってきて。

おぐり:私はだいぶ前に書いてあることに引っ張られるというか、 前に書いてあることを手がかりにして次を探すみたいなことをするから、逆にここまで楽想を変えるみたいなことが、なかなか自分の発想の範囲にないというか。
構えてたものと全然違うものが、こう、返ってくるみたいな。すごく脳みそを働かせる感じがありましたね。

ななお:なんか今ちょうど表示されてる40小節目とか39小節目あたりからのアグレッシブな感じは、逆に私が結構びっくりした。

おぐり:あ、本当ですか。でもこの最初のメロディの一小節目とか、確かななおさんだった気がする。

ななお:うんうん。

おぐり:伴奏系は多分両手をクロスさせるのは私が書いてる気がするけど。なんかこれを見た時に、クラシカルな方に向かうのかなと思って。 ここは自分のオリジナリティを出したってよりは、なんか完全に寄りかかりながら流れに身を任せた、みたいなところがあります。

ななお:多分これも、頭の連符から多分持ってきてるんだと思う。

おぐり:そうかも。そうですね。

ななお:あ、そう、だからこのオクターブ書いてないんだよ。私。

おぐり:そうそうそう。

ななお:うにょうにょした感じになるかなって思ったら、結構ごつくなったっていう。笑
で、ごつくなっていって最終的に盛り上がったっていう。

おぐり:多分この曲の中の1番ダイナミクスがでかいとこって、ここな気が…そうですよね。

ななお:最初はさ、この楽譜自体を奏者さんが演奏する用じゃなくて、私たちが交換楽記をするために、 作曲を交換でやるために、書いた楽譜だから、説明するのもありにしようみたいな感じにして、結局そんなに書いてないけど。別に伝わりきらなくていいと思うけど、それでも楽譜だけでの情報でわかんないこといっぱいあるね。


お題作曲は相手の思考を刺激できたのか

おぐり:次が、未知なるあなたへの贈り物。トイピアノの作品。

当日パンフレットより

ななお:まず作曲方法からいくと、 相手の思考を刺激するような作曲方法がないかなっていうので、オグリンが最初に考えてきてくれた方法です。
相手の、作曲に対して、あらかじめお題を出すっていう方法を取りました。 
お題を書くときに、なんでもいいから持ってくるんじゃなくて、相手のこと、私たちはお互いの普段書いてる作品とかをよく知ってるはずなので、まさに相手の未知を引き出す、ということを意識して、お題を考えました。
オグリンが用意してくれた額縁みたいなお題シートに、打ち込んで印刷して。だからサプライズ感がある感じで、お互い発表しました。

ななお→おぐりへのお題
「サテン生地の赤いパルス」
おぐり→ななおへのお題
「自分がよぼよぼのおばあちゃんになった時の作曲をしてください。」

当初の予定だと、作品が書けたらそれぞれ、 また相手の前で演奏してみて、そこからまたお題を出すなり、なんか作曲に口出しするなりしたかったけど、ちょっと今回は時間がなくてお互いどんな作曲をしたかわからない状態で、1人ずつ連続で発表しました。
オグリンがピンクのトイピアノを使って、私が黒いトイピアノを使って、 お互いそれぞれ自分の曲のパフォーマンスを自分でやったっていう感じですね。

おぐり:若干それぞれのトイピアノの構造も違うんですよね。黒い方が若干音程が高めだったりとか。ピンクの方はアップライト型のトイピアノなので、 ちょっと構造が違ったりとか。ピンクがシェーンハットで、黒がカワイ。
さっきななおさんが、 おぐりはそんな苦しまなかったみたいな風に言ってましたけど、私もそんなにすんなりいったわけではなく。笑

私のお題、シルクとかパルスとかは、なんとなく触感があるというか、そういう意味で自分にとって作曲に持っていきやすい素材ではあったんですけど…赤色が難しくて。
私はあんまり色が、音とか音楽と連動することがなくて。 でもなんとなく赤色っていったら、情熱感とか激しい感じ、みたいな、こういうのがよくある感じ、ってことには理解があるんです。

ななお:うんうん。 

おぐり:それにのっとって作ることはできるけど、そうすると、自分の表現をしてるっていうよりは、オーダーに応える職人みたいな側面が強く出てきちゃう部分があって。それが果たして創造的なのかどうかっていうのは、どうだったのかなって思う部分ですね。

ななお:なるほど。

おぐり:実際、自分が出してたお題を相手に作曲されて、どういう印象を受けました?

ななお:正直、当日初めて聞いたのと、 実はそんなにじっくり聞けてないっていうのもあるけど、私がオグリンに出したお題って普段の小栗の作品…作品にとどまらないかも。人間性とかの感じ。感覚の全部逆をいった感じ。逆張りしてった感じのお題だったんですよね。それを全部逆で言ったから、普段と全然違うものが出てくるのかなって期待がちょっとあるじゃないですか。 個人的にはそんなことはなかったなって。笑

おぐり:そうですね。笑
さっき言ってた作りやすい部分って、自分の元の作風の部分だとは思うので。例えばトイピアノを倒す動作であったりとか、そこから、その倒したというピアノに体がどう動くかみたいな、作り方自体は、そんなに普段の作風と変わらない。
私は逆に、そのナナオさんのおばあちゃん作曲を聴いて、もっとどういうふうに作曲したかの過程をそれこそ聞きたかったというか。

ななお:うんうん

おぐり:実際に出てきた曲がこんな感じでしたというよりも、お題自体が作曲してる時のあなたの感覚をそもそも作り変えてくださいみたいなお題だったので。
そこの部分が結局わからないまま発表されると、醍醐味みたいな部分が、結局隠されてる感じがしたので、できれば一緒に作曲してる時に、お互いにちょっと経過報告じゃないですけど、そんなことをし合えると、結構楽しかったかなっていう感じはありますね。

ななお:そうですね、これはもうちょっと完全にタイムアップでしたね。


『音楽さがし 玉川上水編』の発端
だれかと同じ経験を通して創作するときの必然性

当日パンフレットより

おぐり:そして、最後の音楽探し。ななおさんは一番印象に残ってる過程はありますか?

ななお:まあ、正直、結局、最初のダムタイプなんだよね。なんと言ったら良いのかわからないけれど…

おぐり:ダムタイプの作品を見た時の印象ってこと?

ななお:何か共作するって決めたあとに、ダムタイプの作品を一緒に観る機会があって、その日すぐ会議したよね。

おぐり:そうですね、アーティゾン美術館に併設されてるカフェで。

ななお:そうだそうだ。なんかその感覚。なんだろう、そこが1番… 別にあれを再現したかったわけでもなかったけど、そこが1番必然性が強かった感じ。

2人で同じ体験をして、要は、その後にすぐ作曲を一緒に始めたっていう体験が1番強かったかなっていう。なんかそのあといろんな方法でね、作曲を実際にはもっと色々しているけれど、それは結局その後どうしようかってなった時に加えた方法な気がしていて。
そこが、もうちょっと…わからないんだけど…例えば、2つの軸みたいにして考えたらよかったのかもしれないし、それとそれはやっぱり別の方法として捉えた方がよかったのかもしれないし。

おぐり:2つの軸について、もうちょっと詳しくきいてもいいですか?

ななお:同じ芸術を同時に体験して、その後その感覚のまま作曲するっていう作曲方法と、その後の、写真から音楽を探すみたいなのが、もしかしたらちょっと混ざっていたがために、特に私の中だと、なんかちょっとぐちゃぐちゃになった感じ?
この前聴きに来てくれた人に、あそこってなんでああなってたのって聞かれた時に、なんか、うまく答えられなかった。
それは別に、知らないからとかじゃなくて、ほんとにわかんないなって思って。

おぐり:うん。確かに私も1番手放す感じを強く感じるというか、自分のやりたいこととかよりは、なんかただひたすらこう身を委ねて、なすがままに作り上げられるみたいな感じが強かったかなと思いますね。
小物楽器の選択も、自分たちが持ってるものをとりあえず持ち寄ってみるみたいなところから始まってるので、こういう音響を作りたいからこの楽器、みたいなことをするほどの数がそもそもないみたいな状況。なので、私たちが意識してこういう風に進めたいみたいなとこからは離れた結果だったかなっていう風に思います。

ななおさんが今言ったことで、ダムタイプの時のこと思い出しましたけど、同じ体験をする、そしてその直後のその感覚で2人で話して作るみたいなのって、確かにすごい面白かったなって思いました。

ななお:もしかしたら、展示系の芸術に、何回も行くってこととかはできるかもなって。
例えばダムタイプ1回見て、 作り始めて、 もう一回入って、もう1回別日に結構作ってみてからまた行って、あーちょっと違うなみたいな。あくまで再現をしたいわけではないけれど、そのときの感覚を大事にするみたいなことは、なんかちょっとぼんやりはしてるけど、面白そうだなと。

おぐり:なんかそれが、それぞれ違う展示とかでも面白そうですね。
あの時は最初これを頼りにしたけど、今回これで言うと、ここの展示のこういうのもできるね、みたいな。いいですね。なんか可能性が広がる感じがします。


“相手とのやり取りに影響は受けるんだけど、それでも自分が納得できる音をかける状況”

おぐり:じゃあ、全体の振り返りもしていきたいんですけど、 全体的に今回の共作体験で面白かったとことか1番手ごたえを感じたこととかっていうと、どんなとこでしょうね。

ななお:どんなとこでしょうね。

おぐり:でも2人とも多分1番手応えがあった作品は交換楽記かなっていう風には思ってます。…え、どうですかあってますか?

ななお:なんか手応えがあったって、ちょっと難しいんだけど。いや、でも、多分合ってると思う。

おぐり:交換楽記の時にちょっと話したこととも被るんですけど、自分が納得した音を、共作の中であっても書けるかどうかっていうのは理由として一つあると思っていて。ただそれが、自分から出てきたアイデアがそのまま採用されるみたいなのだと、あんまり共作している醍醐味がないので。
相手とのやり取りに影響は受けるんだけど、それでも自分が納得できる音をかけるっていう状況ができたら1番、この2人にとっては満足度が高いのかなと思ったり。

ななお:それは本当にその通りだと思うね。私たちの場合、基本的になるべく多くの作曲家が共作に取り組みやすくなるような方法を探すっていうコンセプトもあるけれど、同時に、矛盾してるけど、私たち2人じゃなきゃできないものができあがってほしいっていう気持ちがやっぱりすごい強いから、そのためには、今オグリンが言ったように、自分たちのその作りたいものを、お互いちゃんと反映させられる方法っていうのが、 大事なんでしょうね。

おぐり:なんか、私たちが掲げる『個を解体する』っていうスローガンがあるじゃないですか。

ななお:うんうん。

おぐり:個性もそこに含まれるから、個性を解体するっていう言葉につられて、コントロールを手放すとか、不確定性の方向に進んでいくのかなと思ったりもしたんですけど、 

ななお:あ、そうなんだ。

おぐり:やっぱり、一緒に作ってみて、それぞれの個性っていうよりは、2人の創造性みたいなのが ある程度発揮できた方が、共創してる感じは あるのかなっていう風に思ったりしていて。
だから、その個性を解体することへの着地点が、自分の中で更新された感じがしました。



おわりに

noteにおさまりきらなかったトピックのうち2つ『やまだななおの苦悩 “脳みそが共有できない” 不自由さ』『「共作は喧嘩をしてしまう」という声』はメールマガジンにて配信予定です。各SNSのDMへご気軽にお問い合わせください。
今後は、こうした2人の会話も共有しながら、作曲のプロセスを空気感も含めて公開していこうと思います。
現時点のわたしたちはというと、お互い以外の作曲家とも共作を進めてみようと動いています。おぐり&やまだも継続してまた新しい作品を制作中です。ひとまず、春になにか発表の場を設けたいと思います。再び始まる共作の行方を、気にかけていただければ幸いです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!

共作プロジェクト緒

instagram
https://www.instagram.com/projecto_231011/

▼小栗舞花 instagram
https://www.instagram.com/oguri_maika/

▼山田奈直 instagram
https://www.instagram.com/nanaoyamaaa/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?