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社会人野球界からのメッセージ「今僕たちにできること」

社会人野球のシーズン半分が吹っ飛ぶ発表から、一週間。

活動予定のなくなった選手たちが、「社会人野球盛り上げ隊」を結成。「社会人野球愛とファンに元気な姿を届けたい」と、メッセージビデオを公開してくれました。
Twitterでは書ききれない、その感想と御礼を。

社会人野球盛り上げ隊の動画は、現在、JABA公式サポーターのyoutubeチャンネル等から視聴できます。

4月10日から始まった「今、僕たちにできること」シリーズは、全国各地の選手が投げる、打つ、守るのアクションと共に、「今はお互い不自由な身だけど、一緒にこの難局切り抜けようぜ!」と呼びかけるものです。

社会人野球盛り上げ隊

元々、大阪ガスの猿渡眞之投手やJFE東日本の須田幸太投手今川優馬選手のように、情報発信に積極的な選手が各地に点在していますが、選手サイドからチームを超えた大規模な活動はなかなかできませんでした。
個々の選手に志があっても、そのチームで、あるいは知己の範囲にとどまってしまいがち。

それが新型コロナウイルス禍で変わりました。
社会人野球日本選手権と全日本クラブ野球選手権、全国三3大大会の2つが中止になり、4月末まではオープン戦も自粛に。
野球選手が野球をできない、ファンにプレーを見せることができない状況下で、今できることをと、選手有志が公式サポーター・JABAガールのyoutubeチャンネルを借り、全国から動画を募り、ビデオメッセージを作成するに至ったのです。

発起人に限らず、幅広いチームから動画が寄せられています。
今季限りチームが消える三菱重工名古屋の選手が参加しているのには胸を打たれましたし、第二弾では北海道のクラブチーム・ウイン北広島の姿も!

私見ですが、企業チームとクラブチームは組織や環境で相当隔たりがあります。社会人野球において強くて知名度があるのは圧倒的に企業チーム。でもクラブチームはJABA加盟チームの7割を占めますし、選手自身は企業・クラブ問わず旧知の仲だったりするのです。今回、クラブチームの選手が参加してくれたのは嬉しかった。

最初に選んだテーマの秀逸さ

正直なところ、私は「みんなの気持ちを一つに」的な企画が好きではありません。
私の性格が天邪鬼なためであり、東日本大震災のとき安売りされた「絆」を、お気持ちで人を救えるか?一方的な自己満足で感動を貪っているだけではないか?と冷ややかに見ていたぐらいです。

実際、ボールを投じバットを振ったところで、忌々しきウイルスは死滅しないし、最前線で身を張る人達の負担は減らないし、失われた売上だって戻ってこない。

でも、今回の動画はよく出来ていると思いました。

選手たちが、この先あるかないかも分からない公式戦に向けて、できる範囲で練習し備える姿勢、東京ドームで再会という誓いは、同じく公式戦が再開することを信じて今を耐える、社会人野球ファンの励みになっています。
(少なくとも私はそう感じました。ありがとうございます。)

「都市対抗でお会いしましょう」という、共通の希望を掲げることで選手とファンに一体感が生まれ、距離が縮まる。
その日を迎えるためにできること──手をよく洗う、密集・密閉・密接な空間を避ける、家で過ごすなど、選手も私達もできる等身大の対策を織り交ぜて呼びかけることで、協力しよう、今一度徹底しよう、一緒に乗り切ろうという気持ちになれる。

「公式戦再開を待ちわびるファンに何を届けるか」と考えたとき、手持ち無沙汰解消プログラムとして、自チーム自慢、選手紹介バトンリレー、好プレー・名勝負振り返り、ほのぼのミニゲーム、お家でできるエクササイズ等々多彩な選択肢がある中、社会人はこのコロナ禍において何に資するべきかを、最初に持ってきました。

新型感染症という超広域災害に対し、一市民にできることは限られます。
感染拡大防止と健康維持に努め、これまでの営みを再開できるよう耐えること。医療と生活を維持してくれる方々に感謝を表し、偏見や差別に加担しないことぐらいです。ウイルスの前には、選手もファンも同じ。

今できることは、これまで行ってきたことの中にある。

まずは小さい世界から

この動画は、社会人野球に興味のない人には「野球選手がなんかやってる」としか映らないでしょう。都市対抗?ナニソレです。

でも、スタートは内輪でいい。
掲げる目標は自分達の活躍する舞台、ファンが待ちわびる日常が戻るまで耐え抜こう、それで十分。カタカナまみれの意識高い価値創造マーケティングを持ち出されてもピンとこない。

プレーを見せることを生業とするプロの場合、稼業ができないので、再開まで収入源となるファンとスポンサーをつなぎとめる手段を考えないといけません。
それが、これまでの信頼と知名度を生かした地域特産品の販売、お楽しみプログラムの提供といったものになっています。

社会人選手はどうか?
元々「本業」があります。スポーツはもとより、本業においても社会に貢献する存在であればこそ、地域の応援を得て活動することができます。
だから、特別なことはないけれど、グラウンドに戻れる日までしっかり準備します、がんばりますという、地に足をつけたメッセージが沁みるのです。

選手の中には大学生や専門学校生もいるのは承知の上。こういうときだけ主語が狭くなってごめんなさい。

内輪を、勇気で満たそう

「今、僕たちにできること」この企画に、多くの社会人チームが乗ってほしいと願います。
今はお互い不自由な身だけど、再会を信じて、一緒にこの難局を切り抜けよう。そのメッセージは、社会人野球でプレーする方全てに通じるものであり、かつ、ハードルが低いからです。今はスマホ1つあれば動画が撮れます。

中には、社命で活動や情報発信を厳しく制限されているチーム、外出自粛要請で活動方針が決められない、打合せすらままならないチームがあることでしょう。参加できない方々がいるのは、仕方のないことです。
また、元来こうした活動が苦手な方もいるでしょうから、できないことを後ろめたく思うことはありません。それだけは強く言っておきます。

ユニを着て、白球を投げて打って守るだけがアピールではありません。
外で撮影できないなら家で丸めた靴下を投げたっていいし、制服やワイシャツや作業着姿だっていい。何なら審判員の皆さんに地区連盟事務局の皆さん、大本営のマルノウチナントカタワーも巻き込んだらいい。

ファンは既に各々好きな方法で試合を振り返ったり、再開に思いを馳せたりしています。(私は長文を書き散らすのが性に合ってます。)
そこに、プレーする側、運営する側もたくさん乗っかってほしい!と、今回の動画を見て思ったのです。

そうしたところで、天災が相手ですから、都市対抗はできるか分かりませんし、来年いくつのチームが残るとも知れません。存続判断はとても無慈悲なもの。
だからといって、未来を絶望や諦めで塗りつぶしたくない。

抗う心は自分を、誰かを勇気づけます。
コロナに負けない。このほんわかしたキャッチボールには、実は強い信念と逆境に抗う気概が込められているのだと気づきました。

私はこの動画から勇気をいただいた。本当にありがとうございます。

追記:4月19日

この企画は4月19日、第8弾の動画を持って完結しました。
参加した選手はのべ26チーム88名。広大な社会人野球の裾野を思えばごく僅かな人数かもしれません。でも、参加できなかったチームと選手の想いを汲んでくれたことに感謝です。

社会人野球盛り上げ隊発起人の皆さん、編集に携わったJABA公式サポーターの豊島わかなさん・大阪夕さん、本当にありがとうございました。

『また11月 東京ドームで会いましょう』

以下、社会人野球全国大会中止を受けて私が思ったこと2つ
↓本当はこの春たくさん進めたかったこと